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間章:世界の始まりの日1(とある騎士団長の回顧録)

遅くなりましたが脳筋による説明回です。

本編の続きでは御座いません。

シリアス...では御座いません。

変態しかいません。注意。(・ω<)テヘペロ

 ただ寝て起きて飯を食い体を動かす毎日。

世界は単調で面白味に欠けると思ってしまうのは、“つがい”が居ないせいなのだろうか。

例えば今ここに“つがい”がいれば、この俺の空虚な世界も変わっていたのだろうか。


 だがその答えを握る鍵“つがい”は未だ見つかっていない。







【とある騎士団長の回顧録】





 体内の魔力量によって獣の本能が左右されるこの世界。

多ければ多いほど獣人は獣の本能(食欲・性欲・戦闘欲、そして“つがい”への依存度など)に引きずられる傾向にある。

 兄上達より魔力の量は劣るが一般市民よりは遥かに多い魔力を持って生まれた俺も成人を迎えると本能はいつか出会う“つがい”を守る為、愛される為に強くあるべきだと働きかけ、より強さを求める為に選んだのが騎士の道だった。

兄上達の様に魔術を操るより体を動かす方が性に合っていたのが一番の理由だったが、それでも実力で団長へと登り詰めた。


だが、件の“つがい”は何処にいるのか未だに見つからない。

近くにいなければ見つけ出すことは出来ないし、一度“つがい”の魔力と匂いを認識しなければ“つがい”の位置もおおよその把握も出来ない。

だからこそ“つがい”の方からも自分の存在を認識してもらい易い様に己の名と力を世界に誇示しなければ。

 手っ取り早いのは戦争で英雄となる事だが、戦争を起こすことはできない。

まだ見ぬ“つがい”がもしそれに巻き込まれ怪我でもしては困る。

 ならば何処にでも蔓延る魔物を狩り続ければ、腕も磨けまだ見ぬ“つがい”への危険度も減る。一石二鳥では無かろうか。


 …そうして魔物討伐という名目で世界を駆け、気づけば200年以上魔物を狩り続けていたが未だ自分の“つがい”と出会うことはなかった。





 “つがい”を求めるのは獣の本能。自分の意思というより体に組み込まれた一部のようなもので切り離すことは誰であっても出来ない。

得ていない自分には“つがい”がどうして必要なのかわからない。

ただ漠然とした感覚で欲している。

それは喉の渇きで水を求めるような感覚と似ているだろうか。

 無くても生活に困ることはない。ただ空虚感があるだけで。

自分の中の魔力が時々荒れ狂い、無性に苛立つこともあるが一時乗り切れば困りもしない。

 だから“つがい”を得ることを半ば諦めていたのは事実だ。

現に“つがい”を得られずに亡くなる者も多くいる。

その中の一人に自分もならないとは言えなかった。






 “つがい”を得るというのはどういう感覚なのか。

未だ漠然と本能の示すままに求める俺にはわからない感覚で、“つがい”を得て蜜月を終えた部下に出会った時の事を尋ねてみたことがあった。


《時が動き出す…というのでしょうか。初めて逢った時、嗚呼…自分の世界が漸く始まるのだと思ったのです。》


その時惚気けながら答えた部下の言葉がそれだった。

 “つがい”を半ば諦めていた俺だったが、それでも“つがい”を得たいという感覚は消えるわけでもない。

部下の言う様に世界が変わる瞬間を自分も知りたいという気持ちは心の奥底で燻っていた。




 だがついにその感覚が、自分の中でカチリと音を立てて当てはまる時が、ようやくやって来た。

 部下の男の言った《世界が始まる》その瞬間が。










 その日は久しぶりに兄弟4人が揃って食事の席についた。

城を放って魔物討伐に出ずっぱりの俺に食事より仕事の兄、遊び呆けて帰らない兄に、国のトップである兄。

4人揃っての食事など100年近くは無く、本当に珍しすぎる日だった。

 そんな時に、それは起こったのだ。


 テーブルの上に突如現れた空間の歪。

そこから巨大な魔力のうねりを感じ溢れ出す魔力に包まれた時、今まで感じたことのない感覚が全身をかけ巡った。


 “何かが始まるそんな予感“ に、全身が痺れる様に高揚する。


 やがて歪から現れた魔力の塊はテーブルの上で凝縮し人の形を成していた。

俺は息をするのも瞬きするのも忘れてそれに見入っていると空間の歪みは閉じ、テーブルの上の魔力の塊は横たわる漆黒の艶やかな長い髪をもつ雌に変わっていた。

 暫く見つめていると目が覚めたのか緩やかな動作でその雌が顔をあげた。

髪と同じ漆黒の瞳でこちらをみつめられた瞬間全身の血が滾った。

雌を見ただけで下半身に熱が溜める感覚も初めてだった。


 本能は間違いなく目の前の雌を求めていた。


 見た目的には年端もいかない子供に見えるが、溢れ出る匂い(魔力)は雄を刺激する成人の雌のもの。

でなければ“つがい”だとしてもこうも雄の本能を刺激する筈がない。

だからきっと小型の種族なのだろう。

俺は種族も体型も気にしないが体格差を考えると背徳的ではある。

しかしこれが愛しい俺の“つがい”なのだから全力で愛さねばならない。

身も心も蕩けさせ、共に天へ昇りつめるように。痛みも与えぬよう丁寧に解してやらなければ。


 今すぐにでもベットに駆け込み甘い甘い蜜月へ突入したいという気持ちを込めて雌を熱く見つめる。

“つがい”からの了承の返事を待ったが、“つがい”はひどく驚き慌てふためいて怯えていた。

此方の事など目に入っていないかの様に視線は俺だけに留まらずさ迷い続けていた。

 その異変が何故なのか、“つがい”を落ち着かせ話を聞くうちに明らかになった。







 愛しき“つがい”の名は【エリ】。

驚くべき事にエリは異世界から来たらしい。

何故なら“つがい”の出現に興奮しすぎて飛び出していた耳と尻尾はエリには無いという。

そしてこちらの“つがい”の常識が一切ない事に愕然とした。


 さらに愕然とした事がもう一つ。

一夫一妻のつがい制度の揺るぎないこの国で“つがい”が被るなんてことは有り得ないというのに、兄上達もエリが自分だけの“つがい”だと宣言した。

 …確かにエリの腕には俺達の“つがい”である“証“があり、その魔力も俺達4人を補充してなお有り余るだろう魔力もある。

異世界から来たエリにはこの世界の常識を当てはめることは出来ないというのもあり、この状況も有り得ない事では無いのかもしれない。

けれどそれでもただ自分だけの唯一を、例え血を分けた兄弟だと言う理由で譲るという選択肢はない。

 だがそんな俺達の意見より“つがい”の意志が重要だ。

出生率が低いこの国で子宝を与えてくれる“つがい”は何よりも大事にしなければならないものだと、一族に引き継がれる大いなる意思(遺伝子)には逆らえない。

 皆が自分を選んで欲しいと懇願したが、エリは俺達の中から“つがい”を選べないと言った。

だから俺達は自分達で間引いて選択肢を減らそうとしたのだが、それすらもダメだときつく言い渡された。

 自分以外の誰かを選ばれるよりは誰も特別視されない今の状態の方がまだいい。

けれど誰もがまだ自分だけを見て欲しいという思いを捨ててはいない。

 平等以上に少しでも愛情を注がれたい、視線を独占したいと俺達は今日もエリの寵を競い合う。









 だがエリはまだ、俺達の愛に応えてはくれない。
















・・・(数ヶ月後)・・・





「ダリウスッ!貴様十分堪能したただろうっ!そろそろ余と交代しろっ!」

「何をいうのです。次は私の番ですよ。」

「そうだよ。今日はアル兄は一番最後だからね。【じゃんけん】で決めただろ?」


 椅子を抱き締めクッション部に頬をすり寄せながらエリの残り香(魔力)とあの小さな尻がここに乗っていただろうその尻の感触を想像(妄想)しながら感触を楽しむ。

兄上にぐいぐい肩を捕まれ椅子から引き離されそうだが、力ならば負ける気はしない。

4人で決めた時間内、【じゃんけん】の勝者として思う存分椅子のクッション部からエリの存在を感じる(妄想するともいう)。

 


 何故こんな事をしているかと問われれば、答えるのは一つだ。

未だエリと蜜月を過ごせない俺達の飢えはまだ肉体的に解消出来ていない。

 だから感じ(妄想し)たいのだ。


 エリは自分の魔力を認知出来ていないせいで、その制御も出来ず常に体から魔力が溢れている。

雌はオスを誘う時、魔力を体から溢れさせそれを合図とするのだが、常に垂れ流されているエリの魔力でこちらの体は常に臨戦態勢だ。

 本来は交わり精を放ち、その精の代わりに雌の魔力を得て魔力と精神を安定化させる。

唾液の交わりでも多少魔力は摂取出来るが、交わりが一番確実で励めば子も出来る故に一石二鳥なのだが、巨大すぎるエリの魔力は傍に居るだけでもこちらに浸透し、残り香(そもそも魔力は留まったりはしないのだが)だけでも体に浸透をしてくる。

交わりによる物よりは少ないのだろうが、それでもこちらの魔力と精神を安定するには事足りる。

が、臨戦態勢の一物は発射台にセットすらされない。

 つまり内面的な精神や魔力をは安定しても肉体的興奮を引き起こしっ放しなのである。

その苦行を強い俺達を翻弄する小悪魔の様なエリを何とか発情させようとアレコレするも結果は惨敗で、仕方が無くエリの残り香とぬくもりの残るそれらのもので肉体的欲求を妄想という糧で満たそうとしているのだがやはり本物に勝るものはない。

 早くエリの柔肌に触れたい。そして偶然を装い撫で回したい。

待つだけでは餌は来ないのだ。支給されない餌は奪わなければならない。

“つがい”に拒絶されるぎりぎりのラインで。



「ああ…エリ…。」


 あのぷっくりとした唇に貪るようなキスをする妄想をしていると、エリの香る魔力が濃くなった気がして、椅子のクッション部から顔を上げるとその隙に3人がそちらに群がった。


「次は私ですよっ!」

「少しぐら分けてくれてもっ!俺も我慢できないしっ!」

「余もエリの残り香と温もりに包まれたいのだっ!」


 必死の形相の兄達に押されるように横に退いた時、エリに触れたいと思っていたせいかエリの幻を見た。

何時もの様に怒っているようだったが、やはり食べてしまいたくなるほど可愛い。



「…そこで何してるの、変態ブラザーズ。」

「「…あ。」」


 幻ではなかった。本物の愛しいエリだった。

すぐに皆エリの座っていた椅子を手放しエリに向き直る。勿論正座も忘れない。(エリが怒っていので)


「…何もしていない。椅子を磨いていただけだ。」

「…取り合っていたように思ったけど?」

「全員で磨き上げていたところです。」

「…それにしては皆手ぶらね?」

「高級な椅子だからね。魔法で綺麗にしたんだよ。」

「…ふーん。で、それは誰が座ってた椅子なの?

 嘘ついたら一生口聞かないからね。」

「…え、…エリの使用済み椅子…かもしれん。」

「かもじゃなくてそうなんでしょ!

 …変態だ変態だとは思ってたけど、まさか使用済みの椅子までとは…。

 他に私の使用済みの物品で変な事してないでしょうねっ!?」


 腰に手を当てこちらを睨んでくるエリ。……可愛い。

怒っていても可愛いのはエリだけだ。

兄上達も多分そう思っているのだろう。横を見なくても雰囲気で分かる。


「していない。椅子で我慢していた所だ。」

「エリの魔力の残り香を摂取していただけですよ。」

「一人××××に使用してたわけじゃないしね。」

「エリ不足を補っていただけだ。」

「…それでも今後私の使用済み品には近寄らない、触らない、擦り寄らないっ!

 いいわねっ!?」


 その三原則を胸に刻んでとっとと自分の仕事場へ行けと送り出された俺達。

エリと離れるのは寂しいが、“つがい”のために稼ぐのも夫たる俺の役目である。

 そんな“つがい”の言動や行動に振り回され忙しい毎日だが他と比べらられないぐらい充実している。

我慢を強いられる苦行の毎日でさえ未来への希望(妄想)で胸が踊る程だ。

それに最近はやたらとエリに変態と罵られてしまっているが、最近はそれすらも心地よい。

エリに与えられる言葉も物も全ては甘美な褒美なのだから余すところなく受け止めたいと思う。

その思いはきっと兄上達と同じだろう。


 “つがい”と出会えなかった300年を思うと、俺の薔薇色に輝く世界(毎日)はまだ始まったばかりだ。

だがこれからもきっと毎日がエリにより素晴らしい世界へと変わっていくのだろう。

そんな幸せな毎日を噛み締めていきたいと思う。





《end》







後もう一つ間章を挟むので、もうちょっとだけ回顧録と言う名の説明回が続くんじゃ!(本編はその後です。)

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