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光のタクト  作者: セカンド
世界を変える大雨
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【 不吉な予感と不穏な予兆 】

「全員集まっていますね。では、明日の流れを説明します」


サラ先生が黒板に王城の見取り図を描き、誰がどこに配置するのかを説明しているが、俺とクローツ先輩以外は全く聞いていない。


マリアは俺の膝の上で、いつも持ち歩いている桜模様のついたウサギのぬいぐるみと首を捻ると悲鳴のような音の鳴るコケシで遊んでいる。


サディスはまた寝てるし、マゾエルは先程と全く同じ姿勢でこちらを見ながらまだ薄ら笑いをしている。


本当に明日大丈夫かなぁ。。。



「シャイナス君、あなたが明日やる事は、万が一魔獣に遭遇した場合マリアさんを連れて逃げる事。その一点だけに集中して下さい。ただし王城の外には絶対に出ないで下さい。王城全体に強力な結界を展開しますので、あなたの魔力では確実に命を落とします。いいですね?」


「わかりました」


結界は本来、特定の物を通さないようにする壁のような物だ。

触れたからといって怪我をしたりすることはない。


確かに俺の魔力は大きくはないが、人並みにはある。

それなのに触れただけで死ぬほどの結界なんて…。


もしかしたら相手の魔獣は、俺が思っているよりも遥かに危険で強大なのかもしれない。



「触れたら、死ぬ…。ふれ、たらふふふっ、シヌ?ふれふふしぬふふふ……」


俺が気を引き締め直していると、さっきまでこちらを見て薄ら笑いを浮かべていたマゾエルが下を向き、親指の爪を血が出るほど噛みながらブツブツと物騒な事を呟いていた。


その様子を横目で見ていると、垂れ下がった真っ白な髪の毛の隙間から三日月のように口角を上げて笑うマゾエルと目が合ってしまった…



頼むから明日、わざと結界に触りに行くような事はしないで下さい。お願いします。

と、俺は口には出さずに本気で願った。





ミーティングが終わり、先輩達に挨拶をしてから生徒会室を出て、膝の上から背中へ移動したマリアを背負いながらイリアと待ち合わせをしているいつもの噴水へと向かった。


生徒会室を出る時にサディスが一緒に来ようとしたが、マリアに『えすねぇ、めっ!』と言われてしまい、すごく落ち込みながら足を止めていた。


その後、八つ当たりでマゾエルを殴り飛ばしてから走り去っていったので、今はマリアと2人で和やかに噴水へ向かっている。


=====


「あ!お兄ちゃーん!タクトお兄ちゃーん!おっそいぞぉー!」


噴水に近づいていくと、イリアの隣で大きな声を出して飛び跳ねながら手を振るマキナが出迎えてくれた。


「マキナもいたのか、待たせてごめ『あー!!マリアずるいっ!あたしもおんぶしてよお兄ちゃん!マリア代わってぇー!』「いや」……。」



マキナ・フラワール。

今のでわかるかもしれないが、マキナはうるさ…とても元気な子だ。


イリアの妹というだけあって顔は、目付き以外はイリアとよく似ている。


2人とも目は大きいがイリアはおっとりした垂れ目でマキナは猫目。


髪の色も同じ暗めのクリーム色だが、イリアより少し長くセミロングくらいに伸びた髪を横で一つに纏めている。


身長はイリアより少しだけ小柄で155センチないくらい。

痩せ型の筋肉質で、腹筋が少し割れているのが自慢らしい。

そして、胸はイリアより3カップ下のAなのだとか。(セルス・シエート辞典)



「あっ、いまタクトお兄ちゃんあたしの顔見てドンマイって顔してた!なに?なんで?なにがドンマイなの?ムネ!?」


しまった。セルのせいで余計な事を考えていたら顔に出ていたようだ。


マキナは勘が鋭いうえに、思った事をすぐ口に出すタイプなので気を付けなくてはいけない。


「…マキ、ぺったんこ」


「マリアにだけは言われたくないわっ!このっちんちくりんっ!」


「ぺったんこ」


「ちんちくりんっ!」


「ぺったんこ」


「ちんちくりんっ!」


「ふふふっ。2人共、本当に仲良しね」


……………


「…おねえちゃん」


「…ばいんばいん」


お子ちゃま2人のどんぐりの背比べのようなやりとりを見守っていたイリア(マキナより3カップ上)が楽しそうに笑いながら声を掛けた事で、小さな小さな争いは終わりを迎えた。



噴水の前でしばらく喋っているとマゾエルがマリアを迎えに来たので、俺とイリアとマキナは帰宅する事にした。


マリア達は学園寮で生活をしているので、校門の前まで見送ってくれたあと別れた。


別れ際までマリアはまだ遊ぶと言って駄々をこねていたが、明日いっぱい遊ぶ為に今日は早く寝ないとな、と俺が言うと小さく頷いた後すぐにマゾエルの腕の中で寝息を立てていた。


俺とイリアも明日はセントクルス遠征なので、寄り道をせずに真っ直ぐお互いの家に帰り、今日は早めに休む事にした。




マリアを守る。魔獣が来たら逃げる。結界には触らない。と、頭の中で反復しながら俺はゆっくりと眠りについた。



〓〓〓〓〓〓




タクト達がマゾエルとマゾエルの腕の中で眠るマリアに別れを告げている時


学園で一番高い位置にある時計塔の屋上から、その様子を黙って見下ろす2つの人影があった。


2人は言葉を発する事もなく注意深くタクト達を観察していたが


タクト達が帰り、マリア達も寮に戻ったのを見届けると、2つの人影は蜃気楼のように消えていった。

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