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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
7.若き老中(構)
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060A. 若き老中(影)ー古参のまなざしー


「また若造が口を開いたか」


心の中でそう呟きながら、私は口元を崩さぬまま耳を傾けていた。

老中の席に着くには、まだまだ経験も浅く、重みも足りぬ。

そう思っていたし、今もその見方を簡単に変える気はない。


だが、机上に差し出された一枚の紙。

それは、表立った大策ではなく、小さな手直しにすぎぬもの。

本来なら、目を通すまでもなく退けてもよい。


──にもかかわらず、会議の空気は一瞬ざわめいた。

老中たちの間に、見えぬ糸が張られたような静寂が走る。


「……ならば、まずはその範囲で試してみるがよい」


私は、そう言葉を置いた。

突き放すように響かせたつもりであったが、胸の内では微かな苛立ちが動いていた。

なぜ、若年の者の小細工が、ここまで空気を変えるのか。


彼は己の力量を誇るでもなく、また軽口を叩くでもない。

ただ静かに、しかし確かに布石を打つ。

それが、じわじわと壁の隙間に沁み込むように広がってゆく。


「侮れぬ」

そう認めるには、まだ早い。

だが、このまま目を逸らしては、いずれ自分たちの方が取り残されるやもしれぬ。


私は視線を落とし、顔色ひとつ変えぬまま、次の議題へと移した。

だが心中では、すでに彼の動きを「注視すべきもの」として刻んでいた。



[ちょこっと歴史解説]


幕政の場には、年功や経験を重んじる古参老中が多く、若年で老中に就いた阿部正弘は常に「軽んじられる」立場にありました。

しかし彼は、表向き目立たぬ小さな布石から成果を積み重ね、やがて古参すら無視できなくなる存在へと変わっていきます。

この「最初の認識の揺らぎ」が、その後の幕政を大きく動かす第一歩でした。

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