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光のタクト  作者: セカンド
魂の軌跡
133/165

【 復習授業 】


1時限目=世界史。


HRでサラ先生が言っていた通り、授業は復習メインで行われた。

俺達にとっては復習でもグルルにとっては初めての内容である為、授業中は絶えず俺やセルに質問をしてきた。


まぁそれはいいのだが、グルルの質問でなにより大変だったのは、質問に答えた事に対して質問をしてくるというループが大変だった。


『4大陸同盟とは何か』の質問に答えている最中に『エルスノウってなんだおー』と言われ、エルスノウ大陸について答えると『雪ってなんだおー』といった感じで、知らない単語についてどんどん質問してきて 本題までなかなか辿り着けなくなるといった具合だ。


だが、グルルはやはり頭が良いようで教えた事は一度で覚えていくし、授業が復習という事で俺とセルがグルルに付きっきりになっても問題ないのはかなり助かった。



そして2時限目=生物学A。


生物学Aで学ぶのは大まかに分けると『人、動物、植物、魔物、魔獣』の5つ。

もちろん微生物や菌、昆虫や魚なども生物にはなるが、生物学Aでは一般生活で関わりの多いこの5つについて学ぶ。


最近では黒い雨から魔獣が出てくるという異常事態が頻出している事で今までの常識が覆されるかもしれないと言われてはいるが、遥か昔からの統計や調査結果で分かっている事も多く、今の俺達には1番大切な授業と言っても過言ではない。


危険指定されている魔獣の特性や弱点。

危険のない魔物と危険な魔獣の見分け方など、クラスメイト達も復習授業とはいえ真剣な表情で授業を受けていたし、俺とセルも1時限目同様グルルに色々教えながら復習していった。



3時限目=高個学。


高個学は個人が有する力を高めてコントロール出来るようにする為の授業で、簡単に言えばアイデンについての授業。


アイデンティティスキルと呼ばれる能力はほとんどの人が幼少期に開花する力だが、使いこなす為には長い時間がかかるのが一般的。


感覚的には自転車の乗り方や泳ぎ方と同じで、一度開花してしまえば自由に使う事は出来るのだが修練を積めば更に用途が広がったりするし、セルの鼻血の様に暴発する事がなくなる。




アイデンの能力は千差万別と言われているし実際そうなのだが 結構似た力を得る人が多く、授業では系統が近い者同士でグループに分かれてコントロールの練習をしたりする事もある。


しかしアイデンは性質上、年齢や生まれ育った地域が近いと似た能力を手に入れる事が多い傾向があるらしいのだが、似ているからといって同じとは限らない。


セルの様に記憶のアイデンを持つ人は沢山居るが、セルの様に万能な記憶系も居れば 見た物を写真の様に記憶するだけの人も居る、といった感じだ。


記憶系のアイデンを持っていると聞くと 俺は真っ先にセルが浮かぶので、頭が良くて凄い奴ってイメージがあるから羨ましく思ったりしているのだが、実際は記憶系のアイデンを持っている人には残念な人やめちゃくちゃ苦労してる人が多いと授業で習った事がある。


その苦労は俺にはわからない感覚の問題なのだが、5+5=10と記憶する事は出来るが何故5+5=10になるかが解らず、説明を聞いても言葉は記憶出来るがその説明を理解して応用する事が出来ないとかなんとか…

と、まぁそんな感じで同じ様なアイデンでも人によって違いはあるって事。



それともう一つ。

似たような境遇だと似たようなアイデンが身につく確率が高いと言っていたが、それでも同じアイデンになるって訳ではない。


例えるなら、同じ年齢で同じ幼稚園に通う3人の男の子がいたとして、3人共その時に腕相撲にハマっていたとする。

腕相撲にハマっている3人は全員が同じように勝ちたいと強く思っていて、その時に同じタイミングで3人がアイデンを開花させたなら 同じアイデンになるかと言われれば…そうとも言い切れないって事だ。


3人共ほぼ同じ生活を送り、同じ趣味を持ち、同じ様に腕相撲に勝つ為のアイデンを開花させたとしても、1人は腕力が強くなるアイデンを開花させ、もう1人は相手の手に触れると相手を脱力させるアイデンを開花。そして3人目の子は腕を石の様に変化させるアイデンを開花させる事もある。


もしもこの3人に『君達はどんなアイデンを持っているの?』と質問をしたとすると、3人は声を揃えて『腕相撲が強くなるアイデン』と答えるだろうが、その中身は同じとは言えない。


と、まぁこんな感じで高個学は1番身近だが1番範囲が広くて覚えるのに苦労する科目でもある。


かくいう俺も高個学の授業では自分と自分の身近な人のアイデンに関係のない範囲は聞き流してしまっていたのでうろおぼえなのはご愛嬌。


でもこれからはグルルに質問をされた時には兄として…いやパパとして、か?まぁどっちにしても、ちゃんと答えてあげられるように俺もしっかり勉強していかないとな。と気合を入れ直した授業だった。




久し振りの授業に多少の疲れを感じ始めた4時限目=魔学。


魔学は名称通り魔法について学ぶ授業で、俺がグルルにしっかり覚えて欲しい授業でもある。


今日は復習という事で属性についての授業になったが、魔学では魔力を上手くコントロール出来るようにする為の実技授業を行う事もあるので早くその授業を行って欲しいと俺は思っている。



とりあえず俺の気持ちは置いとくとして、今日の魔学は本当に基本の基本である7属性についてのおさらいで終わった。


ーーー



〝生徒の皆様、午前の授業お疲れ様でした。ランチの時間です、本日の献立表を見て、食べたいメニューの札を自席の上に表向きにして置いておいて下さい。それ以外の物が欲しい場合は各階に設置してある売店でお求め下さい〟



そしてようやく待ちに待った昼休みの時間。


HRが終わってすぐに弁当を食べたいと言っていたグルルだったが、授業の合間につまみ食いする事なくこの時間までちゃんと我慢していた。


我慢していたと言っても グルルに我慢している様子はなく、放課の間もずっと教科書をペラペラ捲って楽しそうに勉強していた。



「グルル、飯の時間だから勉強はそれくらいにして弁当食べよう。まだ午後の授業もあるんだから、休憩も大事だぞ」


「ほほー、わかたー!ぱるるのおべんとー!」


教科書に夢中になっていたグルルに声を掛けてから俺も鞄から弁当を取り出し、隣の席のセルも机を寄せてきて 大盛りと書き足したBランチの札を机の上に置いて準備万端。


なのだがイリアはーーー


「タクト、私は今日購買で買って校庭で食べてくるね」


「購買って、イリア弁当持ってるのにか?それに校庭って。それなら俺も…」


「ううん、大丈夫!なるべく早く戻ってくるから、じゃあまた後でね」


「ーーーーー」


弁当を両手で抱えたイリアは俺の声を遮りながら、よそよそしくも慌ただしく教室を出て行ってしまった。


「弁当抱えて購買って…嘘が下手なのは姉妹一緒だな。それにしても、一体どうしたんだ?」


「まぁまぁ、女の子が隠し事をする時は黙って見守ってあげるのが男の役目だって。それより早くグルルに飯を与えないと机が涎で溺れるかもよ」


イリアの態度に首を傾げる俺にセルがそう言ってきたので 視線をグルルに移すと、グルルの口から滝の様に涎が溢れており セルの言葉が比喩ではなく事実だと理解した。


「ーーーーー」


涎を垂らすグルルの表情があまりにも無垢であった為、俺は注意する事が出来ず 鞄からハンカチを取り出して無言で涎を拭いてあげた。



「ふぁ〜ぁ……だっしゃぁー!やっとメシの時間やぁ!なぁシャイナス、ワイもメシ一緒に食ってええか?ええやろ?ええやんな!よっしゃ、ほなご一緒させてもらお」


俺がグルルの涎を拭いていると、斜め前の席で今までイビキをかいていたヤンバルが元気よく振り返り、俺が返事をする前に机を合わせて来た。


「おおー!やんけおはおー!やんけも一緒にいたまーすするおー!」


「ヤハハッ、グルルおはよーさん!おっ、グルルの弁当めっちゃ美味そうやんけ!ワイはどないしよかな…寝起きやし軽食にしとこ」



ヤンバルは弁当を持参しておらず、机の上にDランチの札を置いた。


確かにDランチは軽食なのだが、ヤンバルはその札に大盛りと書いていた…


「なんや、フラワールはどっか行きよったんか?男4人でメシって寂しすぎひんか?青春ゆーんはあっちゅう間に過ぎ去っていくねんで!?おっ、シエートは洋食かいなっ!ハム1枚めぐんでぇな」


「寝起きから全開だなっ!だが、よかろう。俺と同じ感覚を持つヤンバルにはこのハムをそのウインナーと交換する権利を与えよう」


「なんやそれっ、ワイの方がグラム的に大損やんけ!ひもG越えてひもHになってまうやんけっ!」


「ヒモ…H……だと?・・・ぼ、煩悩ぅぅぅぅっぶはっーー」


「おおー!せるるのお鼻からケチャプー!」


「・・・・・」



言ってる事もやってる事も適当すぎるヤンバル・クエイン。


もちろんグルルよりは背が高いが、俺とセルに比べると小柄なワンパク少年のようなヤンバル・クエイン。


寝ている時以外は基本的にずっとうるさいヤンバル・クエイン。



今まで一緒に昼飯を食べた事などなかったが、悪い奴ではないし俺も嫌いではないのでまぁいいかと思い 一緒に食べる事にしたが・・・一定の距離感は欲しい相手ではあるかな…ヤンバル・クエインは。


とはいえ、クラスで1番騒がしいヤンバルが初日からグルルをかなり気に入ってくれたおかげで、他のみんなもグルルに気軽に話しかける事が出来たようなので、それにはかなり感謝している。


でもそれを口に出してヤンバルに言ってしまうとセルとは違うウザさで調子に乗るので、俺は心の中だけでお礼を告げた。


ありがとうな、ヤンバル・クエイン。


ーーー



ヤンバルを交えた賑やかな昼休みが終わる直前でイリアが戻って来たが、どこでなにをしていたかを教えてくれる気はないようで 気にはなったが深く追求はせず、俺は午後の授業へと気持ちを切り替えた。



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