表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
7.若き老中(構)
96/154

069A. 若き老中(構)―密やかな打診―

評定所のざわめきが、まだ耳に残っていた。

反発、警戒、沈黙……。

あの場で言葉を尽くしても、すぐに改革が進むものではない。


だからこそ、別の場で動かさねばならぬ。


夜。

灯火のもとで私は机に向かっていた。

呼び寄せていたのは、勘定所で才を見せ始めた若き役人である。

表立ってはまだ無名、だが筆は確かで、数字にも強い。


「今宵は他言無用に願いたい」

そう切り出すと、彼は深く頭を下げた。


「倹約の策では、国は立たぬ。

ゆえに、新たな算段を要する。

その目で勘定を見直し、隠れた筋を探り出せぬか」


彼の目が揺れた。

「老中様、そのような大事を、私のような若輩に……」


「若輩ゆえによい」

口をはさんだ。

「古き手筋に囚われぬ者こそ、いまは要る」


沈黙。

灯火が揺れ、影が畳に伸びる。


やがて彼は、覚悟を決めたようにうなずいた。

「承知いたしました。命じられるままに」


胸の奥で、わずかに息が熱を帯びる。

これは、まだ小さな一歩にすぎない。

だが確かに、今日ここで新たな歯車が回り始めた。


私は机の上の書状を、そっと彼に渡した。

「これは、密かに進めよ」


灯火の下で交わされた言葉が、この国を動かす種となる。

そう信じながら、筆を置いた。


[ちょこっと歴史解説]

阿部正弘は老中就任後、すぐに改革派の若手を登用していきます。勘定所・学問所などから有能な人材を抜擢し、密かに情報や資料を集めさせたのです。これは派手な布告ではなく、「人を選び、密かに任じる」ことから始まった点が特徴です。小さな打診が、のちに大きな改革の流れへとつながっていきました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ