リアの過去
精神施設。
この部屋に、誰も入れない。
バリアがあるからだ。
大人が怖い。
部屋の入口に食べ物が置かれ、人の気配が消えたあとでそれを取りに行く。
それが、毎日だった。
人がいなくなる。
食事を取りに向かう。
「なぁ……」
「えっ、えっ!?」
リアは驚いた。
人の気配には敏感なはずなのに、気づかなかった。
「お前、警察に入る気はないか?」
「えと……その……」
「お前のその能力、頼りになると思うんだが」
「怖いんです……大人が」
「あー、そうだな。怖いゴミを殺すから、手伝え」
リアは言葉を失った。
月に一度、嫌々受けているカウンセリングでは慰めの言葉をかけられる。
でも、こんなことを言う人は初めてだった。
それから、男は毎日来るようになった。
いつしか、リアはバリアを張らなくなった。
雑談をして、
自分の過去を話して。
――この人は、同情なんてしない。
それでも、こんなことを言った。
「その過去があるから、今のお前がいる。
過去を否定するな。
強く、優しくなれるのは、過去のおかげでもある」
「……自分は、強くないです」
「なら、踏み越えて強くなれ」
私は、その言葉をきっかけに警察に入った。




