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3.わたしと異世界のつがい事情

※犯罪、ダメ!絶対!

※全話基本変態注意で。

 部屋に戻ると侍女のメアリーが私の惨状に目を剥いて慌ててお風呂場に連れていってくれた。

私専用のバスタブには赤い湯が満たされていて、この水はあっちの世界での温泉の湯の様なお肌に良い効能があり貴婦人達の常用品らしい。

でも今の姿の私の肌には子供らしい張りとぷにぷにさがあるので特に美容に気遣う事もないんだけど、リラックスできる香り付きなので変態に振り回された後はこの湯に浸かってのんびりする。

 けれど私が王様+αの“つがい”だと思われているせいでこのお風呂タイム中も必ず侍女が一人は付く。

どうしてもお世話をされるのなら気の許せる人が良いと、私はいつもそれをメアリーに頼む。

 何処かのお嬢様みたいにお上品で優しくて美人で、向こうの世界の友達に少し似ていたメアリーとはすぐに打ち解けて私のお世話+話し相手になってもらっている。

 まぁ…その大半が変態に対するものだけど。



「あー…もうやだやだっ。

 2次元のロリコンは可愛いもんだけど、現実に幼女に手を出す大人ってないわー…。

 幼女をリアルにprpr(ペロペロ)とか…トップがあれじゃこの国の行く末が不安だわ…。」



今日も今日とて愚痴る私に嫌な顔もせず笑顔で対応してくれるメアリーは本当に癒しの天使である。



「大丈夫ですよ、エリ様。

 アルベルト陛下や宰相のレイシス様、それに騎士団長のダリウス様に魔術師長のベルナード様もエリ様が来てからはより一層職務に励んでおられます。

 “つがい”を養う甲斐性がなくては雄として嫌われてしまいますからね。

 この国の将来は安泰ですよ。」



 え、それって私が馬(奴等)の前に吊るされた人参(餌)ってことですか?

国の為には大人しく変態の餌食になれと?

そう言うことですか、メアリーさんっ!?

 今はその眩しい笑顔も悪魔の手下のしたり顔に見えますよ!?



「でもでもメアリーだって変態の所行を毎日目撃するでしょ?

 国を背負うお偉方が幼女を襲ってる様にしか見えない図を見て失望とかしないの?」

「エリ様は確かにまだ未熟な少女の様なお姿ですが、“つがい”の紋様はつがう時期が来た事を示すものでもあり雄からアプローチがあって当然なのです。」



 何とかメアリーをこちら側(変態撲滅委員会)に引き入れようと勧誘するもアウェーの地の洗礼は厳しく、返り討ちにあった気分…。

異文化育ちの私がこの地で全面的な味方を手に入れるのは無理なんだろうな…。

なにせここでは“つがい”というものがチートな免罪符になってるんだから。

 運命の相手とかには憧れるけど、“つがい”だけを盲目的に愛するのはどうなんだろう。

“つがい”と出会えなかった者同士が恋人のような関係になる事もあるらしいけれど、それは夫婦に発展する事はなく、“つがい”に対する愛情と違い好ましいという好意の上で成り立つ利害関係だけらしいし。

沢山の人がいる分沢山の出会いといろんな選択肢があって良いと私は思うんだけど、つがい盲目主義のこの世界の文化にはまだ馴染めそうもない。

いっそ記憶喪失だったら色々悩まずにすんで良かったのかもしれないけど、その場合早々に1ダースぐらいの子供に囲まれて生活してる未来しか浮かばないわ…。



「それにエリ様と出会われて皆様人間らしくなったと評判なのですよ?」

「え…?人間らしく?変態らしくじゃなくて?」

「はい。騎士団長のダリウス様は死に場所を求めるかのように城にいるより魔物討伐に出ている方が多く戦狂いの狂戦士(バサーカー)と言われておりましたし、レイシス様も他人や物に興味もなく淡々と仕事だけをこなし役立たない物や人はバッサリ切り捨てる氷の宰相と呼ばれておりました。

 魔術師長のベルナード様は王に次ぐ魔力をお持ちですが仕事より女性達と遊び呆ける毎日でしたし、アルベルト陛下も“つがい”という半身がいないせいか満たされない毎日に手をつけられないくらい荒れておられましたしね。」



 それは初めて聞く話だったのでメアリーの言葉にはただただ驚いた。

今の彼等の姿からは想像出来ないけど(エロ魔術師は安定だった)、それが本当だとしたら確かに今の彼等の方が人間味があると言えるかもしれない。


 欲望に忠実だという点で。


 だが例え幼女相手にprpr(ペロペロ)したいと思っていても、妄想だけに留めず本気で行動に移しちゃったらもう犯罪者。あっちの世界じゃ確実に逮捕されてるレベルである。

“つがい”という免罪符のあるこの世界でも、被害者的立場の私には到底寛大な心は持てはしない。




 全てをややこしくしてしまっている原因である今の私の姿(幼女っぽいの)は、トリップした際にあちらとこちらの寿命の影響を受けてしまったからじゃないかと思っている。

 この世界の人の寿命は長く、平均してみんな300~500才位生きる。

体内魔力の大きさが寿命に比例するらしく、王族レベルになると600~1000年位は生きるらしい。

一概に言えないのは、“つがい”を得てしまった者達は片方の“つがい”を失うと悲しみと絶望のあまり時を隔てず亡くなるケースも良くあるそうで寿命もつがい次第になるそうだ。

ただあちらの世界でも夫婦のどちらかが亡くなって残されたもう一人も後を追うように続けざまに亡くなってしまうという話も聞いたことがあったのでそれほど特殊な事でもないのかもしれない。

 ...少し話が逸れてしまってたけどあちらの世界で25才だった私は、こちらの世界にトリップしてしまった際にこちらの世界での25才の器になってしまったようだ。

 こちらで25才というとまだ子供。50~60才あたりで成人を迎える。

けれどあちらで成人していた事がこちらでも継承され、見た目は子供・頭脳は大人というコ○ン君状態な異例の状態に陥っているのが私の現状である。

(余談だがメアリーは80才過ぎで、王様達に至ってはもう300才は越えているらしい。)



「ここでは魔力と精神の結び付きが強いのです。

 魔力のない世界から来られたエリ様には難しい話かもしれませんが、体内を巡る魔力を安定させるにはそれなりの力が要ります。

 雌は常に安定した魔力の流れを持つため、日常に支障はありませんが攻撃性を持つ雄の魔力はそうではありません。

 魔力が強ければ強いほど精神や体に影響が強く、“つがい”という安定剤を求める傾向も強いのです。」

「…雄にとって“つがい”は精神安定剤ってわけなの?」

「それもあります。ですが基本的に魔力は雌の方が強いのです。

 雄の中で荒れ狂う魔力も同じ紋様を持つ雌は巡る魔力の形も同じなのでいとも容易く正常な流れに変え雄に返すことが出来ます。

 それは傍にいる事でも可能ですが、交わることでより雄の魔力と精神は安定し磨きがかかるのです。」

「…だから奴等は異様に引っ付いてくるのか…。」



 ため息をついて口元まで湯に沈む。

ブクブクと息を吐きながら私は自分の右手を湯から出し、甲に刻まれた紋様に目を向けた。


 鮮やかな青と緑のグラデーションで色付いた繊細な形の私の紋様。

円と直線で作られたあちらの世界でよくある幾何学模様。

彼等の紋様も同じ様に円と直線で作られてはいるが、私の紋様とは模様が違う。


 でも、重なってしまう。


単純なその構造だけにぴったりと。

私の紋様を簡素化したような彼等の紋様は私の形とぴったり同じではないが、ぴったりと重なりあうことは出来る。

何故彼等4人が…というのは彼等が血の繋がった兄弟で魔力の流れも似ている為に紋様も必然的に似てくる。

 ただ予想外だったのが、それら全てに重なるような細やかな紋様を持つ私が現れてしまった事。

そしてそれを彼等は同時に“つがい”に認めてしまった事だった。



「…ブクブクブク……(詐欺だ…)…。」



 呟いた言葉は泡となって消えた。


 重なりあう紋様は重なる部分だけを見れば【同じ】とも言える。

けれど厳密にいうとそれは違う紋様なのだから【同じ】だと言われても騙されている気になる。

 きっと世界の何処かには彼等と同じ紋様を持つ者がいるはずだと訴えたこともあった。

 しかし彼等の返事は決まっている。



 【300年探しても居ないなら居ない。エリこそが“つがい”だ。】



 そこで諦めるなよっ!と叫びたくなった私の気持ちも理解していただけるだろうか。

 そして“つがい”が1対1のペアだということを言及すれば、武器を持ち出し兄弟同士殺しあいを始める始末…。

殺しあい、ダメ!絶対!という私の言葉を聞いてそれだけはしなくなったけど、“つがい”への独占欲の強い彼等が次にとったのが猛アプローチ。

いかに寵を得ようとかと贈り物から始まり食事の支給までと行為は増え続ける。



「エリ様、雄を操るのはいつでも雌にございます。

 飴と鞭さえ上手に与えれば何も恐れることはないのですよ。」



 うふふと笑う私の天使はとても可愛らしい笑顔でとても黒いことをおっしゃいました。

流石経験者は語る…という事でしょうか。

この可愛らしい天使ことメアリーはこれでもう人妻で可愛い少年のママですから。




 その後暫く湯船に浸かりながら今後の作戦と対策を考えていたのだけれど、長湯しすぎてのぼせてしまった私はメアリーに抱えられるようにして部屋のベットへ運ばれた。


 

 ベットに寝転んでから何かを忘れている様な引っかかりを覚えたけど、のぼせた頭じゃ何も考えられなかった。

 まぁ明日の朝にでも思い出せばいいよね...。

それほど大事なことじゃなかったと思うし、メアリーもいるから大丈夫だろう…。


 頭の片隅で引っかかってた何かを私はあっさり放棄して、そのまま目を閉じ毛布の中で丸まって眠りついた。








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