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光のタクト  作者: セカンド
魂の軌跡
132/165

【 2学期の始まり 】


「ふぅ…朝からヒドイ目にあったな…」


校庭から逃げる様に教室へとやって来た俺は、窓際の自分の席に座ってようやくひと息つく事が出来た。


早歩きで来てしまった為、体力がないイリアは軽く息を切らしていたが グルルには疲れた様子はなく、現在クラスメート達に囲まれながら楽しそうに笑っている。


異例の変入で高等部に入ってきたグルルだが クラスの連中は既に受け入れてくれたようで、俺は心の中でみんなに感謝を送った。


ーーー




「おっすタクト、朝から大変だったな!俺も他の連中に混ざってロリコンタクトを見ながら笑わせてもらってたわ」


グルルの楽しそうな様子を見ながら 窓から吹き込む風に当たって涼んでいると、登校してきたセルが隣の席に座り 笑いながら挨拶をしてきた。


「おはようセル。それよりさっきの見てたなら助けろよな…」


「あそこで俺が割り込んでもおもろしくないと思ったから放置しましたっ!空気が読める漢セルス君ですからっ、たはっ」


なにが空気が読めるだよ…所構わず鼻血出すくせに。


「ん?校庭で俺達を見てたなら今まで何やってたんだ?俺達が早歩きで来たのを差し引いても来るのが遅くないか?」


俺が教室に着いてから既に10分くらい経っているが、校庭で俺達を見ていたというセルが今来たのはさすがに時間差がありすぎると思い、俺はセルにそう質問をした。


「あー、ちょっとマキナちゃんの様子が気になったから 真っ赤な顔のタクトを拝んだ後にマキナちゃんを追い掛けてた。なんかいつもと様子が違ったから大丈夫かなぁ〜って思って 話だけでも聞いてあげようと思ってたんだけど、俺が追い付く前にラピスちゃんがマキナちゃんを捕まえて宥めてたから声掛けずに戻ってきたとこ」


「そうだったのか。やっぱりマキナの奴おかしかったよな?なんだったんだろうな…」


セルの言葉は所々俺を揶揄う感じがあって鼻につくけど、本当に空気が読める人風な事をしていたと聞くと文句が言えなくなってしまった。



「あのね…タクトもセルス君もごめんね。でもマキナの事は気にしなくて大丈夫だから。後で私からちゃんと言っておくから、気にしないであげて」


俺とセルがマキナの様子が変だった事について話していると、俺の後ろの席で話を聞いていたイリアが申し訳なさそうにそう言った。


「ーーーーー」


イリアの様子を見る限り イリアはマキナの態度がおかしかった理由に思い当たる節があるようだが、俺達に詳しく説明する気がないように見えた。


更に付け加えるなら、これ以上詮索しないでほしいと言っているようでもあり、セルもそれを感じ取ったようで「そっか、イリアちゃんが大丈夫って言うなら大丈夫だね!」と言って話を終わらせた。



ガラガラガラッーー


そして話が途切れたタイミングで始業のベルが鳴り、ベルと同時にサラ先生が教室へと入ってきた。


「あっちゃー、もうサラ先生来てもうたやんけ。ほなまたなグルル」


「グルっち。わからない事があったら何でも私っちに聞けばいいと思うよ。優しく教えてあげると思うから」


「おおー!ありあとー!」


サラ先生が教室に入ってきたのを合図に、グルルの周りに集まっていたクラスメイト達も自分の席へと戻って行った。



「みなさんおはようございます。HRを始めますので自分の席に着いて下さい」



サラ先生はいつもの挨拶を口にし、生徒達が席についたのを確認すると全員にプリントを飛配した。


風の低級魔法で飛んで来たプリントを手に取り、内容を確認すると週末のテストについて書かれていた。


「今お渡ししたプリントにも記載されていますが、金曜日にテストがあります。テストは主に昨年までに習った事の復習問題になりますので、日頃の授業を真面目に受けている皆さんには難しくない内容だと思います。それから来週にはクラス替えがありますが、このクラスの生徒はAクラスのままになる予定ですので実戦形式の戦闘訓練を受けたくないという方がおられましたらテスト日までに申請して下さい」


ガヤガヤーー


サラ先生の話を聞いた生徒達は近くの席の友人達と今の話について喋り出したのだが、クラスメイト達の会話で聞こえてきた内容は「よかったぁ、テストで点数が悪かったらクラス替えられると思ってたぁ」とか「去年習った事をいつまでも覚えていると思うなよっ」とか…ほとんどがテストとクラス替えの話だった。


俺の予想とは裏腹に、みんな戦闘訓練については対して重く考えていないようで そんな事よりもAクラスはクラス替えがないと聞いて喜んでいるようであった。



昨日は不安そうな顔をしていたのに、みんな気持ちの整理をつけるのが早いな…


まぁ、でも、それもそうか。


俺の場合はグルルが居るから戦闘訓練に対して過剰に考えてしまったが、他の人からすれば科目が1つ増えるだけだし 元々選択科目にはあったので抵抗があるという訳でもないのだろう。


それに実戦形式といっても実戦であるはずがなく、安全が保障されている学園で訓練出来るのなら良い経験にもなるし、なにより新しい事をやるのは楽しみだって考える生徒もいるはずだしな。



「今週はテストの準備期間として授業も復習をメインに行います。復習は一度頭に入れた知識を脳に定着させるのに効果的ですので、一度習ったからと言って聞き流すのではなく しっかりと自分の知識にしていって下さい。グルル君には初めての授業になりますが、一つ一つしっかりと学んでいって下さい。HRで伝える事は以上です。では本日の授業もしっかり頑張って下さい」



話を終えたサラ先生は軽く一礼して教室を出て行った。




サラ先生の居なくなった教室はHRが始まる前と同じように騒がしくなり、俺も周りの連中と同じ様にセルと雑談に興じた。


「戦闘訓練のこと、みんなもう受け入れてるみたいだな。昨日の全校集会で戦闘訓練の話が出た時はみんなちょっと緊張してたように見えたけど…このクラスの連中は適応力が高すぎな気がするよな」


「ん?あぁ、昨日のみんなの反応か。あれはみんな戦闘訓練に緊張してたんじゃなくて、サラ先生が魔獣のニュースの話を出したからだよ。特にこのクラスは家族と別居してる生徒ばっかだからね、離れて暮らす家族の事が心配になったんだってさ」


「え、そうだったのか?俺はてっきり戦闘訓練って聞いて緊張してるものだと思ってた…」



昨日の集会で戦闘訓練の話に顔を強張らせていたクラスメイト達がたった1日で楽しそうに笑っているのを見た俺がセルに話を振ると、セルは俺の勘違いを説明してくれた。



セルの話しでは、みんなは戦闘訓練に不安を感じたのではなく 魔獣が家族を襲わないか心配していたらしく、サラ先生の魔獣発言で不安を感じた生徒達だったが、その後の学園長の『守る事』発言で、大切な家族を守る為の力を得る為に戦闘訓練を頑張ろう!と奮い立ったようだ。


奮い立った後は、むしろ戦闘訓練が始まる事をラッキーだと思っている生徒も多くいたらしく、クラス替えでA.Bクラスに入ってやるんだと気合を入れている生徒もいたほどだとセルは言っていた。



「パーパ、おべんと食べおー!ぱるるのおべんとー!」


「なんやシャイナス、グルルにパパって呼ばせとるんかっ!!マニアックなやっちゃなぁー!」


「俺が呼ばせてるわけじゃないって。それとグルル、弁当は昼休みまで我慢しろよ」


俺がセルと談笑していると、前の席で話していたグルルとヤンバルが会話に入ってきて、一時限目が始まるまで賑やかな談笑が続いた。




今日から本格的に二学期が始まる。

家や外で遊ぶだけでは教える事が出来ない事などを グルルがちゃんと学んでいけるように、俺も今まで以上にしっかりしないとな。




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