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光のタクト  作者: セカンド
魂の軌跡
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【 全世界同時念話通信 】



イリアが食材を取りに行きたいと言うので、一度イリアの家に寄って食材を取ってから俺の家に向かった。


イリアの家に寄った時にマキナが出てくるかと思ったが、どうやら爆睡していたらしく何事も無く俺の家に着く事が出来た。


ーーーーー



俺の家に着き、少し早いが夕食の準備をしようとイリアに提案したのだが、イリアから「私が作っておくから2人はお風呂入って来て」と言われてしまったので、グルルと風呂に入る事にした。


俺とグルルはお互いの身体を洗い合った後、湯船でひと息つき風呂を上がった。




30分程で風呂を済ませてリビングに戻ると、既に料理は作り終わっており 色とりどりのおかずが綺麗に盛り付けされていた。


エプロン姿のイリアが3人分の飲み物を淹れてくれたのを合図に、俺達は揃っていただきますを言い 食事を始めた。



「そういえばサラ先生が夕方に念話放送があるって言ってたけど、もうそろそろかな?」


「念話放送?珍しいね。何かあったのかな?」


「この降り続けてる雨を明後日消すって言ってた。確かに今年の雨は異常だからな」


「そっか。雨が止むのは嬉しいけど、雨は神様の恵みっていうから…それを人の力で消しちゃうのは本当に良い事なのかな…って思っちゃうね」



俺がサラ先生に聞いた話をイリアに教えると、イリアは複雑そうな顔をしていた。


イリア自身も雨が続き過ぎるのは花に良くないから止んで欲しいとは言っていたのだが、それが自然にではなく人工的に止ませるのには賛否の思いがあるようだ。



「まぁ神様も忙しくて雨を止ませるのを忘れてたのかもしれないから、その手伝いを人間がするって考えればいいんじゃないか?それに学園島では被害は少ないけど、どっかの国ではこの雨で大変な思いをしている人達がいるのかもしれないしな」


「ふふっ、なんだか子供に言い聞かせるみたいな言い方だね。グルル君が弟になった影響かな?タクトお兄ちゃん」



ーーお兄ちゃんって響きは、なんだかむず痒いな。


「あっ、それよりグルル君は念話放送を聞くの初めてになるよね?驚かない様に説明してあげた方が良いよね」


「あぁそうだな。ーーグルル、ちょっといいか?」


行儀良くフォークでミニトマトを口に運ぶグルルの名前を呼ぶと、グルルは食べる手を止めて俺達の方を見た。


「どったのー?いーりゃのごはーん、おいしよー!」


「ふふっ、ありがとうグルル君。食べてるのにごめんね、グルル君がビックリしないように先に教えておきたい事があるの」



それからイリアによる念話通信講座がグルルに施され、俺は隣で食事をしながらその様子を見ていた。


ーー念話通信はザックリ言うと 一方的に声を伝えてくるテレパシーのようなモノで、念話が届けられる時に頭の中でザザッと音がする。


学校に通っていれば、そういう放送があるという知識を得る事が出来るし、学校に通っていなくとも一般的な暮らしをしていれば常識として知っている事なのだが、グルルはおそらく一般常識を知らないので突然頭の中で雑音が聞こえたら驚いてしまうかもしれない。


なので今イリアが説明をしてくれているのだが…丁寧で分かりやすく、グルルもすんなり理解したようなのでイリアに任せて良かった。



「相変わらずイリアは説明が上手いな。さすがお姉ちゃんだな」


「ーーーっ!?」


マキナというちょっと頭が残念な妹がいると、こんなに出来の良い姉になるのか…と、俺は素直に思った事を口にすると、イリアは一瞬だけ目を見開き 驚いた顔で俺を見た。



「ん?どうしたんだ?俺、なんか変な事言ったか?」


「う、ううん。なんでもないよ。ーーそれより食べよっ。グルル君も。ねっ」


「もぐもぐ・・おおー?ぐるるたべてるおー!うまうまー」



なんだったんだ?

・・・まぁいいか。俺も早く食べないとグルルに全部食べられてしまう。


グルルは行儀良くはなったが、食べる量が減った訳ではないので油断しているとすぐに無くなってしまう。


少し不思議に思うのは、食べる量はめちゃくちゃ多いが出された分でいつも満足しているところだ。


海老パーティーの時の量を食べたと思ったら、焼うどん一人前でも文句を言わない。


俺は食は細くも太くもないので、大食いの人の感覚がよくわからない。

マキナやセルは能力の関係上よく食べるのはなんとなくわかるのだが、グルルに関してはさっぱりだ。


まぁ食が細過ぎて心配になるよりかはいいか…





『ザザッーー』


暫くは和やかな雰囲気で食事をしていたが、突然頭に雑音が響き 俺は食べる手を止めた。


「念話通信、始まったみたいだね。ーーグルル君、これが念話通信だよ。今から知らない人の声が聞こえてくるけど、心配しなくて大丈夫だからね」


「おおー?」


当たり前だがイリアにも念話通信が届いたようで、イリアは箸を置いてグルルの頭を優しく撫でていた。


よく分かっていなさそうなグルルに俺も何か言ってあげた方が良いかとも思ったが、イリアがちゃんと見ててくれているので任せて大丈夫だろうと思い、念話通信に意識を集中させた。



『こちらセントクルス王国緊急通信センターです。この放送は全大陸全人類に同時通信でお伝えしております。ーー現在、世界中で降り続いている雨が限度量を大幅に超え、二次災害 三次災害が各地で相次いでいる事を考慮し、セントクルス、学園島、ワインベルク、エルスノウの代表会議により雨雲の消去が決定致しました。雨雲の消去作業は明後日8月27日の正午にセントクルス軍の指揮の下 一斉に行います。正午から数分間は上空に強力な魔法が放たれますので、飛行または上空への干渉は一切禁止となります。万が一妨害行為を行った場合、妨害行為を行った者並びに、それに関わった者全てが裁判なしで極刑になります。尚、外出される方で軍の指示に従わずに負った怪我または死亡は一切責任を負いませんので必ず指示に従い、用のない方は家から出ないようにして下さい。雨雲削除作業が行われるまでの間、定期的にメディアで同じ放送を行いますのでそちらもご了承下さいますようお願い申し上げます。ーーーこれで緊急念話通信は終わりますーーザザッーー』



人間味のない機械的な放送が終わり、脳内に静寂が訪れる。


滅多にない放送という事で少し肩が凝った感じがした俺は、首を回してフゥーと息を吐いた。


「ふぅ、タクトも肩凝ったみたいだね。ーー私も少し疲れちゃった」


イリアも俺と同じ様に首を押さえながら苦笑いしていた。


「念話なんて慣れてないからな……にしても、なんで経験した事ある俺達が肩凝ってるのに初めてのグルルは平気な顔で飯食ってるんだ?」


「おおー?どったのー?」


ーーん?念話通信が聞こえてなかったのか?


・・いや、それはないか。


って事は…やっぱり子供は凄いって事か。

俺達のように繰り返しの毎日を過ごしていると、いつもと違うってだけで身構えてしまいがちだが、全てが新しい出来事であるグルルにとってはそもそも慣れなど存在しないので苦にもならないのだろう。



元気に食事を続けるグルルを見ていたら、なんとなく俺も元気が戻ってきた気がし、食事のラストスパートをかけた。


その後は3人で洗い物をし、遅くなる前にイリアを送った。


イリアを送って帰ってきても やはり母さんはまだ仕事から帰ってきていなかった。


なので俺は今日も日課の筋トレと魔法練習をグルルと一緒に済ませ、絵本を読んであげてからベッドに入った。


グルルはまだ眠くないと言って隣の自室に行ったので、自分で本でも読んでいるのだろう。




雨が止むまで後2日。


雨が止んで少しすれば新学期が始まってしまうが、それまではグルルに学園島を案内してやろう。


ネジリー店長の店にもまた行きたいし、ルークにもグルルを紹介したい・・・


円源も連れて行かないとな・・グルルも絶対ハマるぞ・・・

そういえばモヒカン・・じゃなくてメシクレは何やってんだろうな・・まぁいいか、、、サラ、先生には、今日のグルルの事、謝らないとな……イリアの飯…グルル、、、、、、、



これからの事をぐるぐる考えていると、タクトはいつの間にか眠りに落ちていった。


隣の部屋…グルルの部屋の窓が開いている事にも気付かないまま 深い眠りへと。





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