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光のタクト  作者: セカンド
世界を変える大雨
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【 決意を胸に 】

その後は遠征前日の打ち合わせ場所や集合時間などを多少関係の無い話を織り交ぜながら確認して解散となった。


クローツ先輩も俺と同じLV3だが、普段は生徒会ミーティングを優先させていて集会で顔を見るのは珍しく、ましてや一対一で話す機会など今まで一度もなかったので、俺は柄にもなく少し興奮して話し込んでしまった。


魔獣の事も不安ではあったが、クローツ先輩が「大丈夫、サディスもマゾエルも個人で戦ったとしても、僕なんか足元にも及ばない程の強さだし一応補佐として僕とサラ先生が同行するから」と言った一言で不安がほぼ無くなった。


サディスとマゾエルの実力を俺は知らないが、サラ先生とクローツ先輩の強さは世界中の人が知っている。


2人は世界公認の八英雄で、人類の強さの象徴なのだから。


サラ先生は演説当時、仮面を付けていなかったリーダー格の女性で、クローツ先輩は迫害から立ち上がり勇者と呼ばれた少年だ。


英雄達の強さは心の強さだけではなく、各々が人間離れした才能と実力を兼ね揃えていた。


そんな英雄2人が同行するうえに俺の中ではまさに強さの象徴であるクローツ先輩が、自分より遥かに格上だと認めているサディスとマゾエルが行くと言うのなら、俺が心配するなんて無意味を通り越して失礼になってしまうというものだ。



===========



「煩んっっっっ脳ぅぅぅぅっ!!!」


憧れの先輩との会話を堪能し、浮かれた余韻に浸りながら軽い足取りでイリア達の待つ噴水へ向かっていると聞き慣れた奇声が聞こえてきた。



「あ、タクトお疲れさま。結構時間かかったね。何かあったの?」


奇声の発信源である噴水の近くまで辿り着くとイリアが俺に気付いて声をかけてきた。


「いや、週末の遠征の事で少し話してただけだよ。クローツ先輩と話せるなんて思ってもいなかったから、ちょっとテンション上がって話し込んでたんだ。遅くなってごめん」


「私が一緒に帰りたくて待ってただけなんだし謝らなくていいよ。タクトは会長の事ずっと憧れてたものね、話せて良かったね」


待たせてしまった謝罪を済ませたので帰宅したいのだが、このままスルーするのも気が引けるので渋々セルに声をかける事にした。


「おいセル、いつまで噴水に打たれながら座禅組んでるんだよ、帰るぞ」


「煩んっっっっのってタクトやっと来たか、さぁ帰ろうぜ」


煩悩を振り払うのに集中していて俺に気付いていなかったセルが、何事もないかのように俺に近づき、俺の肩を組みながらそう言ってきた。

びしょ濡れのまま。




「いやぁ、まさかタクトが関わってくるとは意外だったな」


びしょ濡れの俺とセルをイリアが魔法で乾かしてくれて、今は三人で並んで帰宅しているところだ。



イリアは心配性なので、魔獣の数は言わずに先程クローツ先輩から頼まれた内容を話すと、生徒会役員で事情をある程度知っていたセルが少し驚いていた。


「あぁ、俺も最初は意味がわからなかったよ」


「ふふっ。マリアちゃんはタクトの事が大好きだもんね。でもそんな危ない所に行って大丈夫なの?ちゃんと守ってあげられるの?」


クローツ先輩は余裕のある感じで説明してくれたが万が一魔獣が目の前に現れたら、正直まったく勝てる気がしない。


「自信はないけど、マリアだけは何があっても守ってあげないとな」


「タクトが心配しなくっても、あの学園最強姉妹が近くにいるなら問題ないって。あの2人のマリアちゃんへの溺愛っぷりは半端じゃないからねぇ。万が一にもマリアちゃんに被害がいく事はないっしょ」


確かにセルの言う通りかもしれないが、魔獣の大群が目と鼻の先にいて、隣には見た目7歳の女の子がいる状況を想像したら不安にもなるさ。


「うーん。確かにマリアちゃんは大丈夫かもね。マキナと一緒に私も何回かマリアちゃんと遊んだ事があるけど、怪我どころかマリアちゃんが虫に刺された所も見たことないもの。心配なのは、よく怪我するタクトの方かも」


マリアが虫に刺されないのは、たまたま刺されにくい体質なのかもしれないが、怪我の方は別だ。


マリアは怪我をしないのではなく、できないのだ。


これはマリアがとんでもない能力を持っているとかではなく、怪我をしそうになると必ず姉達が助けるからだ。


転びそうになるとマゾエルがクッションになり、車に轢かれそうになるとサディスが車を投げ飛ばす。

キッカーボールが飛んでくるとマゾエルが笑いながら顔面でボールを受け止めて、ボールを飛ばした人はサディスにぶっ飛ばされる。


そんな風にマリアが負うはずの怪我はマゾエルが身代わりになり、怪我の原因になるものはサディスが排除してしまう。


…うん、きっと魔獣がマリアに危害を加える事はないだろう。


「それでも、何があっても守れるように気をつけておくよ」


「うん。それでこそタクトだね!がんばってね!」


魔法の力が強いわけでも、腕力があるわけでもない俺にできる事なんてたかが知れてる。


だけど、何も出来ないわけじゃない。

やれる事が少なくてもゼロじゃないなら、俺はそれを全力でやるだけだ。


英雄達のように多くの人を救ったりはできないけど、せめて俺の手の届く場所にいてくれている人達くらいは守りたいと思うし、守るためにやれる事はなんだってやってやる。



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