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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
6.若き老中
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048A12. 若き老中(連)ー灯火ー

火鉢の中の炭が、赤く静かに灯っていた。


強くもなく、弱くもない。

ただ、燃え続けている。それだけで、夜は少しあたたかくなる。


正弘は、湯呑を両手で包みながら、ゆっくりと吐息をこぼした。



このひと月、誰かの声に耳を傾け、誰かの名を書き、

誰かの背を押し、誰かの迷いに答えなかった。


すべてが「決断」という名のもとに積み重なった日々。


だが、そのどれもが、確かな手応えとして残っているわけではない。


不安はある。

反発もある。

けれど――


(それでも、火はついた)



登用された者たちの名は、まだ世間に知られてはいない。

だがその者たちが、互いの存在を知り、目線を交わし、

ときに励まし、ときに沈黙の中で学び合いはじめている。


小さな輪。

微かな連なり。

それらが、見えぬところで政を支える「芯」になるのだ。



正弘は、湯呑を置き、机の上の灯を見つめた。


火は、消えない。

それは、己ひとりの意志で燃やし続けるものではない。

誰かに灯し、誰かが守り、誰かがまた次へと渡していく。


(そうやってしか、未来は続かないのだ)



障子の外で、足音がした。


川路だった。


「次の登用候補について、草案が届いております」


「うん……」


返事をしながら、正弘はもう一度、火鉢の赤を見つめた。


そこにあるのは、今の自分だけではない。

過去から繋いできた者たちの灯。

そして、これからを照らす者たちの灯。


(灯火は、続く)



[ちょこっと歴史解説]

▪️「灯火を渡す」政治 —— 阿部正弘の“静かな改革”


阿部正弘の政治は、**「音を立てずに前へ進める改革」**と称されることがあります。

派手な改革布告をするわけでもなく、誰かを敵と名指しして批判するわけでもない。


けれどその裏では、着実に人を選び、配置し、動きを生み出していました。


この「静かな火」は、のちの幕末において確かに制度改革・開国交渉・人材育成という大きな力になっていきます。


特に阿部の登用策は、「次の世代」を意識したものであり、

“自分一代で終わらせない”という視点を持っていたのが特長です。


この話は、そうした“連なり”を灯火として描き、

第6章「若き老中」の締めくくりとしています。

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