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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
7.若き老中(構)
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068KT. 若き老中(構)―記すべきもの―


評定所の議がようやく終わった。

広間を出れば、秋の風が冷たく頬を撫でる。

つい先ほどまでの熱気が嘘のように思えた。


私は持ち帰った筆録を机に広げる。

墨の跡は乱れ、にじみも多い。

けれども、この紙に残されたのは、単なる言葉の羅列ではない。

声の強弱、沈黙の重み、誰が目を伏せ、誰が机を叩いたか――そのすべてがここに刻まれている。


「威を保つは形にあらず、実にございます」

あの一言が胸に残る。

若き殿の声は、決して大きくはなかった。

だが、静けさを切り拓き、場をわずかに動かした。


私は筆を執り直す。

日記の余白に、ひとこと添えておかねばならぬ。


――本日、評定所にて議あり。

若き殿、沈黙をもって場を制し、ついに策を口にす。

諸老、なお反発強し。然れども、心の揺らぎ見ゆ。


書き留めた瞬間、私は息を吐いた。

記録とは、ただの過去ではない。

未来に向けての証であり、誰かが歩んだ道を照らす灯火である。


この一日を記した筆録が、いつの日か、誰かの眼に触れるとき。

そこに込められた沈黙の重みを、果たして伝えられるだろうか。


私は蝋燭の火を見つめながら、もう一度筆を走らせた。

記すこと――それこそが、我が務めである。


[ちょこっと歴史解説]

川路聖謨の日記・覚書は、単なる議事の記録を超えて「誰がどう動いたか」「場の空気はどうだったか」まで詳細に残されています。こうした生々しい記録が残ったおかげで、幕末の政治過程を後世の我々が具体的に追うことができるのです。

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