【 いざ、セントクルス王城へ 】
学園に着くと既に多くの生徒が集まっていた。
比較的に安全な役割が与えられる中等部の生徒達は、遠征というより遠足に行く気分のようで楽しそうにはしゃいでいる。
去年までは俺もあんな感じだったのかな…
一つしか歳は変わらないのに中等部の生徒がすごく子供に見えるのは、俺も少しは成長してるって事なのかもしれないな…
生意気な感傷に浸りながら、はしゃいでいる生徒達をみていると、少し離れた場所にクローツ先輩を見つけた。
「クローツ先輩おはようございます」
「やぁタクト君おはよう。今日はよろしくね」
イリアと別れてからクローツ先輩と合流し、挨拶を交わしてから雑談をしている間に遠征へ行く生徒達もだいぶ登校してきていた。
ほとんどの生徒が集まって来たのを見計らい、サラ先生がマイクで集合をかけた。
「皆さん、おはようございます。一部の生徒は既にセントクルスで待機していますので、こちらも担当区域別に点呼を取り、集まった班から出発します」
サラ先生の指示に従い、それぞれが代表者の元に集まり点呼を受けていく。
俺もクローツ先輩の所にいるが、俺以外は誰もいない。
「サディス達は先に行って待機しているよ、サラ先生が来たら僕達も出発だ」
ふぅ、よかった。
マリア達が見当たらなかったので、もしかしたら来ないのではないかと肝を冷やしたが、どうやら先に行っているようだ。
他の生徒達が出発するのをサラ先生が指示しているので、俺とクローツ先輩は待機していた。
「クロさん、送る、早く」
俺とクローツ先輩以外が全員出発したあと、サラ先生と生徒会副会長のティーレ・タウレントが俺達の所にやってきた。
ティーレさんは《転移》のアイデンを持っており、遠征の際はいつもティーレさんが遠征場所まで送ってくれる。
口数が少なく無駄が嫌いでせっかちなティーレさんは、手入れのあまりされていないダークグリーンのボサボサの長い髪と、睡眠不足をこじらせ過ぎた目の隈が印象的な人で、いつも栄養ドリンクを大量に飲んでいる。
見た目から不摂生なのがわかるし少し不気味で怖いイメージがある人だが、二年生でMSSもレベル2なのに生徒会副会長に任命されるほど優秀な人である。
ちなみにセルを生徒会に勧誘したのがティーレさんだ。
今まで俺は人数の多い巡回班ばかりだったので、ティーレさんとはまともに挨拶すらした事がなかったが、今日は俺とクローツ先輩しかいない。
初めて自己紹介と挨拶が出来る事に嬉しさを感じながらも、少し緊張しながらティーレさんに話しかけた。
「ティーレさん、おはようございます!1-Aのタクト・シャイナ「いい、無駄、じゃ。」
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挨拶の途中で転移させられ、俺達は今セントクルス王城内部の特別会議室にいる。