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夢の中2
ある日のことでございました。
和室で寝転んでいた男は、転寝を始めました。ふと気づけば、男のそばには女が座っていました。
あの時の女と全く同じ女が。
悲しくも怒っているようにも取れる表情をした女は、長い黒髪をたらしたまま男の顔をじっと見つめていました。男はその女の顔を見ながら、話しかけようとしました。しかし、男には口がありませんでした。
「これは、夢である。」
そうわかっているとしても、男にとっては女が何を伝えたいのかを知りたくてたまりませんでした。
男には女が何であるか分かっていました。同時に、男は女が何であるのか分かっていませんでした。伝えたいことがあるのに口のない男は、ただ女へ視線を送ることしかできないのでした。
すると、女はこう言いました。
「橋は壊して。」
そう、女は言い残してその口を閉じました。
西日の差す、9月のある日のことでした。




