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悪魔神姫  作者: 法相
覚醒
6/7

六幕=帰り道=

次回は2月11日午前9時更新です。

 私らはコインロッカーに向かい、制服を入れた通学鞄を押し込んで準備運動をする。

 互いに背中を預けて背中に乗せてから溜まっている空気を抜く。いや本当に空気なのかは知らないけど、前に誰かが言っていたような気がするのでそう思っている。

 ぽきぽきと背中から音がし、背中が軽くなっていく。

 それに愛華の体自体も柔らかいから気持ちがいい。そんで次は私が愛華の背中を自分の背中に当てて同じように持ち上げるが、全然音がしないあたり本当に体が柔らかい。

 羨ましい限りだ。本人も気持ちよさそうに「ほにゃあ」とか言ってるから痛くないのだろう。というか体を完全に私に預けてるから体重が全部私にかかっている。それだけ信頼も信用もしてくれているのだろう。


「みやびちゃんの背中やわっこい……気持ちいい……」


 私と同じ感想かい。

 それから私らは柔軟体操を終えて、一時間ほどのジョギングをしてから雨が降りそうになってきたので早めに切り上げる。

 いつもであれば別場所に移動して軽い組手をするが、雨だとそうはいかない。足元が滑って危険だし、濡れると風邪を引くし。


「……しかしあれね」

「え、なにが?」

「いやあんまり人のいない公園で組手とかなかなか見ないわよね。しかも私ら女子高生だし受験生だし」


 思わず苦笑する。周りは受験勉強や就職活動をしている中で多分私はトレーニングに重きを置いている。

 決して勉強に手を抜いているわけではないが、いささか自分が異質であると言うのは理解している。


「やることはやってるから文句言われないよ。雅ちゃんはちゃんと勉強も頑張ってるし」

「愛華のおかげよ。わかりやすいからアホの子の私でもなんとかなってるわ。ありがとう」


 ぺこり、と頭をさげる。愛華が勉強を教えてくれるおかげで成績はそこそこにいい位置をキープできている。

 愛華は頭の出来が良く、学内テストでの順位は常に一位。両親も研究者らしいので頭の良さも努力家なところも遺伝したんだろうと私は見ている。

 実際、この子の部屋には大量の専門書が置いてあるし、中身を見せてもらったけどチンプンカンプンだった。

 愛華は全部内容を把握しているので、やっぱりただものじゃない。


「そんなことないよ! 雅ちゃんしっかり頑張ってるのが理由だよ。僕はそのお手伝いしただけだから」

「愛華……」

「雅ちゃんは僕にとって大切な人だもん。僕も都合が悪い時は手伝えないけど、それ以外の時は可能な限りお手伝いするよ」


 にっこりと微笑む愛華が女神に見えてならず、思わず涙が出てしまった。


「あいがぁ! あんだほんどうにいいごずぎるぅ!」

「雅ちゃん顔すごいことになってるよ!?」


 ほら、とハンカチを取り出して私の顔を拭いていく。


「ありがどぉ……」

「鼻声になってる……雅ちゃんって涙腺とか弱いの?」

「人の優しさに慣れてないの……」

「なんで!? あれだけ人助けとかしてるのに感謝されないの!?」

「優しさと感謝は別物の時が多いのよ」


 なんなら切羽詰まっていて逃げる人たちもいる。後々に私が助けたという証言をくれたりもしてくれるから無駄ではないんだけど。


「あ、今日は家によってくの?」


 涙を服の袖で拭い、首を縦にふる。

 宿題を早めに終わらせたいし、愛華のご両親にも挨拶をしておきたい。


「それじゃ家で着替えよ。それで家のお風呂に一緒にはいろーよ!」

「そうねぇ……でも一度制服には着替えようかな。ジャージ姿のまま行くのもなんかも失礼だしね」

「真面目だね。お父さんもお母さんも気にしないよ?」

「友達の家に行くんだからある程度の身だしなみは整えておきたいのよ。帰宅部の娘が友達とジャージ着て一緒に帰ってきたら普通びっくりするもんよ。ほら、さっさと着替えましょう」


 はーい、と舌足らずの返事をする愛華。

 それに微笑みながら頷き、コインロッカーから着替えを取り出し来たときと同様にトイレに入ってタオルで体を拭いてから着替える。

 そして数分後、ともにトイレから出るとなんかガラの悪い男たちが出入り口でたむろっていた。愛華は怯えながらも私の隣に立っている。

 そして男たちは私たちに気づいたのか視線をこっちに向けると、だらしなく頰を緩めて立ち上がって私らの方に向かってきた。


「ねえお嬢さんたち、これから俺たちと遊ばない?」

「結構です。これから私たちは用事があるので」


 さっさと愛華の家に行ってお風呂を借りて宿題済ませたい。間違ってもこんな男たちと付き合う時間はない。

 それじゃ、と言って立ち去ろうとするとリーダー格らしき男は慌てたように「待てよ」と私の肩を掴んで、動きを止めてくる。

 ああ、わずらわしい。なにもしなければそれで穏便にすむ話なのに。


「いいじゃん! 用事なんかほっぽって俺らと遊んだ方が楽しいよ? ほら連れのお嬢さんもなにか言ってよ!」


 威圧的に男は愛華の方に話を投げる。私では埒があかないと判断して外堀を埋める気なのだろう。


「え、僕は雅ちゃんとさっさと帰りたいです……」


 しかし怯えながらも、正直に愛華は答える。

 昔だったら今のように威圧的に言われたら泣きべそかいてたのに、強くなったなぁとしみじみ思う。


「そういうこと。では」

「おい待てって! 行こうとするなら乱暴しちゃうぞ?」


 男は自分の懐に手を伸ばし、なにかを取り出そうとする。

 見えたのは、ナイフだった。

 あの大きさは護身用の域を超えている。

 しょうがない、今日は比較的気分いいから周りや私らに実害出さなかったら見逃そうと思ったけど……シめるか。

 一呼吸の内に男に接敵。

 虚をつかれた男は反応が遅れ、慌てて手を伸ばそうとするが、私はその手を掴んで一本背負の要領で投げ飛ばした。


「……え?」


 リーダー格の男があっという間に投げ飛ばされたのを見て、連れの男たちの一人がぽかんとした声をあげた。


「次、どいつが来ても頭から落とすけど……どうする?」


 静かにドスを効かせた声で脅す。

 男たちは反撃されると思っていなかったのか慌てて蜘蛛の子を散らすように逃げていく。あ、コイツは見捨てていくんだ……


「あんたもこれ以上関わってくる気なら次は一本背負程度じゃすまないわよ」

「ぁ……は、はい」


 未だ女子に投げ飛ばされたことを実感できていないのだろう。こいつもぽかんとした表情で倒れたままだった。


「それじゃ愛華、行こうか」

「うん!」


 そして私たちは談笑しながら愛華の家に向かうことになる。

 そして、この帰り道。私は自分の常識を超えた存在と出会うことになった。


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