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光のタクト  作者: セカンド
魂の軌跡
123/165

【 誤算 】



「うぅ…ぶ、ぶひぃぃ……」


これから自分がどうなってしまうのか想像すらつかず、ガタガタと震えながら尻餅をついているデブディモだが、ガルルだけは守ろうとしているかのように必死に自分の後ろにガルルを隠していた。


そんなデブディモに対し、サラは距離を詰める事なく無表情のまま口を開く。


「モーテルさんの事は想定外でした。驚かせてしまった事は謝罪します。私達は知りたいだけであり貴方達に危害を加えるつもりはありませんでした」


「ーーーーー」


デブディモは怯えと警戒を抱えたままサラの言葉に耳を傾けるが、表情の変わらないサラの内心は全く見えてこない。


「デブディモさん、貴方もガルル君の事を知りたいのではありませんか?私もガルル君の事を知らなくてはならない義務がありますので、ここはご協力頂けるとありがたいのですが」


「ーーーガルル少年の事は、ボキも知りたいって、思ってるでぶ」


実際、モーテルのスタイリングが終わったらモーテルにガルルの過去を聞くつもりだったデブディモはサラにそう告げた。


「そうですか、ありがとうございます。では、場所を変えてーーー」


デブディモの言葉を承諾と受け取ったサラは、デブディモに一歩近づき 立ち上がらせる為に手を差し出しながら場所の移動を提案しようとしたが、デブディモはサラから離れるように後退りしながら1人で立ち上がった。


「嫌でぶっ!サラたん達はガルル少年に攻撃しようとしたでぶっ!信用なんか、出来るわけないでぶっ!」


「ーーーーー」


大声で八英雄サラに反論したデブディモの足は、子鹿のように震えていた。



「そうですか、仕方ありませんね。デブディモさんの事は既に調べてありますので、貴方が前科もなく正しく生きる人だと知っています。なのであまり手荒な事はしたくありませんでしたが、ガルル君をこのまま帰す訳にはいきませんので」



そう言った直後、表情の変わらないサラの雰囲気が変わった。


空気が歪み、気温が下がったような錯覚がデブディモを襲う。


サラは顔も姿勢も先程から全く変化がないにも関わらず、戦闘経験のないデブディモにもサラが臨戦態勢に入った事が理解出来る程の変化。


その変化にデブディモは完全に沈黙し、硬直した。



「おまえ・なんだ?でぶでぃが・こわがってる。それ・やめないと・・・・くわずに・ころす」


動く事のできないデブディモの後ろに隠されていたガルルが、デブディモとサラの間に入り サラに対して警告をするが、サラはもちろん引き下がる事などせずに持っていた鞭に魔力を大量に流し始めた。


「が、ガルル少年!?ダメでぶっ、サラたんを怒らせたらダメでぶよっ!本当に殺されるでぶよっ」


「殺したりはしない予定です。ですが、動けなくなるまでは攻撃させていただきますので全力で防御して頂けると助かります。では、行きます」


淡々と話すサラの言葉に偽りはない。

サラの狙いはデブディモとガルルの魔力切れだった。


逃走するにしても反撃するにしても魔力が切れれば対処が楽になり、拘束するのも容易になる。


人外な力を持つ英雄サラはひたすら攻撃を繰り返してデブディモ達の魔力枯渇を狙うつもりであったが、ここでサラに2つの誤算が訪れた。



「がるるるるるっっ、がぁぁぁぁっ!」


「ーーッ!?」


1つ目の誤算は、ガルルもまた人外の力を持っていた事。


サラが鞭でまずはデブディモを拘束しようとしたところ、鞭を振るよりも早くガルルがサラに襲い掛かった。


サラは咄嗟に躱して攻撃を受ける事は無かったが、持っていた鞭はガルルに噛み砕かれて地面に転がってしまった。



「・・・これは手加減して戦える相手ではありませんね。デブディモさんは死なないように使える防御魔法と結界を全力で展開して身を守っていて下さい」


砕かれた鞭を横目で見たサラはガルルに意識を向けながらデブディモにそう言うと、タイトなスカートの内側から新たな鞭を二本取り出した。


「サラたんセクシャルッ!あのスカートはどうなってるんでぶか!?まるで四次元スカートでぶね・・・ってそんな事よりガルル少年っ、落ち着くでぶよっ!」


サラの指示通りに使えるだけの防御魔法と結界を展開したデブディモは、サラがスカートを少し捲って取り出した鞭を見て場違いな発言をしていた。

デブディモに軽口を叩く程度の僅かな余裕が戻ったのは、防御魔法を掛けまくった事で多少の安心を得たのもそうだが、敵であるはずのサラがデブディモに被害が出ないように気遣う発言をした事で、先程サラが「危害を加えるつもりはありませんでした」と言った事が本当なのかもしれないと思えたからであった。


しかし、そんな事を思っているデブディモとは違い、ガルルは完全に戦闘体勢に入り サラを嚙み殺そうと機会を伺っている。



「・・・やはり念話は通じませんか。ウラルさんの結界が仇になってしまいましたね。仕方ありません、全力で行かせてーーー」



ドゴォォォォンッーーー


「ぶひぃっ!こ、今度はなんでぶかっ!?」



サラがガルルに攻撃を加えようとした途端、2つ目の誤算が訪れた。


デブディモのすぐ近くの壁、ウラルの強力な結界によって保護された特別館の壁が木っ端微塵に粉砕されたのだ。


ウラルの結界は特別館を外から包み込むように展開されており、内側の衝撃で建物の中を破壊する事は出来ても結界の装甲が厚くなっている壁を破壊するなど並の力では不可能であるとサラは認識していた。


しかし、壁は破壊された。


サラの認識に間違いはなく、ウラルの結界に不備があったわけではない。


ただ、壁を破壊した人物がサラの想定に入っていなかっただけ。


ここに現れるなど、微塵も計算になかっただけであった。



「ちぃーっス!お久しぶりっスね、サラさん。ちょいとその2人を誘拐しに来たんで、邪魔はしないでくれると嬉しいっス」


「あのあの、突然ごめんなさいですです。でもでも、言う事を聞いて欲しいですです」



特別館の壁に開けられた大きな穴の向こう側に、想定外の2人組が姿を現した。

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