命日
母親の仏壇に花を添える。
「ショウさん……」
「リア、付き合わせてごめんな」
「あはは……なんだか、離れられなくなっちゃうんですよね。まだ、周りが怖くて」
「家に居たらよかったのに」
「お母さん……資料で見ました。優しい人だったんですよね」
「そうだな」
一拍置いて、俺は声を張る。
「……で、監視してる変態。出てこいよ」
墓地の奥から、足音。
現れたのは覆面の男だった。
手にはナイフ。俺と同じ形状。
――確定だな。
「リア、離れてろ」
「いやぁ……風の噂で聞いてたんでな。俺に家族を殺された優秀な警察を、一目見たくて」
男は笑う。
「……殺すが」
「こっちのセリフだ」
ナイフを顕現しようとする。
――出ない。
「っ……!」
男が刺しに来る。
リアが即座にバリアを展開し、刃を止めた。
「なんでだ……!」
「ショウさん……すごい汗です」
「チッ……」
俺は自分の頭を、母親の墓石に叩きつける。
ガン、と鈍い音。
視界が揺れ、呼吸を無理やり整える。
「……落ち着け」
ナイフを、顕現させる。
「ショウさん! 無茶です!」
「ハァ……」
その瞬間――
「……っ!? アリサ……!」
泣きながら、アリサが墓地に入ってくる。
最悪だ。
今の精神状態じゃ、俺はろくに戦えない。
俺は反射的に、
アリサが墓石の前で立ち止まった“その地点”へナイフを投げた。
「アッ呪」
空気が歪み、
化物が顕現する。
覆面の男は、それを見た瞬間に悟ったらしい。
勝てない、と。
舌打ち一つ残し、男は逃走した。
俺はその場に座り込み、必死に呼吸を整える。
リアが、何も言わず俺を抱きしめた。
……呼吸が戻った、その時。
アリサが、
鬼の形相でこちらを向いていた。
「……詰んだ」




