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顔面S級冷酷無双ヤンデレ王子と転生令嬢  作者: はるさんた


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第四十八話:決意の脱出と、愛を証明する賭け

ルナは、王宮の地下水路の設計図と、凍結地帯の地理に関する文献を完璧に頭に焼き付けた。アレスに「改良案」として提出した設計図は、彼が求める防衛強化ではなく、彼女自身の完璧な脱出計画のコードネームだった。


(アレスが私を信じないのは、私が彼の支配下にある限り、私の心に「彼以外の何か」が存在する可能性を排除できないからだ。彼の猜疑心は、彼の孤独と恐怖の現れだ)


ルナは、アレスへの愛を貫くための、唯一の方法にたどり着いた。それは、一度彼の支配から完全に離れ、彼の予想を裏切る行動を取ることだった。


(私がクリス様を助け、自分の力でここから脱出し、それでもなお、彼の王権を揺るがすことなく戻ってきたとき、アレスは初めて、私の心に自分以外の動機は存在しないと信じるかもしれない。これは、彼の愛を勝ち取るための、最初で最後の賭けだ)


ルナの決意は、悲壮な推し活の最終手段だった。彼女は、アレスの望む通りの完璧な王妃を演じ、彼の監視が最も緩む瞬間を待った。それは、アレスが毎月一度、早朝に王室会議のため、短時間だが確実に私室を離れる日だった。


前日の夜、アレスはルナの隣で満足げに眠っていた。ルナは、アレスの寝息が一定になったのを確認し、静かに魔力を操作した。


(ごめんなさい、アレス。でも、私を信じてほしいから。あなたの愛を正すために、私はあなたを裏切る)


ルナは、左手首のブレスレットに、ごく微弱な無属性魔力を流し込んだ。ブレスレットは、魔力制御の乱れを感知するが、魔力制御の意図的な安定化までは感知できない。ルナは、自分の心臓を激しく打ちながらも、魔力の波長を意図的に平静に保ち続けた。


そして、運命の朝が来た。


アレスは早朝、身支度を整え、ルナの額にキスをした。


「すぐに戻る、ルナ。僕の愛しい王妃は、僕がいない間も、静かに僕を待っていてくれるだろう」


アレスが私室を出て、重厚な扉が閉ざされた瞬間、ルナは寝台から跳ね起きた。与えられた時間は、わずか二時間。


ルナはすぐに、昨日アレスに「改良案」として提出した設計図の核心部分を思い出した。王宮の東側排水路の制御魔石の位相を不安定化させることで、防衛システムの「死角」を作り出す。


彼女は、寝室の片隅に隠していた、学院の魔導学の授業で使った単純な魔力増幅具を手に取った。アレスはルナの才能を信じ、私室内に危険物を持ち込むことは不可能だと確信していたが、魔力増幅具は王妃教育の教材として備え付けられていたのだ。


ルナは、私室の窓の下にある、古い非常用の換気口へと向かった。その換気口は、アレスの私室が改装された際に使用されなくなった、古い地下水路の通気孔へと繋がっていた。


ルナは魔力増幅具を換気口に向け、全魔力を込めて「制御魔石位相不安定化」のコマンドを、地下深くに埋め込まれた制御魔石へと送信した。


ガタン!


一瞬、王宮全体が微かに揺れた。警報音は鳴らない。アレスの監視が完璧ではないというルナの理論通り、制御魔石は位相の乱れを「システムエラー」として処理し、全体の防衛システムは一時的な待機状態に入った。


ルナは換気口の蓋をこじ開け、汚れたローブを身にまとった。冷たい湿気と泥の匂いが、ルナの顔に吹き付けた。


「クリス様…必ず助けに行きます」


ルナは、アレスの愛を勝ち取るという悲願と、クリスを救うという良心の義務を胸に、光の届かない王宮の地下水路へと、身を投じた。彼女の脱出は、アレスの絶対的な支配に対する、最初で最後の反逆だった。

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