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冷たい海

作者: 市松ユウ



嬉しい。


また貴方と一緒にこうやって居ることが出来て、

私は天にも昇れそうな気分よ。


真夜中に急に電話してきて「ドライブへ行こう。迎えに行く。」なんて言うものだから、

慌ててお気に入りの黒いワンピースに着替えたわ。

何日も貴方から連絡が無かったからわたしはとても幸せだった。


インターホンが鳴り響き、ドアを開けた瞬間、

貴方はニッコリ微笑んで私の首に手をかけて

「愛してるよ。」と優しくささやいた。




貴方の黒塗りのスポーツカーで海辺へドライブ。

二人の思い出の海だった。


ねぇ覚えてる?ここで貴方は私のこと「好きだ。」って言ってくれた。

なのに、なんでこんなことになっちゃったのかな。

貴方がこうして私を再び誘ってくれた今、そんなことはどうでもいいよね?


この車の助手席は私のもの。

なのに私は真っ暗なトランクの中。

それでも、貴方が好きよ。


「さぁ、着いたよ。」


そう言って貴方はトランクを開けて何十にもビニールで包まれた私を担いだ。

懐かしい潮の香り。

人気の無い真夜中の真っ暗な海。

波の誘うような音だけが聞こえる。

貴方がいなくなりそうでちょっとだけ怖かった。


星ひとつ無い真っ暗な空。

月明かりが貴方のその愛しいお顔を照らした。


笑っている。


そんな貴方をみて私も何故か嬉しくなった。


貴方の腕の感覚が消えた途端、私は海の中に落下した。


冷たく、薄暗い。

闇にも似た視界。

静かでそのまま溶けてしまいそうだった。



嬉しい。



私は天にも昇れそうな気分よ。



今も冷たい海の底で

貴方だけを愛してるわ。




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