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光のタクト  作者: セカンド
魂の軌跡
120/165

【 ルールリング 】



デブディモ達がお菓子を食べながら優雅?に待つ事40分。

デブディモ達の審査をする為にどこかへ行っていたサラが戻ってきた。



「お待たせしました。審査が終わりましたので遊園パスとルールリングをお渡しします」


審査を終えたサラはデブディモ達に渡す遊園パスと指輪を2つずつ持って戻ってきたが、デブディモはサラの存在に気付いておらず ガルルはサラに興味がないように反応がない。


「でゅふふふ・・たとえ今という甘美な時間が、美酒の中で戯れる気泡のように儚く消えてしまうとしても…サラたんと並んで歩いた想い出は、消えたりなんかしないのでぶよ・・ぶひっ。ヒック…」


「・・・だいぶ出来上がっているご様子ですが…ウラルさん、デブディモさんはお酒を?」


「いいえ、お客たまはジューツちか飲んでいまてんよ。ご自分と雰囲気に酔っているだけだと思いまつ」



シャンパングラスに炭酸ジュースを注いでもらい、少しだけ傾けたグラスの中でゆっくりと気泡が浮上するのを妖艶な顔で眺めるデブディモは、まるで酒と自分に酔った中流階級貴族になり切っているようであった。



「デブディモさん、お楽しみのところ申し訳ありませんが 少しだけルールリングなどの説明をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「あふんっ・・・」


サラがデブディモの持っていたグラスを取り上げ、グラスの代わりに遊園パスと指輪を渡すとデブディモは少しずつ妄想から現実へと帰ってきた。


「ーーーはっ!サラた・・サラ様っ!お勤め、ご苦労様でありますでぶぅぅっ」


「お楽しみ頂けているようで私も嬉しく思います。早速ですがルールリングの説明をさせていただきます。よろしいですか?」



表情の変わらないサラの発言に、デブディモは大きく頷き 説明を聞くために姿勢を正した。


デブディモの聞く姿勢が整ったと判断したサラは、一度もサラに視線を向けずにお菓子を食べ続けているガルルをチラッと見た後 視線をデブディモに戻して説明を始めた。



「遊園パスは他者が見える所に装着して頂ければ場所は問いませんが、ルールリングはしっかりと指に嵌めておいて下さい。指輪は指に近付ければ自動でサイズ調整を行いますので、お好きな指に嵌めて頂いて結構です」


「ほえぇ…凄い指輪でぶねぇ、わかったでぶ。ーーーでもこの指輪、何か意味があるんでぶか?」


サラから受け取ったシンプルな指輪を見ながらデブディモが質問をすると、サラは頷いた後 説明を再開した。



「はい、ご存知だとは思いますがアルバティル学園には多くの建物があり、学園関係者以外は立ち入る事を禁止している建物や学生寮などもあります。ですが建物には立ち入り禁止の看板などは掛けられておりませんので、一般の方にはどれが入っていい建物なのかわかりにくいと思います」


「ふむふむ…」


通い慣れた学園生や島民達であれば どの建物が何の建物なのかを把握しているが、他大陸からの観光客が数回訪れただけでは把握し切れない程の広さである為、トラブルを避ける為にも立て札などを設置した方が良いのだが、ソガラム学園長が『立ち入り禁止って、なぁーんか上から目線で嫌な気分にならない?それに、入るなって書かれてあると入りたくなっちゃうのは多分ぼくだけじゃないと思うんだよねぇー』と言った事で、立て札は設置されなかった。


「このルールリングを付けていれば、立ち入り禁止の建物が分かるようになり、立ち入り禁止の理由なども理解できるようになります。他にも学園内での禁止事項や地図なども脳内に直接インプットされますので、遊園の際には役立つようになっています。ルールリングの効力は学園を出ると失われますが、指輪は記念品としてそのまま持ち帰って頂いて結構です。口頭での説明は以上になります。後は指輪を付けていただければ理解出来ると思いますので、実際に付けてみて下さい」


「わかりましたでぶ。もう付けていいでぶか?」


「どうぞ」


サラの説明を聞いても、いまいち理解出来ていないデブディモはとりあえず指輪を付けてみる事にした。


デブディモの小指よりも小さな指輪を手に取り、本当に嵌るのか半信半疑なまま右手の人差し指に近付けていくと、


「お、おぉー!広がったでぶっ!凄いでぶぅっ!」


指輪はデブディモの人差し指を受け入れるように広がり、指の付け根まで滑らせると外れない程度に縮まっていった。


「ーーー?何も変わらないでぶよ?」


脳内に学園内でのルールや地図がインプットされると言われたが、指輪を付けてもデブディモの頭の中には何も変化が起きなかった。


「失礼しました。この部屋では効力は無効化されていますので、部屋を出た時にインプットが確認出来ると思います」


「そうなんでぶか、わかったでぶ。なんかワクワクするでぶねっ!もう外に出てもいいでぶか?」


新しいオモチャで早く遊びたい子供のようにソワソワするデブディモに、サラは小さく頷いた。


「はい。アルバティル学園は大変広い構造になっていますので、ガルル君と逸れてしまわないように気を付けてお楽しみ下さい。それと、本日限定で特別に用意してある建物がありますので是非そちらにも足を運んでみて下さい。場所はインプットされていますので。では、私はこれで失礼致します」



サラは説明を終えるとそのまま部屋を出て行った。


それを見送ったデブディモはガルルにも指輪を嵌めさせると、残っていたお菓子を口いっぱいに詰め込んでから立ち上がった。


「をぉーひ!あふぉぶでぶほぉー!」


「ーーーーー」


立ち上がったデブディモは、指に嵌められた指輪をジィーと眺めているガルルの手を引いて部屋の出口に向かい、半仮面の少女に元気良くお礼を言ってから部屋を出た。



ーーー



「ーーぶひっ!?おぉ、これが指輪効果でぶかっ。凄いでぶねっ」


部屋から一歩足を踏み出し、燦々と照りつける太陽に顔をしかめていると デブディモの脳内に新しい情報がスッと入ってきたのを感じたが、サラから事前に説明を受けていた為 驚きはしたが動揺する事はなく、体験したことの無い最先端技術に興奮していた。


脳内に直接入ってきたのは地図やルールだが、常に見えている訳ではなく 見たいと思えば見え、建物などの詳細を知りたいと思えばその情報を得る事が出来るようになっており、そのやり方も既にインプットされている為 地図の見方がわからないといった事が起こらないようにもなっていた。



「ふむふむ…正門付近は学生専用の建物が多いみたいでぶね・・・あっ、サラたんが言ってた特別な建物はここから近いみたいでぶよ!まずはそこに行ってみるでぶか」


「ーーーーー」


何も返事をしないガルルの手を引き、一度も振り返る事無くサラがおすすめした建物を目指して歩き出したデブディモは、気付いていない。



サラに連れられて来た時は屋内の綺麗な通路を歩いて来たのに 部屋から出ると直に外であった事にも。

たった今、自分がいたはずの部屋が 既に無くなっている事にも。



そして、サラとソガラムが最大限の警戒をしながら2人を観察している事にも、デブディモは全く気付いていなかった。

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