どうも神様に呼ばれたようです
初投稿となります本虫毒です。
宜しくお願い致します。
大型トラックのクラクションが、俺のすぐ横で聞こえる。
なぜか世界がゆっくり見える。
助けた少女が涙目で俺を見ていた。
こんな状況で俺が最後に思ったことは
(ああ‥パソコンの履歴消さないと‥‥)
という実に下らないことだった。
そしてこれを最後に俺の意識は途絶えた。
◆◆◆◆◆
時は少し遡る。
それは俺の平穏な休日に突然起こった。
思えば今日はかなりツイていなかった。
朝から買い物に行こうとすると、車がエンストし、
仕方ないと自転車で行くと、途中でパンクし、
諦めずに歩いて行けば、買いたい物は既に売り切れていた。
まさしく踏んだり蹴ったりだ。
しかも帰り道でケータイまで無くした‥‥
「取り敢えず帰るか‥‥」
俺は、疲れた足取りで、家に向かっていた。
もう少しで家に付く、早く帰ってメシでも食おう、
そう思った時だった。
一人の少女が横断歩道を渡ろうとしている。
そこに大型トラックが突っ込んで来る!
咄嗟に俺は走り出した。
「友里!危ない!!」
母親らしき女性の叫び声が聞こえてくる。
少女の所にたどり着き、少女をトラックにひかれない位置に投げ飛ばす。
(フゥ、なんとかなった‥‥)
と、一息付いたのがマズかったのだろう。
トラックは、俺のすぐ横まで来ていた。
しかも、スピードはかなり早い。
こりゃあ、もうダメだな‥‥
そして、場面は冒頭に戻る。
こうして、俺こと三山 太郎はその26年の生涯を終えた‥‥
はずだった
◆◆◆◆◆ 三山→アーネル
その頃
ある神が地球を覗いていた。
神の名前はアーネル、ある目的のため魂を1000年以上探している。
地球に来たのは、42年前で、そのまま今に至るまでずっと探し続けている。
「ハァ、全ッ然見つからない‥‥、そろそろ引き上げ時かな?」
と、弱気なことを口にし出したその時、
「ん?‥‥いた!!!やったぞ!こいつだ!」
と、大声で叫び、
「転生する前に早いとここっちに呼んで‥‥っと。」
すぐに必要な作業に取り掛かり始めた。
「コイツの人生データをまとめて‥魂の固定作業と、肉体の再構築‥よし、これでOK、全作業終了っと。」
アーネルは満足そうな表情で作業を終わらせ、
「後はコイツの目が覚めるのを待つだけだ、‥‥少し寝るか。」
と、呟き、まるで瞬間移動をしたかの様に、姿を消した。
◆◆◆◆◆ アーネル→三山
気が付くと、俺は見たことも無い場所にいた。
しかも、着ていたはずの服が無くなっていた。
つまり、俺は素っ裸だった‥‥
「‥‥え!?どういうわけ?」
俺はただひたすらわけが分からなかった。
(とりあえず落ち付け‥‥、俺はあの時確かに死んだはず。)
と、現状整理をし出したその時、
「ようやく目が覚めたか、思ったより早かったな。」
1人の男が、いきなり目の前に現れた。
「あ‥服を固定するのを忘れていたな‥」
その男は、少し顔をそむけながら言った。
急速に羞恥心が湧いてくる。
「服が無くなっていたのはオマエのせいか!!早く返せ!!」
「あ‥ああ、これで良いだろう。」
その男が、手に持っている杖を一振り。
すると、俺の目の前に着ていたはずの服が現れた。
‥‥これは一体どういうことだ?
そう思いながら服を着て、とりあえず浮かんできた疑問を目の前のヤツにぶつける。
「ここはどこだ?」と、ヤツに聞くと、
「その前にもっと気になることがあるだろう?」
と、ヤツは返してきた。それはもっともだが‥‥
「とりあえず、聞きたいことを言ってみな、答えられる範囲なら答えてやるよ。」
「じゃあさ、俺って死んだよな、あの時。」
「ああ、間違い無く死んだぞ、死体見てみるか?」
なんだか嬉しそうな表情で、そう言ってくる。
「いや、死体はいい‥‥でも、俺今ここにいるよな?」
「そりゃあ‥オレが呼んだからな。」
「呼んだ?、どうやって?」
「神術で。」
「‥‥神術って何だ?」
「神のみが使える魔術のことだ。」
説明になっていない‥‥
取り敢えず、これは後にして
「‥‥ここはどこだ?」
「オレが作った空間だ、いいセンスしてるだろ。」
‥‥見渡す限り目がチカチカしてくる虹色で、さらに、様々な物があちこちに浮かんでいる空間を、センスいいと言えるだろうか?
だが、俺はあえてその事を口にせず、別のことを聞く。
「なぜ、俺を呼んだ?」
「オマエの魂を、オレの体に転生させようかと考えているんだが、それの最終確認をしようと思って呼んだんだ。」
‥‥また説明になっていない。
っていうか、よく分からないワードが出てきたな。
「転生って、あの転生だよな、最近の小説によく出てくる異世界転生の、転生だよな。」
「ああ、ただ、異世界じゃなくて、オレの体に転生するんだがな」
コイツの体に転生か‥‥、そういえば、俺ってコイツのことを何も知らないな。
「今さらなんだか、オマエって誰なんだ?」
「そういえば、オレのことを説明してなかったな。」
そう言うと、ヤツはようやく自分のことを説明しだした。
「オレはアーネル、様々な世界で創造神をしている。」
‥‥は?、創造神?
いきなりの爆弾発言に、頭がクラクラしてくる。
「創造神って、何かを創る神の事だよな?」
「それ以外に何がある?」
無いよなあ‥‥
「ちなみに、何を創っていたので?‥‥」
「世界だな。」
マジか‥‥
「‥‥おいくつほど?」
「そうだな‥、オレが覚えている数だと‥‥、352641だな。」
「‥‥‥‥へ?」
「だーかーら、三十五万二千六百四十一個の世界を創ったって事、ちなみに地球もオレの創った世界の一つだ。」
‥‥凄い、凄すぎる。
まさか地球もコイツの作品の一つだったとは‥‥
っていうか、もう〝コイツ〟とは呼べないな。
創造神様だな、‥‥こんなヤツなのに、
「あ?何か言ったか?」
「イイエ、ベツニー」
なんて勘の良いヤツだ‥‥
「んで、他に聞きたい事は?」
そういえばもう1つあったな。
「俺を転生させて、何をさせたいんだ?」
「特に無いぞ。」
‥‥エ?無いの?
「神だからな、自由にして良いと思うぞ。」
ホントに?ホントに??
「ああ、オレも仕事らしい仕事はしてなかったしなぁ。」
スゲェ‥‥
なんという天国!早く転生して、その天国に行きたい!!
「‥‥良いのか?そんな簡単に決めてしまって。」
良いんです!毎日が休みの素晴らしい暮らしが出来るなら!!
「良いんだな?本当に。」
モチロン!!
「それじゃあ、始めるぞ。」
そう言うと、アーネルは、転生するための作業を始めた。
ヨシッ!これで毎日ゴロゴロできるぞー!!
「あ、言い忘れていたけど、仕事はなくても、やる事は沢山有るからな。」
‥‥え、ナニソレ?
その言葉を最後に、俺は意識を失った。