表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
顔面S級冷酷無双ヤンデレ王子と転生令嬢  作者: はるさんた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/22

第三話:深まる執着と露呈した才能

アレスが私の家族になって一年が経ち、私は7歳、アレスは10歳になっていた。アレスの私への執着は、日を追うごとに強まっていった。彼は私の行動の全てを把握し、私が少しでも不安げな顔をすれば、すぐにその原因を解消しようとした。そして、その解消法は、常識から逸脱していることが多かった。


ある日、私が母に「もっときれいな布で、新しい人形を作ってあげたい」と話しているのを聞いたアレスは、翌朝、突然私の部屋に来た。彼は、見たこともないほど上質で柔らかな、虹色に光る絹の布の塊を差し出した。「ルナ。これで人形を作るといい」


「え、アレス?これ、どこで…?こんな高級な布、うちにはないはずだよ?」


この布は、王都の貴族が使用するような、庶民には手が届かないものだった。両親も驚き、布の出所を問いただしたが、アレスは「森で見つけた」と、その完璧な美貌で嘘をついた。私はアレスの行動に冷や汗をかいたが、問い詰めることはできなかった。アレスの銀色の瞳には、私が喜ぶなら手段を選ばない、という狂信的な輝きがあったからだ。結局、私はその布で新しい人形を作り、アレスの愛情の深さに改めて戦慄し、同時に満たされた。顔面S級の美少年からの、命がけのプレゼントだ。怖くても、愛されている証拠だ。


そんなアレスの規格外の才能と魔力は、小さな街の日常の中で、完全に隠し通すことはできなかった。


ある夕方、父が作業中に怪我を負った。手に深い切り傷を負い、血が止まらない。母が慌てて治癒魔法をかけようとしたが、母の魔力では傷が大きすぎた。父は痛みに顔を歪ませた。


「お母さん、もういい。町の医者に…」


「だめよ!出血がひどすぎるわ!医者に行く時間もない、この場でなんとかしないと!」


母が焦燥に駆られる中、アレスが静かに父のそばに寄った。アレスは何も言わず、ただ父の傷に手をかざした。次の瞬間、アレスの周りの空気が一変した。その場にある全ての魔力が、アレスの細い体に引き寄せられるように収束していくのが、皮膚で感じられるほどだった。アレスの銀色の瞳が、一瞬、青白い光を放った。


アレスが手をどけると、父の手の傷は、まるで最初から何もなかったかのように完全に塞がっていた。治癒魔法の痕跡すら残っていない、完璧な治癒だった。それは、母やこの町の誰もが知る治癒魔法とは、かけ離れたレベルの、高位な魔法だった。


父は呆然とした後、傷が完璧に治っているのを見て、安堵と驚きに声を震わせた。「アレス…すごい、ありがとう!命を救われたよ」「ええ、本当に…。アレス、ありがとうね」母も恐怖よりも感謝を優先して言った。


「僕が持っている治癒魔法です、お父さん。僕の魔力が、少し強かったようです」


アレスはいつもの穏やかな顔でそう答えたが、彼の表情には、一切の動揺がなかった。その姿は、まるで自分の力がどれほど常軌を逸しているかを、完全に把握した上で、敢えて穏やかに振る舞っているかのようだった。


(違う。彼は、自分の力が普通ではないことを知っている。そして、それを隠すつもりがないんだ)


私は震えた。アレスの持つ力は、この貧しい家で彼を匿うには、あまりにも大きすぎた。この日、私は、アレスの存在が、もはや「顔の良いお兄ちゃん」という枠を超えて、私たち家族の日常を崩壊させる引き金になるだろうと、はっきりと悟った。そして、その才能が、必ず彼自身を「王都」という舞台へと引き戻すだろうと予感した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ