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光のタクト  作者: セカンド
魂の軌跡
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【 突然の終わり 】



カマキリイタチは消滅し、無邪気に笑うグルルはタクトの周りをグルグル走り回りながら 褒めて褒めてと言わんばかりにすり寄っている。



「パーパ、パーパ!ぐるる、イーリャ!みんなでわちゃわちゃ、もひひだおー!」


「・・・・・」



しかしタクトは、無邪気にすり寄ってくるグルルをいつもの様に受け入れる事に戸惑いを感じていた。


「・・・グルル…」


周りの生徒達は魔獣との戦闘で気付いていない、だが 明らかに常軌を逸したグルルの力に タクトは以前感じた不安が再び膨れ上がってきていた。


それと同時に疑問もあった。



グルルのアイデンはコピーのはず、だよな?

それなら、今の爪が伸びた能力はなんだ?何をコピーしたんだ?


いや、それよりも…弱体化もさせていない魔獣を一撃で倒すなんて…



今この場に居るAクラスやBクラスの生徒達なら、低級魔獣を一撃で倒す力がある者は何人も居る。


だがそれは、生まれ持った才能に合わせ 何年もアルバティル学園で能力や魔法を研磨した結果だ。


・・・グルルも同じAクラス。


それだけ見ればグルルが魔獣を倒すのに疑問を抱く事はないが、グルルはどう見積もっても5歳くらい…、16歳のタクト達とは言葉の通り年季が違う。


相手が魔獣だったからいいが、もしも人に向けて今のような行動をしてしまったら…


そう考えると、タクトは不安で仕方がなかった。




「パーパ…?どしたんだお?どして、ヨシヨシしてくれないお?ぐるる、ダメなことしちゃったお?」


タクトに褒めて欲しくて擦り寄っていたグルルだが、その願いは叶わず それどころかタクトは難しい顔をしながらグルルを見ていた為、グルルは自分が何かイケナイ事をしてしまったのかと思い 笑顔ではなく悲しみと不安の表情でタクトのズボンをギュッと握った。



「ーーーっ!」



その仕草は子供そのもの。


食事中にコップを割ってしまい、親に怒られるのではないかと身構えている時の子供そのものであった。


その表情を見たタクトはハッと我に返り、頭をブンブンと振った後 優しくグルルの頭を撫でた。



「ごめんなグルル。助けてくれてありがとうな。それと、怪我とかはしてないか?」



そうだよな、グルルはまだ何も知らない子供なんだ。


力が特別に強い事なんて、とっくに知っていた事じゃないか。


その力を無闇に使って人に危害を加えてしまったり、グルル自身が危険な目に遭ったりしないようにする為に、学園で色々学んで貰おうと思ってたんじゃないか。


それなのに、何を今更またビビってるんだ俺は…。


「もひひー!ぐるる、パーパのヨシヨシすーき!」


「ははっ、わかったわかった。くすぐったいからそんなに・・・って、悠長に遊んでる場合じゃなかった!まだみんな戦ってるってのにっ」


ついさっきカマキリイタチの奇襲を受けたばかりだというのに、再び油断する成長のないタクトは慌てた様子で周りを見渡した。



「ーーーは?」



だが、タクトが悠長にグルルの頭を撫でてあげられていた事には理由があった。



その理由を、タクトも周りを見てようやく気付く。



「魔獣が…1匹もいない?」



そう、さっきまでは至る所にいた魔獣達が綺麗さっぱり居なくなっていたのだ。


魔獣が居なくなった理由が魔獣を殲滅したからではないという事は、困惑している周りの生徒達の様子を見れば一目瞭然。



「なにが、どうなってるんだ……」


魔獣が突然現れた事は厄介な事この上ないが、その魔獣が突然居なくなっているとなると不気味さを感じた。


それはタクトだけではなく、周りにいる生徒達も同様であった。


周りをキョロキョロ見る者、怪我人が居ないか見回る者、警戒する者、人によって様々であるが 生徒達の多くは急展開する事態に思考が追い付いていないようであった。






「・・・何も、起きないな」



突然魔獣が消えてから既に1分程経過していたが再び魔獣が出て来る気配はなかった。



「おおーい、グルル パパやん無事やったかぁー?ヤハハッ、なんやパパやん、バッチリやられとるやんけっ!っつか何や?パパやん、いつの間に前髪にメッシュいれたんや?ヤハハッ、こない非常時にオシャレさんかいなっ!肝座り過ぎ通り越して 肝ねっ転がっとるやんけっ」


「は?何訳わかんない事言ってるんだ?それより、みんな無事なのか?ヤンバルは怪我とかはないみたいだな。ん、でも左腕と左脚に俺と同じ黒い靄が…」



どよめきの収まらない中、離れた場所で魔獣との戦闘を楽しんでいたヤンバルとそれに付き合っていたポンタルがタクト達の元へやってきた。


クラスメイトの無事を確認出来て一安心するタクトだが、ヤンバルとポンタルにもタクトと似た黒い靄のような物が付着している事が気になった。



パンッパンッーーー



しかし、黒い靄についてヤンバルに聞いてみようとしたところで、ガイが手を叩く大きな音を発して注目するように促してきたので、タクトは会話を中断して他の生徒達と同じ様にガイに視線を移した。


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