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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
1章.転生
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001A.あべまさひろって誰ですか?

目を開けた瞬間、私は思った。


(え、ここどこ?)


天井は木の梁。畳。ふすま。

布団はやけに分厚くて、敷き布団がふかふかすぎて、沈む。


(旅館……じゃない。ていうか、静かすぎない?)


起き上がろうとしたら、違和感。

腕が細いのに、手がゴツい。

喉に力を入れたら――


「うわっ……」


出た声が、明らかに男子だった。

中学生か高校生くらいの、ちょっと高めの男の子ボイス。


(……え、なにこれ、なんで私、声変わってんの!?)



「まさひろ様、お目覚めですか!」


ふすまが開いて、若い女性が飛び込んでくる。

着物。きれいに結い上げた髪。

完全に、江戸時代の人みたいな出で立ち。


「ご気分はいかがでございますか。ああ、熱が下がられて……」


(ちょ、待って、“まさひろさま”?)


私は思わず聞き返した。


「あの……まさひろ様って、私のことですか……?」


女性は小さく笑って、うなずいた。


「はい。阿部伊勢守いせのかみ正寧公の三男、正弘様にございます」


(……阿部、正弘?)


聞いたことがある。どこかで。

社会の教科書。幕末?

でも、それだけ。


(誰だっけ……? ていうか、なんで私がその人なの!?)



鏡を見せてもらった。

そこにいたのは、14~15歳くらいの少年。

細身だけど、凛としてて、どこか“武家の子息”って感じ。


(これが……私!?)


目の奥に、さっきの鳥居の映像がよぎる。

修学旅行。伏見稲荷。願い事。事故。――そして、転生。


(マジで、“あの時の願い”が叶ったってこと?)


「歴史に残る人生、ちょっと体験してみたい」

そんなノリで言ったあのセリフが、現実になってしまったのかもしれない。


(いや、ほんとに来る!? こういう展開!?)



美鈴と名乗ったその女性が、やわらかい声で言う。


「記憶の混乱が残っておられるようでしたら、しばし静養を。ご当主様にもそうお伝えしてあります」


(……やばい、これ、しばらく“バレないように生きなきゃ”じゃん)


でも正直、なによりヤバいのは――


(“阿部正弘”って、何やった人なのか、ぜんぜん知らない……

 ……たしか、歴史の授業で……えーっと……総理大臣、だっけ?)


[ちょこっと歴史解説]


阿部正弘あべ・まさひろ――江戸時代後期の幕臣。

わずか十四歳で家督を継ぎ、十七歳で政務に就き、二十五歳で老中(幕府の最高政務職のひとつ)に就任。

黒船来航や開国交渉など、激動の時代を支えたキーパーソンのひとり。

なのに、歴史の教科書では地味ポジション。


そんな彼に、現代の女子高生が転生してしまったら……?


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