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新たな出会い

エルツ一家は、バーンという戦士と出会いました。

ちょっと投稿するときになって、話しを分けちゃいました。

「あの子今日もふさぎ込んでるの。ねえ、あなた。ヒメルのそばにいていいかしら?」

苦しそうなテーレの顔は、その言葉を言うのをどれだけ考えたのかわかるようなものだった。


「君がそこまで思うことじゃないよ。僕の方からお願いしたいくらいだ。ねえ、テーレ。お願いだからヒメルのそばにいてやってくれないかい。僕はそんなに無茶しないから。」


ばあやの死は、幼いヒメルにとって想像を絶するものだったのだろう。

小さい時から常に一緒にいたばあや。

その死は僕の気持ちを突き落としていたが、大人の僕はそれを処理することもできるようになっていた。

しかし、幼いヒメルにとって、ばあやは特別な人であった。


唯一のいつも一緒にいてくれる人で。

唯一の協力者で。

唯一の友達だった。


その人を突然に亡くした感情は、ヒメルの中で処理できずにいた。


どこまでももろく、

どこまでもはかなく、

この瞬間にも消え去りそうなヒメルを見るのは、正直つらかった。


テーレはそれを支えたいと願っていた。そして実行していた。


僕が逃げたことから、目をそらさずに。

しっかりとヒメルと向き合おうとしていた。


だから、僕は僕のやり方で二人を見守ろうと決心していた。


しかし、世界は僕たちに試練を課してきた。


魔獣の増殖。妖魔の活動活発化。

一人では処理をしきれないものだった。


デルバー先生に応援を要請し、一時持ち直したが、これだけ大規模に展開されると対応に苦慮していた。


「先生、正直恒常的な応援をお願いしたいんですけど。今までのように臨時じゃなく。」

僕は切羽詰まっていた。

一人では処理しきれない問題が生じる可能性があった。

僕は集団戦で対応するには少々手持ちの魔法が偏りすぎていた。


誰かが前衛でもちこたえてほしかった。


「一人、頼んでおる。ロヴァルの弟子だ。14歳の若造じゃが、腕は確かだと聞いておる。」

デルバー先生は僕の後ろを気にしていた。


「あのロヴァルが手を焼いたんじゃ。まず間違いはなかろう。おぬしのところに行くように伝えてもらっているから、まあ、明日にはやってくるんじゃないかの?」

デルバー先生は、申し訳なさそうだった。


森の活性化はいたるところで起きているようだった。


英雄マルスの方でも、対応しているようで、そちらは全く問題ないようだが、問題はここだ。

エーデルシュタイン辺境伯の領地でも更に奥深いところにあるこの土地だった。


この5年で開拓はすすみ、この村も比較的大きな村に変わりつつあった。

ここに僕たちがいる分、警戒がしっかりしていて、ここは唯一魔獣や妖魔の襲撃がない村だった。

その噂により、辺境ながらも、よそからの移住も増えてきた。

近く、領主も誕生するという噂だった。

だれがなるのか知らないが、こんな辺鄙なところに誰が来るのだろう?

よっぽどの物好きか、お人よしか、だまされたか・・・・。


あれ?まてよ?

僕は急に何か巻き込まれていることに気が付いた。

いやいや、そんなことはない。

僕はその考えを頭の端においやった。



次の日、デルバー先生の言葉は見ていたような正確さを発揮していた。


「バーンです。よろしくお願いします。」

バーンと名乗る14歳の少年は、年齢に似合わない、立派な体つきをしていた。その体格に合った両手持剣を背中に背負っていた。


「たしか、ロヴァルの流派って片手剣だよね?君。本当にそうなのかい?」

僕は思わず聞いていた。


「よく知ってますね。そうですよ。でも、俺、片手剣って正直いやなんで。こいつの方がかっこいいし。魔物相手にするなら、こいつでないとね。」

バーンは人間相手に剣を振るうのではないと暗に告げているようだった。


それでも確認しておきたかった。

「で、君は師匠においだされたと?」

僕は我ながら意地の悪い質問だと思っていた。


「よく知ってますね。まあ、基本形は片手剣で使えるから、あとはこいつでどこまでアレンジできるかですけどね。あと、破門はされてないです。師匠そういうの好きじゃなくて。一人前になるまで面倒見るってのが矜持らしいです。」

誇らしげだった。


それだけに、頼もしかった。

「じゃあ、君は何でここにきたんだい?」

詮索はここまでだ、どちらにしても僕には前衛が必要だった。


「頭冷やして来いとだけ・・・。あと、世の中を見て回れ、だったかな?」

バーンは思い返すように返答していた。


ああ、なるほど。

この子は師匠に愛されている。

だったら、ちゃんと面倒見ないとな。


「よし、じゃあさっそくウチの家族に紹介しよう。これからよろしく、バーン」

僕は彼の肩をたたきながら、頼んでいた。


「あと、うちの子に手を出したら、いくら君でも承知しないからな。」

僕は、年は離れているが、将来の悪い虫候補に忠告は忘れなかった。


「・・・・・?はあ。」

なんて気の抜けた返事だ。

こんなのに任せられんな。だいたい、顔がおっさん臭い。


よし、一人脱落だ。


ヒメル。お父さんはちゃんと見極めているよ。

心の中のヒメルがわらっていた。


ああ、幸せだった。

「あの、どっちの部屋ですか?」

「ん。こっちだ。」

扉を開けて、バーンを先にいれていた。


このガキ、人の楽しみを邪魔してくれて、森の中に放置してやろうか・・・・。

一瞬殺意が芽生えた。


「!?」

とっさにバーンが距離を取って、身構えていた。


「ほう。やるもんだね。」

僕は正直感心した。


「勘弁してください。これ、試験なんですか?」

バーンは本当に困った顔だった。


「はは、まあそうかな?」

僕はごまかしていた。


腕は立つようだ。

顔は・・・おっさんだが悪くはない。

後は中身だが、まあ及第点かな。


よし、ヒメルの護衛くらいなら許そう。

おい、護衛だぞ。わかってるか?


「あの・・・・俺なんかわるいことしました?」

僕のにらみにたいして、ばつが悪そうに頭をかいていた。


「あなた・・・・まさか・・・・。」

テーレは最高の奥さんだ。

僕の頭の仲間でお見通しだった。


「はは。テーレ。そんな目で見ないで・・・・。」

「バーン、紹介しよう。最愛の奥さんのテーレとわが愛しの娘ヒメルちゃんだ。ついでに友人のブリーズもいるけど、いるんだろ?ブリーズ、ブリーズ?」

僕はブリーズを探していた。


「おい、ニンゲン。人の名前を知らない奴にきやすく教えるもんじゃない。」

人化したブリーズに頭を殴られていた。

多少大きくなっていたが、まだまだ小さなブリーズだった。


「すげー。俺精霊って初めて見た。よろしく、ブリーズさん。俺、バーンって言います。」

バーンは目をキラキラさせて、ブリーズをみていた。


おい、だらしない顔だぞ。なんだその憧れみたいな表情。


「ふん。」

そう言ってブリーズは僕たちの前から消えていた。


「ふふ。よろしくね。バーン。ブリーズは照れてるだけだから、心配しないで。」

テーレはにっこりとほほ笑んでいた。


「はい・・・・。」

バーンは固まっていた。

わかる。わかるぞ、少年。

僕はバーンの頭を思いっきりはたいていた。


「いってー。」

涙交じりにバーンが抗議の声を上げていた。


「あはははは!へんなの。おじちゃん。変!変な顔!」

ヒメルがバーンを見て笑っていた。


「こんにちは、ヒメルちゃん。それと、おじちゃんじゃないよ。んー。バーンおにいちゃんだからね。」

しゃがみこんで、バーンはそう名乗っていた。


おじちゃんか。

うんうん。ヒメル。そのセンス。まちがってない。

でも、変な顔は訂正しないのか・・・まあ自覚はあるようだな。

さっきのはその中でも、一番の間抜けだったぞ。


「わかった。バーンおじちゃん!」

ヒメルは正しい選択をしていた。


もう笑いをこらえるのに必死だった。

バーンの顔は表情豊かだった。


「バーンでいいよ・・・・。」

バーン。

14歳でおじちゃんはきついよな・・・・。理解はする。


だが、同情などしてやるもんか!


初対面でこれだけヒメルと打ち解けたこいつは、只者じゃない。


僕はバーンを危険人物に指定しておいた。


「わかった。バーン。ヒメルも精霊さん、大好きだからね!」

そう言ってヒメルはバーンの肩を2回たたいていた。


ああ、ヒメルにとって精霊と仲良くしようというのが線引きなのか。

僕は急速に理解していた。


相変わらず、テーレは優しい笑顔を向けていた。

この出会いはいいものになりそうだ。

僕はそう感じていた。




でも、ヒメルはわたさん!

僕はヒメルを抱きながら、バーンをにらんでいた。


すでに親ばか全開のエルツでした。

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