episode4
文化祭実行委員の仕事は主に二つ。
一つはクラスの会計やサポート。
うちのクラスの出し物である怪談屋敷は怪談話をモチーフにしたお化け屋敷。
恐らく、早々予算が必要になる。
予算をもらうには早いところ内装班や衣装班、お化け役や受付とかを決めないと...
「...さん、巻野さん」
ハッとすると目の前には困った顔の山城。
「ごめん、呼んだ?」
今は放課後。
教室には私と山城の二人しかいなくて静まり返っていた。
「なんか、すごく眉間に皺寄せて考え事してたから心配になっただけ...」
そう言うとまた報告書を書き始めた。
少しだけ躊躇していたけど、私は疑問に思うことを話そうとした。
「...怒んないの?私のこと」
「え?」
予想に反してキョトンとした顔で見つめられる。
「せっかく、秀花と委員できたかもしれないのに私になっちゃって...山城が怒っても無理ないと思う...」
協力することを承諾したのに...私は何もできなかった...。
「俺は怒ってないよ...でも...」
山城はそのあと、モジモジとし出した。
...格好が変わっても山城自身はすぐには変わらないか。
それのギャップに少し笑ってしまった。
「え、ど、どうしたの?」
そして決まってオドオドしだした。
「いや、もっと堂々とすればいいのにって思っただけ」
「...堂々と」
「うん。何か思うことあるなら話していいんだよ?」
それからまた少しだけ考え込んでしまった。
そしていきなり、顔をあげて私の顔をマジマジと見た。
「...じゃあ、言わせてもらうけど。俺は巻野さんと委員やれてよかったと思ってる」
「え?」
どうして?
山城は秀花といたいはずなのに。
「たぶん、あのときに巻野さんじゃなくて江川さんと一緒にやることになってたら、きっと俺は緊張しすぎて到底仕事とか勤まんなかっただろうし...何よりこういう仕事とか任されたの初めてで...だから一緒に仕事できるのが巻野さんみたいに信用できる人でよかったなって思ってる」
...信用。
‘山城はマキのこと信用してるみたいだし’
秀花の言葉を思い出した。
...たった1日しか話してないのに。
「...山城、それは買い被りすぎ」
私は笑って見せた。
山城があんまりにも真面目な顔で言うから。
「私はね、山城が思ってるようないい人じゃないよ」
「...そういうところだよ」
珍しく食いついてきた。
「悪い人はそういうとき、そんなことは言わないし、いい人じゃなかったらきっと俺の話なんて聞いてくれなかった。協力なんてしてくれなかった...俺はそう思う」
「...」
なんだか興味半分で山城の話を聞こうとした自分から少しだけ恥ずかしくなった。
こんなに真っ直ぐな人っているんだ...
「だから、今回の件はむしろありがとうございました」
「...うん」
私はそう、頷いた。
今後のクラス計画をある程度書き終えた。
「終わったね。お疲れ様」
山城は席を立とうとした。
「山城、一つ提案してもいい?」
「何?」
私は去年の文化祭のパンフレットを出した。
そして、後夜祭のページを開く。
「これ、出てみない?」