episode2
「俺と付き合ってください!!!」
「...」
「...」
「...」
「...」
「...あ!」
混乱する私を余所にまた山城がオドオドし出した。
「ちがくて!その言いたかったことは...」
「ち、ちょっと待って!」
私は今にも逃げたしそうな山城の肩を持ち一端制止した。
「落ち着いて!違うって何が?ちゃんと話して」
私ははっきりと言った。
「...あの」
「秀花と付き合いたい!?」
思わず声が出た。
「静かにお願いします」
山城にサッと押さえられる。
山城はすっかり落ち着いたようだ。
「いや、だって...」
秀花と山城...いくらなんでも...
「わかってます。江川さんと俺じゃ釣り合わないことくらい...でも、俺はあの人に初めて話しかけられたときから...なんていうか...」
モジモジとし始める山城に私は盛大にため息をついた。
「じゃあ、なんでここに私じゃなくて秀花を呼ばなかったのよ?」
「それは...あの...巻野さんに協力してもらえたらって...」
はぁ?
「本気で言ってるの?」
「巻野さんは江川さんととても仲が良いので協力してくれれば心強いと思って...」
「呆れたわ...自分で何とかしてよ...」
私は席を立とうとした。
「待ってください!」
いきなり腕を捕まれた。
「俺、本気なんです!」
...こいつ。
初めて見えた山城の目...
凛々しくて、真っ直ぐで、吸い込まれそう...
こんな顔してたんだ...
というか、あれ?
「...あんた、本当に日本人?」
私がそう言うと山城は目元を隠した。
「...す、すみません、気味悪いですよね」
「...」
私は山城に構わず、前髪をかきあげた。
「...綺麗」
山城の目は綺麗な黄色だった。
目が夕日に染まってさらに光る。
「...そんな風に言われたの、久しぶりです」
「...なんで今まで隠していたの?」
「...皆が気味悪がるからです。俺は父親が日本人ではなくて、目だけなぜか父の遺伝を受け継いでこの色に...小学校で皆に気味悪がれてからは前髪で目を隠しました。だから中学でも今みたいに一人でいることが多かったです。でも、誰も目をからかわない分、楽でした」
...そう言って山城は寂しそうに笑う。
「でも高校に入って、去年、俺は誰からも話しかけられない中、唯一話してくれたのが江川さんでした。だから俺はそのときからあの人だけなんです...」
...そうだったんだ。
「江川さんも巻野さんみたいに目が綺麗だと褒めてくれました。とても嬉しかったです」
...こいつ、思ってるよりもいい奴なのかもしれない。
こいつなら、秀花を任せてもいいかも...
「...わかった」
「...え」
「あんたに協力する。でも秀花は私の親友。もしも変なことして泣かしたりなんてしたら承知しないから」
私がそう言うと、山城は涙で目がいっぱいになった。
「ちょっ!あんた!大丈夫?」
「...ありがとうございます」
また前髪で顔がわからないけど...
「...まずは見た目から」
「はい?」
「とりあえず、髪切ってきな。大丈夫だよ、皆、あんたのことなんてからかったりしないよ。むしろ、その長い前髪でいるほうが不自然だって」
「...本当ですか?」
「うん、あと敬語やめて。同級生なのに」
「はい...じゃなくて...うん」
「よし!」
私は思いきり山城の頭を撫でた。
「そういえば今更だけどさ」
「うん?」
「あんた、フルネームってなんだっけ?」
「ああ、山城玲と言います。改めてお願いします」
そして丁寧に頭を下げた。
...こいつが‘幽霊’って言われてるのって。
‘玲’だから?