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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
1章.転生
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004KR.不可解?なる門弟

佐久間象山

私の名を騙る者が多い。

蘭学塾を開けば、誰彼かまわず門を叩く。

なかには見込みのある者もいる。だが大抵は、「わかった気になる」だけの連中だ。


そして──勝麟太郎。

あれは最初から、どこか妙だった。


学ぶ姿勢だけは真面目だ。だが、素地は凡庸。

剣も、読み書きも、中の下。

入門から半年、私は名前を覚えようともしなかった。


ところが、ある日――講義中に、ぽつりとこう言った。


「先生、もし異国の艦隊が江戸湾に現れたら、砲台は……いや、まだありませんね。でしたら、まず何を建てるべきでしょうか?」


私は手を止めた。


「……おぬし、なぜ“砲台”などというものを、まるで既に存在しているかのように語る?」


あいつは、肩をすくめてこう答えた。


「……ああ、夢に見たのかもしれません」


その目が、ただの戯言ではないと物語っていた。


以後も、あいつは時折、妙な言葉を吐いた。


「伝馬町に電信線を通すべきです」

「欧羅巴は、じきに中国に手を出します」

「刀ではなく、言葉が武器になりますよ」


何を根拠に言っている? どこで仕入れた知識だ?

書物か? 誰かの受け売りか? ――それとも。


いや、違う。

あれは「知っている顔」だった。


まるで、既にそれが起こったことを“思い出している”かのような。


弟子の一人がこう言った。


「麟太郎は、夢を見てるんじゃないですか?」


私は笑った。

そうだ、夢でも見ているのだろう。


だが、夢でここまで冷静に未来を語れる者が、他にいるか?


私はあいつをまだ信用していない。

だが、目は離せん。


こやつ、何者だ……?


[ちょこっと歴史解説]


勝海舟(勝麟太郎)


幕末の幕臣・軍艦奉行。

のちに「海軍創設の父」と呼ばれ、西郷隆盛との江戸無血開城にも尽力。

その出発点は、どこにでもいるような若き御家人の次男坊だった。

だが、もし彼が未来を“思い出していた”としたら――?

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