第七話 ぞっこん!オラの花道
ここはとあるホテルのパーティー会場、今日はここで大規模な婚活パーティーが行われようとしていた。
会場では、20代~30代前後の男女達が素敵な出会いを求めて集まっている
「おぉ~、やっぱり人がいっぱいだべ」
「ホントだ、これだけ人がいっぱいいたらイイ人なんてすぐ見つかりそうだね」
パーティー会場にやってきた大樹と一矢
二人ともタキシードに身を包み、正装している。
…話は少し遡って昨日、研究所にて
「婚活パーティー?」
大樹に見せられたビラを見ながら尋ねる一矢
「んだべ、だけんどもオラ一人だとどうにも不安で不安で仕方ねぇだよ…一生のお願ぇだ!オラと一緒に婚活パーティーさ行ってくんろ!」
土下座をして必死に懇願する大樹
「…でもさ、何もオレじゃなくてもよくない?潤平君とか正子さんとか…」
と、言って潤平と正子の方を見る一矢
「オレはパス!んな洒落たとこいってもつまんねーし」
「ウチもパスや、そもそもウチは結婚なん興味あれへんし」
と、あっさり断られてしまった
「えぇ~、そんな~」
「ん~あたしが行っても別にいいけど、高校生だから無理だもんね~」
「晴美ちゃん…そんなこと言っちゃったらオレだって一応大学生なんだけど…」
「じゃあもう分かった!ほんならウチと潤平と一矢の三人でじゃんけんしようや、それで負けた奴が大樹と一緒に行く!これなら平等でええやろ?」
「よぉし、上等だ!一矢もそれで文句ねぇよな?」
「…はぁ、分かりましたよ」
観念した一矢、渋々じゃんけんに参加する
「ええな?いくで…」
「最初はグー!じゃんけんぽん!!」
正子と潤平はグーを出し、一矢はチョキを出してしまった
「げっ…」
「やりぃ!じゃ、そういうことだから頼んだぜ一矢!」
「そんな…」
…話を戻して今
「ほら、折角だから少し話して来なよ」
「うぅ…やっぱオラダメだぁ~!一矢も一緒に来てくんろ~!」
半泣きで一矢にすがる大樹
「分かった分かった、しょうがないなぁもう…」
渋々大樹の後についてく一矢
「すぅ~、ふぅ~…よし、いくべ」
勇気を出して話し掛けにいく大樹、それを傍らで見守る一矢
「あ、あの…」
「はい?」
彼女が振り返る、しかも相当な美人で大樹の緊張は一気に高まりグラスを持つ手が震えていた
「ははははじめまして!オラ…じゃなくて僕、来島 大樹と申します!よがったらお名前聞いてもよろしいべか…じゃなくて、ですか?」
慣れない標準語に四苦八苦する大樹
「私、小島 愛っていいます」
「あ、愛さんですか!いいお名前だべ…じゃなくて、ですね!」
「来島さんってご出身ってどこなんですか?」
「あっ、オラ山形の小さな農家の家で生まれ育って…あっしまった!またなまってしまっただ!お恥ずかしい!」
「山形ですか?へぇ~偶然!実は私も山形なんです!」
「へっ?そうなんだべか?」
「ほうですよ~、いや~上京してから地元ん人さ会ったこつなかったからうれしいべ!あらやだ、私までなまっちゃった…」
思いのほか会話の弾む二人
(なんだ、思いのほか楽しそうじゃん!これなら大丈夫そうだな…)
…時を同じくして、邪龍一族のアジト
「うーむ…」
何やら考え込んでいる様子の龍明
「おぅ龍明、何辛気くさいツラぁしてやがんだ?」
「いや…少しお父上の言っていた言葉がどうにも気がかりで…」
「あぁ、確か龍牙の野郎のことだろう?確かにあいつはオレらと違って親父がどっからともなく連れてきたんだったな、まさか人間だったなんてな」
「そう言えば、龍牙の肉体は龍々の改造が施されているんでしたねぇ、ひょっとしたら龍牙が人間だと言うことを知っていたのでは?」
「違ぇねぇ!オイ龍々!ん?アイツどこ行きやがった!?」
「ここにいないということは外にでも行ったのでしょうか?」
「まさかあの野郎!また抜け駆けしようってんじゃあねぇだろうな!ただじゃ置かねぇ!」
そう言って怒りながら壁を殴る爆龍
…場所は戻ってパーティー会場
「え~そうなんですね~!来島さんって面白い人ですね!」
「いや~、そんな風に言われっと照れるべ…ハハハ」
かなり距離を縮めつつある二人、そんな二人を温かい目で遠くから見守る一矢
(なんかスゴくいい雰囲気になってきたな…これはもしかしたらもしかするかも…)
と、次の瞬間突然龍々が邪龍兵達を引き連れてパーティー会場に乱入してきた
「ハ~イ、人間の皆さん!ご機嫌麗しゅう~!」
「邪龍一族か!」
すぐさまケータイを取り出して潤平達に連絡する一矢
「大変だ!邪龍一族が現れた!場所は龍王ホテル最上階のパーティーホール!大至急来て!」
『分かった!すぐ行くから待ってろ!』
通話を切る
「大樹君、ここは任せてパーティー客の非難を!」
「合点だべ!」
パーティー客を逃げ口へ誘導する大樹
「さぁ!愛さんも早く!」
「えぇ…!」
彼女を連れて逃げる大樹
「あーあ、みんな逃げられちゃった…まぁいいや、おいで!カマキリちゃん」
龍々に促されて出てきたのはカマキリの姿をしたモノノケ『邪龍カマキリ』
「カマカマカマ!あちしをお呼びかしら?龍々様?」
「あの人間を木っ端微塵の細切れにしちゃいなさい!」
「いいわよ~、切り刻んでやるわ~!」
「そうはさせるか!『ドラゴン・チェンジ』!!」
変身して聖龍ソードで斬りかかるレッド
「カマっ!」
両腕のカマでレッドの一撃を受け止める邪龍カマキリ
「あら~、あなた中々いい太刀筋してるじゃない!敵じゃなかったら惚れちゃうわよ!カマカマカマ!」
「うえっ、冗談じゃない!オレにはそんなマニアックな趣味はない!」
「ウフッ、照れ屋さんなんだから~!これでもくらいなさい!」
すると、両腕のカマを勢いよく振り回し衝撃波を放つ
「うわっ!」
すんでのところでガードしたがそのまま吹っ飛ばされ壁に叩きつけられた
周りに置いてあったイスやテーブルなどは真っ二つに切り裂かれていた
「くっ…なんて切れ味なんだ、まともにくらったらバラバラになりそうだ!」
「フフ~ン、カマキリちゃんのカマは私特製の超鋭いカマなの!人間のアンタがどこまで耐えられるか見ものだわねぇ~!じゃあカマキリちゃん!ここはよろしく!行くわよ邪龍兵ちゃん達!」
「ジャリュー!」
「あっ待て!」
後を追おうとする一矢、しかし邪龍カマキリに行く手を阻まれてしまう
「も~、余所見したらダメよ~ダメダメ!あなたの相手はこのあ・ち・し!ウフ~ン」
「うえっ…もう、さっさと終わらせるよ!うぉぉぉぉぉぉ!!」
一方その頃大樹は、愛を連れて逃げていた。
「ハァハァ…一先ずここまでくれば安心だべ…」
「あ、ありがとうございます…怖かった」
「オ、オラがついてるからもう安心だべ!愛さんはオラが体を張ってでも絶対に守ってみせるっぺ!」
「来島さん…頼もしいんですね」
「あっいや、その!」
「見~つ~け~た!!」
「あっ!!」
邪龍兵達を引き連れて現れた龍々
「さぁて、どう遊んであげようかな?」
「愛さん、ここはオラに任せて早く逃げるべ!」
「で、でも来島さんは!?」
「言ったはずだべ!愛さんはオラが体張って守る!絶対に守ってみせるっぺ!!うぉぉぉ!!」
タキシードのジャケットを脱ぎ捨てて邪龍兵達に生身でタックルを決める
「来島さん!」
「早く!早く逃げるべ!オラのことは構わんでよかっぺ!」
「…はい!」
「うぉぉぉ!!かかってこいだべ!!」
生身のままでものスゴい勢いで邪龍兵達を圧倒する
「うぉぉぉ!!」
「な、なんて力なの!?生身の人間ごときに倒されるなんて…!」
「これが愛の力の成せる力だべ!」
「調子に乗らないでよね!まだまだいくらでもいるんだから!」
「望むところだべ!『ドラゴン・チェンジ』!!」
「篤と見るべ、愛の力ぁ!!」
再びものスゴい勢いでバッタバッタと薙ぎ倒していく
「ふんっ!せいっ!」
勢いは止まることを知らず、ついにすべての邪龍兵を倒してしまった
「ハァハァ、どうだっぺ!これが愛の力だべ!」
「む~、悔しいっ!」
と、そこへ邪龍カマキリが突然転がり込んできた
「カマー!」
「カマキリちゃん!?」
「大樹君!無事か?」
レッドと他のみんなも合流してきた
「あぁ!愛の力は無敵なんだべ!!」
「な、なんか今日はいつも以上に張り切ってやがんな…」
「ホンマや…一体何があったんや?」
「いつもの大樹君じゃな~い…」
「みんな!最後は一斉にキメるべ!!」
「お、おう!」
「必殺!『ドラゴン・フィニッシュ』!!」
五人一斉にキメ技を放つ
「げっ!?ヤバっ!」
当たる直前に龍々だけ避ける
「えっ!?あっちょっと!龍々様!?ぎゃぁぁぁぁ!!」
邪龍カマキリにだけ当たって爆発する
「よっしゃやったべ!」
「キィィィ!もう、こうなったら…えいっ!」
と、謎のスイッチを押す龍々
すると体内に仕込んであった妖気カプセルが割れ、巨大化して復活した。
「カマー!今度こそ切り刻んでやるわよ~!」
「みんな行くぞ!」
「おう!」
「『聖龍召喚』!!」
五人の龍の気が具現化し、五色の龍達が現れた
「行くぞ!『聖龍合体』!!」
聖なる五色の龍達が龍賢者と心と体を一つにし、その身を合わせる時、大いなる龍の巨人が誕生する
「完成!『ダイリュウジン』!!」
「切り刻んでやるわよ~!」
両腕のカマを振り上げて襲いかかる邪龍カマキリ
「なんのこれしき!くらうべ!」
すかさずカマをかわし、懐に入り込みローキックをお見舞いする
「カマー!」
そのまま仰向けになって倒れる邪龍カマキリ
「まだだべ!ふんっ!」
すると邪龍カマキリの足を抱え込みそのままジャイアントスイングでブンブン振り回した
「飛んでけー!!」
そして力いっぱいぶん投げた
「カマっ!?」
「これでトドメだ!」
「必殺!『ドラゴネス・インパクトォ』!!」
「カマー!!あぁ…オカマだけに、最後の一撃…タマんなかったわ…カマー!!」
断末魔とともに爆発する
…翌日
「…にしても昨日の大樹はマジでスゴかったなぁ!迫力ありすぎだぜ」
「まぁこれも愛の力が成せる技って奴やろか?」
「ねぇ、ところで今日大樹君来ないの?」
「あぁ、大樹君なら昨日知り合った彼女とデートするって言ってたけど?」
「おっ!なんやなんや?とうとうやったんや大樹の奴!」
「ヒュー、すみに置けねぇなぁ!帰ってきたらどうなったか根掘り葉掘り聞いてやろうぜ!」
「いいねぇ~、面白そう!」
「ちょ、ちょっとみんな落ち着いて!」
と、そんなカンジで話していると大樹が来た
「おっと、噂をすればなんとやらだな!」
「で?デートどうだったの?」
晴美にそう聞かれた大樹は浮かない表情を浮かべたまま何も答えなかった
「なんや?もしかしてフラれたんか?」
「ちょ、正子さん!?少しは言い方ってもんがあるでしょうよ!」
「アンタは黙っとき!なぁ大樹!なんかあったなら言うてみぃ」
「…実は、彼女の父ちゃんが借金の保証人になった相手がとんずらこいて借金取りから200万円払えって脅されて、そんでそのショックで母ちゃんは病気で入院してしまって治療費に300万円必要だって言われたんだども…オラそんな大金持ってねぇし、けど何とかして彼女の力になってやりてぇんだけんど…どうすりゃいいべ?」
大樹の話を聞いてポカンとする一同
「ん?どうしたんだべ?みんな黙りこくって?」
「…なぁ大樹、その女さ…絶対結婚詐欺師だろ?」
「えぇ!?」
「うん、話聞いてる限り結婚詐欺師としか思えないよ…」
「私も…そう思う…」
「これは完全なる結婚詐欺やな、刑事のウチが言うんやから間違いない」
「そ、そんな…愛さんが…愛さんが…詐欺師だなんて…うぉぉぉん!!」
突然大声を挙げて泣き叫ぶ大樹
「心配せんでえぇて!今回たまたま運が悪かっただけやろ?またえぇ人の一人や二人出逢えるやろ、それよりその詐欺師の女早よぉ取っ捕まえなアカンな…よし、ウチに任しとき!」
と、詐欺師の女を探しに出る正子
「ひっぐ、東京はおっがねぇよぉ…お母ちゃ~ん!うぉぉぉん!!」
…一方その頃辰美は、雨が降りしきる中傘を差しながら龍水晶を使って何かを探している風な感じだった
龍水晶は何かに反応するように鈍い光を帯びていた。
「やっぱりこの反応は…間違いない!」
ため息をついて胸のペンダントをぎゅっと握りしめる
(一体どこにいるの?…お兄ちゃん)
続く
『次回、第八話 ついに決着!?ドラゴンレッドVS邪龍騎士 龍牙!!』
お楽しみに!




