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顔面S級冷酷無双ヤンデレ王子と転生令嬢  作者: はるさんた


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第六十五話:若き王妃の執務室と、背後の守護神

2章のスタート


王宮の一角にある王妃の執務室は、今や王国の心臓部の一つとなっていた。 かつては儀礼的な場であったこの部屋は、ルナ・ノートが王妃に即位して以来、国中の魔導流通や教育改革の指示が飛び交う、熱気ある場所へと変貌を遂げている。


「……以上が、北部の魔導井戸の修繕計画です。これならば、冬が来る前に魔力の供給が安定するはずです」


ルナは目の前の書類を整理し、集まった官僚たちに凛とした声で告げた。彼女の瞳には、かつての転生直後の不安はなく、一国の母としての自覚と知性が宿っている。


「素晴らしい、ルナ様! 誰もが手をこまねいていた難題を、こうも鮮やかに……」


官僚たちが感嘆の声を上げたその時、部屋の温度がわずかに下がったかのような錯覚が一同を襲った。 背後の大きな扉が音もなく開き、一人の男が歩み寄る。現王太子、アレスだ。


「……公務は順調のようだが、少々『時間』が過ぎているのではないか?」


アレスの声は低いが、底に冷ややかな圧を孕んでいる。彼はルナの背後に立つと、当然のように彼女の肩に手を置き、集まった官僚たちをその顔面S級の冷徹な美貌で見据えた。


かつてのヤンデレ全開だった頃なら、男たちがルナを直視した瞬間に処罰を検討していただろうが、今のアレスは違う。彼はルナが仕事を愛していることを理解し、彼女の自由を尊重している。……ただし、それは「僕の目の届く範囲」においてのみであった。


「アレス、もうそんな時間? 夢中になっていたわ」


「ああ。君の集中力は素晴らしいが、僕の忍耐力には限界がある。官僚諸君、今日の謁見はここまでだ。王妃には休息、そして『僕』が必要だ」


アレスの「下がれ」という無言の圧力に、官僚たちは慌てて書類をまとめ、逃げるように退室していった。 部屋に二人きりになると、アレスは即座にルナを椅子ごと自分の方へ向け、その細い腰を抱きしめた。


「お疲れ様、ルナ。……頑張りすぎるのは君の悪い癖だ。僕をこれ以上待たせないでくれ」


「ふふ、ごめんなさい。アレスも公務、終わったの?」


「終わらせた。君と茶を飲むために、山のような書類を倍の速度で処理したよ。……少し、ルナ不足だ」


アレスはルナの首筋に顔を埋め、深く息を吐いた。かつての狂気に満ちた眼差しは影を潜めたが、彼女を抱きしめる腕の力強さと、片時も離れたくないという執着心は以前として健在だ。むしろ、公の場で「完璧な王妃」を演じ、誰からも慕われるようになったルナを見て、彼の内面にある独占欲は、より洗練された、静かな炎へと変わっていた。


「……ねえ、アレス。最近、少し気になっていることがあるの」


ルナがふと表情を曇らせた。


「無属性魔導の普及が進むにつれて、隣国の『エストリア帝国』からの視察要請が増えているわ。あそこは軍事魔導に特化した国。私の技術が、あらぬ方向に利用されないか心配なの」


アレスの瞳が、一瞬で鋭く細まった。


「エストリア……。あの好戦的な皇帝か。心配しなくていい、ルナ。君の知恵も、君の指先一本も、僕が誰にも触れさせはしない。外交という名の略奪に来るというのなら、僕自らが鉄槌を下すまでだ」


アレスはルナの手を取り、その指先に騎士のような誓いのキスを落とした。 穏やかな新婚生活に差し込む、他国の影。ルナの類まれなる才能は、もはや一つの国で収まる規模ではなくなっていた。


「君はただ、僕の隣で笑っていればいい。汚い仕事や外敵の排除は、すべて僕の役目だ」


アレスの微笑みは甘美であったが、その奥には、ルナの平和を乱す者への容赦ない殺意が揺らめいていた。


新たな国際情勢の荒波と共に、静かに切って落とされたのである。



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