【 襲撃 】
「おっ、来たねっ!サラ君おつかれっ。これでみんな集まったね!まだ相手さんは来てないから、お茶でも飲んでまったりしてていーよ」
ティーレさんに送り飛ばされた会議室で、最初に声をかけてきたのは学園長だった。
「学園長、来るならせめて事前に教えておいて下さいよ。タクト君の緊張が増してしまうではありませんか」
「ねぇねぇクローツ君、ぼくを見て緊張してくれる生徒がアルバティル学園にいるのだろうか。…そう、そんな健気な生徒は1人もいなーい!よって、ぼくがサプライズで来ても問題なーい!」
クローツ先輩と学園長のそんなやり取りが聞こえてきたが…
本日最初の緊張をティーレさんに粉砕されてしまった直後なので、学園長には申し訳ないがサプライズ登場に驚いてあげられる心の余裕が俺にはなかった。
「タクト、だっこ」
ティーレショックから少し立ち直ったところで、マリアが俺の上着の裾を引っ張りながらよじ登ろうとしてきた。
いつもよりさらに眠そうな目をしたマリアを抱き上げると気分が少し落ち着き、俺もだいぶ普段の調子に戻ってきた。
マリアを抱いたまま会議室内を見渡してみると、全員がこちらを見ていた…
椅子の代わりにさせられているマゾエルと、マゾエルを椅子にして座るサディスは笑顔で。
クローツ先輩は和やかな顔で。
サラ先生は無表情で。
そして学園長は…仮面でわからないが、興味津々といった雰囲気でこちらを見ている。
「わーお、話には聞いていたけど、マリア君がこんなに懐くなんてビックリおったまげたねぇ。君は何者だい?」
興味津々に見ていた学園長が、俺に擦り寄りながら質問してきたが…近いし、うざい。
「おはようございます学園長。1-Aのタクト・シャイナスです」
「堅っ!クローツ君2号なの?もっとシャープにフレンドリーに話そうよっ!それに今の場合は『学園長の大ファンのタクト・シャイナスです!油性ペンで頬っぺたにサイン下さい』って答えるのが一般常識だよっ」
「ありがとうございます、クローツ先輩は俺の憧れであり目標の人なので光栄です」
「堅っ!まーいっか。それで、本当に君は何者…んー、それもまーいっか。これでも飲んで親睦を深めようじゃないか!はいどーぞ、ただのお水ですけどっ」
茶番のような会話をしていると、いつの間にか学園長の手に水の入ったグラスが握られており、俺はそれを受け取った。
ちょうど喉が渇いていたのでありがたいと思い、水を飲もうとした時、サディスが勢いよく立ち上がり会議室の天井を見上げた。
ーーーーゾクッーーーー
ーーパリンッ。
、、、何か感じる。
全身に寒気が走り、まだ一口も飲めていない水の入ったグラスを落としてしまった。
「来たね」
サディスと同じく天井を見上げている学園長が小さく呟いた。
その呟きが合図であったかのようにーーー
ゴゴゴゴゴゴッ
ズドンッドーンズドンッドーン
グォゴォォッッッ
ガゴッドドッドドドド
ーーー王城全体が激しく揺れた。