episode3
『明日は教室に行く前に格好見るから勝手に教室に行かないこと』
『了解(o・ω・)ノ))』
女友達か。
SNSの山城と‘幽霊’山城のギャップがあって私は少し混乱していた。
...まあでも。
悪い奴ではないんだろうな。
山城とは一階昇降口からすぐの空き教室で待ち合わせすることにした。
私は今更ながら、秀花に昨日の連絡をするこを忘れていたことに気づいた。
...あとで謝ろう。
「マキ!おはよ!」
と、そこへ当の本人が来た。
「おはよ、秀花。昨日は連絡しなくてごめんね」
「ううん、全然。んで昨日は結局なんのお誘いだったの~?」
「え、それがさ...」
...なんて言えばいいんだろう。
昨日のことはそっくりそのまま秀花に伝えたら一生懸命に私を説得した山城の努力は水の泡...
「マキ?」
「あ、あれね、それがさ...」
「...巻野さん?」
山城の声...
「山城、おそ...」
私は振り返って唖然とした。
ほどよく着崩した制服。
さっぱりとした今時な髪型。
そして...綺麗な黄色い目。
どこからどう見ても昨日の山城はいない。
「...山城?」
その様子を見て秀花もマジマジと山城を見た。
「お、おはよう、江川さん、巻野さん」
そして、照れながらもそう挨拶をした。
「へえ、すごくイメチェンしたね。似合ってるよ」
秀花は山城に笑いかけた。
「あ、ありがとう」
それにさらに顔を赤くする山城。
...なんかとってもお似合いな二人だな。
少しだけ胸の奥に痛みを感じた。
「じゃあうちのクラスの文化祭の出し物は山城監修の怪談屋敷ってことで!」
クラスの全生徒36人が一致可決で決まった。
決まった途端、女子達が山城を取り囲む。
「山城くーん!怪談話好きなんだね?」
「私も聞いてみたーい」
すると秀花が私の席に来た。
「山城、すごいね」
「ね。なんで急にイメチェンしたんだろうね」
「...昨日のことなんだけどね」
私は突如、誤魔化す内容を思い付いた。
「うん」
秀花は私の前の席に座った。
「呼び出したの...山城だったの」
「へえ。それで告白されたの?」
「ううん。ちがくて相談されたの。クラスに馴染むにはどうしたらいいかって」
「そうだったんだ。それでイメチェンを薦めたの?」
「うん」
...これなら不自然ではないはず。
「ちょっとショックだなー」
...え?
秀花は確かに今、ショックって言った。
...どうしてだろ?
「私ね、山城と1年のときも同じクラスで一人でいること多いからちょくちょく話しかけてたんだ」
...昨日、山城が話してたことだ。
お節介だよねーと秀花は笑う。
「...だから自惚れてたかも。山城がマキにしたような相談相手に適任なのは私じゃないって思うと。まあ、でも結果的に山城はああやって変われたんだしいっか!」
秀花...そんな風に考えてたんだ...
「...秀花、もしかして」
「ん?」
「山城のこと、好きなの?」
なんだか両想いなんじゃないかな?この二人。
そうだったら...
「え、まさかー」
秀花は笑った。
「確かに格好良くなったけど、私はそこまで軽い女じゃないよ。私はずーっとあの人一筋だから」
秀花が見た方向には...クラス委員長の田部。
爽やか系なイケメンでサッカー部。そして秀花の幼馴染みで初恋の人...
「...そうだよね」
秀花はあんまり自分の恋愛話はしない。でも前にこっそり教えてくれた。
初恋の相手対山城...正直、顔とか性格とか私は二人のこと詳しくはわからないけど、さすがに難しい?
「マキこそ、山城のことどう思うの?」
「え?」
「格好良くなったし、山城はマキのこと信頼してるみたいだし...山城ってマキが好きなのかもしれないしね♪」
...墓穴掘ったかも。
「それはないでしょー」
「そう?山城って話してみると意外といい奴っぽいし、私もいいと思うけどなー」
...どうしよう、薦められる側になっちゃった。
「秀花」
するとそこに田部が来た。
「真也、どうした?」
「これなんだけどさ、文化祭実行委員二人決めなきゃなんないんだけどやってくんない?俺はクラス代表枠でどうしてもなれなくて...」
「そっかーいいよー」
「さんきゅ、助かる」
「ねえ、マキも委員やらない?」
「あ、悪い。それ男女一人ずつなんだ」
...山城を推薦すればよくない?
「そしたらさ、山城とマキでやったら?」
...え?
秀花がキラキラした目で私を見つめる。
「え、でも私やったことないし...」
ヤバイ...
「うーん、でもなー、あ!山城!」
するといきなり秀花が山城を呼んだ。
その声に女子に埋もれながらも山城が私たちの方に来た。
「な、なんか呼びましたか?」
格好が変わってもオドオドする山城。
...敬語はやめようよ。
「山城さ、文化祭実行委員やらない?マキと」
...終わった。
たぶん、山城は思うだろう。
“江川さんと一緒にやりたいのになぜ巻野さん?”
と。
「いいですよ」
にっこりと山城は笑った。
「本当に?ありがとう」
「マジか!山城、ありがとう」
田部も山城の肩を叩いた。
...お前はそれでいいのかーー!!!
なんとなくイラついたけど、一番は完全の墓穴を掘った自分自身にだった。