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光のタクト  作者: セカンド
魂の軌跡
139/165

【 テストの結末 】


翌朝、グルルと一緒に家を出て学園に向かっていると いつもの場所にイリアとマキナが居たので、そこから4人で一緒に登校した。


昨日の帰り際の放送ではテストが終わるまでは部活動はないと言っていたので、今週はずっとマキナも一緒に登校出来るらしく 朝から元気良くグルルと一緒に飛んだり跳ねたりシリトリしたりしながら学園へと向かった。


マキナは昨日の大騒ぎの事などすっかり忘れたように明るく笑っていたが、お義兄ちゃんという呼び方はしっかり覚えているらしく 今後はもうそれで定着してしまいそうだ。



ーーー




「おーっすタクト!今日は俺の方が早かったみたいだなっ」


「おはようセル、珍しく早いな」


「せるるおはおー!」


「セルス君おはよう。昨日はマキナが心配掛けちゃってごめんね」


教室に入ると、いつもなら俺が登校した少し後に教室に入ってくるセルが既に席に座っていた。


グルルとイリアもセルに挨拶を済ませ、グルルは早速クラスメート達に取り囲まれていき イリアは俺の後ろの席に座って教科書を取り出して自習を始めた。




「いやぁー、昨日の生徒会の仕事が結構キツくてさぁ、家に帰ったら速攻で寝ちゃったから早く目が覚めちゃったんだよね。二学期早々から早寝早起きしちゃうとか、俺ってば本当イケメン優等生ッ」


「へぇ、セルがキツいって言うなんて珍しいな。何やってたんだ?」


「ティーレさんに拉致られてヒスバリー国の大図書館でひたすら本読まされてた。ちゃんと速読で記憶してたのにティーレさんが『遅い、超読して』とか無茶な事言ってきてさぁ、昨日だけで分厚い本を2019冊も記憶させられてたんよ。あー、思い出したらなんか疲れてきたわ…」


セルは俺にそう言うと、グッタリした表情で机に突っ伏してしまった。


そういえばセルは夏休みの後半でも時々大図書館に行っていると言っていたが、その仕事がまだ終わっていないのだろうか……生徒会の仕事だから深くは聞かないが、相変わらず大変そうだな。



「おはよーさんっ、パパやん昨日はありがとうなぁ。またワイも混ぜたってな!ーーーってなんやねんシエート、朝っぱらからグダグダやんけ。ちぃとはグルルを見習いや」


「おはようヤンバル。昨日はマリアを送ってくれてありがとな」


セルがグッタリしたすぐ後、ヤンバルも教室に入って来て元気に挨拶をしてきたので俺は昨日のお礼を言ったのだが、俺のお礼を聞いたヤンバルは何かを思い出したように身を乗り出して来た。


「そやそや!ちょ聞いてぇや!昨日パパやん達と別れてから学園向かって歩いとったら、マリアっちゅう子が乗ってたでっかいウサギがいきなりえずきおってな!食い過ぎてゲロったんか思たら、ゲロやなしにビチャビチャのサディス先輩を吐き出しよったんやで!驚きすぎて心臓飛び出るか思たわっ」


「そ、そうか……災難だったな」


そういえば昨日 マリアがウサクラさんの中にサディスさんが入ってる、みたいな事を言ってたような気がするな…



「ほんまやで…、あの人がいきなり目の前に出て来たっちゅうだけでビクビクやったのに、なんやワイの事ジロジロ見ながら近付いて来てニカッて笑いながらワイの肩をものごっつ強い力でバシィン バシィーンって叩きよったんやで!その後はなんも言わんと眠たそうなマリアを抱き上げて学園の方へ走り去ってしもたから なんとか命拾い出来たけど…チビらんかったワイを褒めてほしいわぁ」



なるほど。


多分サディスさん的には友好的に接したつもりなんだろうけど、やられた方からすればたまったもんじゃないだろうな。


俺もよくやられるから、ヤンバルの心情は手に取るようにわかる。



「ん?なんだよ2人とも、やけに親密度が上がってるじゃん。昨日なんかあったの?」


「あぁ、昨日の帰りにちょっとな」


登校してきたヤンバルと前日の話をしていると、グッタリとしていたセルが身体を起こして話に入って来たので、昨日の帰りにあった出来事を掻い摘んで話した。


前日の話をセルにしていると、後ろの席に座って自習していたイリアも話に加わり、昨日 様子のおかしかったマキナを心配してくれていたセルにお礼と謝罪をしていた。


マキナの話を聞いたセルは恨めしそうな顔で『俺が奴隷のように働いてる時に楽しそうに青春しやがってぇ、タクトは2、3回ジゴクニオチロ』と言っていたが、どこかホッとした様子でもあり なんだかんだでやっぱり優しい奴だなぁと、俺は心の中でセルを誇らしく思ったが 当然その事は口に出しては言わなかった。




ワイワイガヤガヤーー


「グルっち、今日もシオンっちのバスタオル羽織ってるのね。そんなにシオンっちが好きなの?」


「おおー?こーはパーパがくれたんやおー!だからすーき!」


「いやぁーん、グルルくん健気っ!シャイナスくんの弟じゃなくて私の弟になってよぉ」


「グルルは可愛いだけじゃなくて すげぇんだぞっ!昨日の体育で大活躍だったんだぜっ!」





今日も騒がしくて楽しいアルバティル学園の1日が始まり、昨日に引き続き復習をメインにした授業が行われていった。


テストやクラス替えや戦闘訓練がもう目の前に迫っているとは思えない程 和やかに授業は進み、太陽の光が照らした今の世界のように明るい雰囲気で満たされた学園生活は、今日も次の日も続いた。


グルルを取り巻く環境は日に日に良くなっていき、良くなった環境を当たり前だと思えるようにもなってきていた。


ーーーーー


ーーー



そしてーーーテスト当日の金曜日。



「やれるっ!今日のあたしはやれる気がするっ!お姉ちゃん達もテスト頑張ってね、じゃあねー」



戦闘訓練をしっかり受けてみたいというマキナは、今日のテストの為にここ最近はめずらしく真剣に勉強を頑張っていた。


イリアが勉強を教えている時に一緒に居る事は前からよくあったのだが、今回はラピスが教えている現場にも居合わせる事があった…。


以前からちょくちょくマキナはラピスの事を鬼怖いと言っていたが、俺の印象では控え目で誠実で優しくて穏やかな印象だったのだが、勉強を教えているラピスを見て ほんの少しだけ印象が変わった…。


ラピスは想像通り最初は優しく勉強を教えていたのだが、マキナの集中が切れて他事を始めたり居眠りを始めたりすると態度が急変していき、まだ夏なのに背筋がゾクッとするようなオーラを発して、比喩ではなく温度が急速に冷えていった……その時に見てしまった笑っているのに目だけ笑っていないラピスの表情は、思い出しただけでも身体がブルッと震えそうになる程に怖かったが それもラピスが真剣にマキナに勉強を教えようとしていたが故の事なので悪い印象が付いたわけではないけど、、、怒らせないようにしようとは思ったかな。



まぁなにはともあれ今日はテスト本番。

テストの結果でクラスが決まるかどうかは不明だが、朝から気合入りまくりのマキナは正門に着くと走って教室に向かって行き、それを見送った俺達もゆっくりと歩いて兄棟へと向かった。






そしてテストが始まった、のだが…。


「(なんだ、この問題は……)」



これをテストと言っていいのか分からなくなるほど、簡単な問題ばかりだった。



確かにこの1週間はずっと復習授業ばかりで、テスト範囲の説明も『復習です』と言われてはいたのだが……あまりにも簡単すぎて もしかして引っ掛け問題なのではないかと疑ってしまうレベルの問題ばかりだった。


数学のテストではただの掛け算が出てきて 数学ではなくもはや算数だったし、魔学では基本属性を漢字で答えよとか…。



クラスメート達も最初は簡単すぎて引っ掛け問題だと疑っていたらしいのだが、2時限目のテストでも同じ様に簡単な問題ばかりだった為 テスト開始から3分くらいで殆どの生徒が答案用紙を教壇に提出していたくらいだ。



ーーー



〝生徒の皆様、午前の授業お疲れ様でした。ランチの時間です、本日の献立表を見て、食べたいメニューの札を自席の上に表向きにして置いておいて下さい。それ以外の物が欲しい場合は各階に設置してある売店でお求め下さい〟



「なんか拍子抜けだったな…。グルルはどうだった?ちゃんと出来たか?」


「おおー!お名前もグルル・シャイナスってちゃんと書けたおー!」



テストの日はだいたい1時限の内に2教科テストを行い、4時限目まで終わると昼休憩があり 5時限目には採点が終わって返って来て帰宅になる。

期末試験などは2日間テストがあるが、大型連休明けのテストは1日しか行わないので これで今回のテストは終わりだ。


勉強というものを始めてまだ1週間も経っていないグルルでもある程度解けるようなテストを終えて昼食を食べ、5時限目に返ってきたテストを見てみると…案の定満点だった。



「ヤハハッ!100点なんもらえたん初めてやわっ!こらもう嬉C越えて嬉Dやなっ、寮に戻たら額縁に入れて飾らなあかんやんけっ!」


「バルっち喧しい。まだ一応授業中なんだから静かにした方がいいって私っちは思うよ」



ヤンバルは天井に届きそうなくらい跳ね上がって喜んでいるが、さすがに間違えるはずのない問題ばかりだったから俺達が満点を取るのは当たり前なのだが、グルルまで満点だったのは正直驚いた。


いくらこの1週間で習ったところばかりで簡単な問題だったとはいえ、全科目で俺達と同じように満点を取れるとは思ってもいなかったのに、グルルはしっかり満点をとったのだ。


「ふふっ、グルルくんすごいね。いっぱいお勉強頑張ってたもんね」


「本人は頑張ってたってより楽しんでたっぽいけどな」


実際グルルは勉強を楽しんでやっていた。


元々頭が良いのは知っていたが、やっぱり勉強というものは嫌々やらされるよりも楽しむくらいの気持ちでやった方が身につくのかもしれないな。



「ーーーーー」


「ん?どうしたんだセル?」


俺がイリアと話していると、セルがなんとなく神妙な顔でグルルを見ていたのが気になって声を掛けたが、セルは『あー、なんでもない なんでもない。テストが終わったのはいいけど、今からまた大図書館で本読まないといけないって思ったら憂鬱になっただけっすわぁ』と言ってヘラヘラと笑っていた。


微妙なセルの反応が多少気にはなったが、朝のダルそうな態度から察すると本当に憂鬱になっただけかもしれないので深く追求する事はせず、それから暫くすると終業を告げる放送が流れたので テストという重荷から解放された俺達は帰り支度を済ませて軽い足取りで学園を出た。





さっき言っていた通り セルは生徒会の仕事で一緒に帰る事が出来ず、マキナと合流して4人で帰宅してるのだが、その道中でマキナにテストの結果を聞いてみると〝思ったより良かった〟と言った……。


いくらマキナがバ・・・勉強が苦手だとはいえ、あんな簡単な問題ばかりで思ったよりも良かったと言うのはおかしいと思ったのだが、別におかしい事ではなかった。


というのも、マキナ達のテストは復習問題が多かったのは俺達と同じだったのだが、中等部三年がやる問題の範疇に収まった復習問題だったからだ。


俺達高等部が初等部でやるようなテストを受けていたのに中等部は普通のテストだったと聞いて、そんな事あるか?と思った俺はマキナに答案用紙を見せてもらったのだが、確かに今日やった俺達の問題よりも明らかに難しい問題ばかりだった。


高等部の俺達が簡単なテストを受けているのに中等部は普通のテストを受けている事に疑問と違和感を感じたが、イリアが『中等部でも三年生は進学審査があるから普通のテストだったのかもね』と言った事で、俺も一応納得して それ以上考えるのをやめた。


既に終わったテストの事よりも、休み明けにあるクラス替えと戦闘訓練の事の方が大事だしな。


来週からいよいよ始まる戦闘訓練。

最初に戦闘訓練と聞いた時は不安が大きかったが、授業と日々の訓練のおかげでグルルも魔力のコントロールがかなり出来るようになってきたので、今は不安な気持ちよりも 楽しみな気持ちの方が強くなっていた。



「パーパ、手つなごー!」


「あぁ。よしグルル、今日はどこへ行きたい?テストも終わったし、明日と明後日は休みだからな。今日はクタクタになるまで遊ぼうか」



ーーーその後、俺達は4人でショッピングモールなどがある街に行って買い物をしたり 綺麗な池のある公園でブラブラしたりして星が出るまで遊んでから帰宅した。


次の日もその次の日もグルルと一緒に友人達と遊び、あっという間に土日が過ぎてしまった。


セルとはこの二日間で1度も一緒に遊ぶ事が出来なかったが、なんだかんだで充実した休日を過ごす事が出来た。







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