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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
7.若き老中(構)
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055A. 若き老中(芽)―小さき登用―

倉米の不正を取り上げたことで、私を見る目がわずかに変わった。

大きな声はまだ届かぬが、小さな囁きは確かに実を結びつつある。


その日、評定所の席上で、帳簿の整理を任された書役の名が挙がった。

年若く、これまで陰に隠れていた者。だが彼が差し出した記録は、誰も気づかなかった細部を正確に示していた。


「この者に続けて任せてはどうか」

私は思わず口にしていた。


広間にざわめきが走る。

年長の老中は眉をひそめ、低く言った。

「若殿、登用は軽々しく口にするものではない」


しかし、奉行衆のひとりが声を重ねた。

「確かに、この者の働きは見事。任せて損はあるまい」


議論は短く、結論はあっけなく出た。

――小さき登用が、初めて私の言葉から生まれたのだ。


その後、書役は帳簿を整え、不正の全貌を浮かび上がらせた。

わずかな芽が、確かな力となる。

私はそれを目の当たりにし、胸の奥で呟く。


「芽を守らねば。いずれこれが、未来を支える幹となる」


廊下を歩む足取りは、まだおぼつかない。

だが、壁の向こうで芽吹いた小さな緑が、確かに息づいていることを感じていた。


[ちょこっと歴史解説]

阿部正弘は老中となって間もない頃から、若手や下僚を積極的に登用した人物として知られます。時に軽んじられることの多かった役人や学者の声を拾い上げ、その働きの場を広げました。川路聖謨や勝麟太郎らも、こうした「小さき登用」の積み重ねによって力を発揮する機会を得ていきます。小さな芽を見逃さない姿勢こそが、正弘の政治の特色といえるでしょう。


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