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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
15.和親条約
192/201

155I 決断は終わらない

 終わった、とは

 誰も言わなかった。


 井伊直弼は、

 条約が結ばれたあとの空気を、

 静かに受け止めていた。


 場は、

 保たれている。


 だが、

 まとまってはいない。


 それは、

 失敗でも、

 想定外でもなかった。


 和親は、

 争わぬという一点においてのみ、

 意味を持つ。


 その先を、

 誰がどう引き受けるかまでは、

 約していない。


 (……決断は、ここで終わらない。)


 直弼は、

 そう思った。


 阿部正弘は、

 最後まで均した。


 割れぬように、

 声を並べ、

 場を壊さぬように。


 その働きがあったからこそ、

 条約は、

 刃にならずに済んだ。


 だが、

 刃にならなかっただけで、

 刃が消えたわけではない。


 攘夷を唱える声は、

 収まらない。


 むしろ、

 理由を得たように、

 強まっていく。


 直弼は、

 それを、

 遠くから見ていた。


 均しの内側ではない。

 だが、

 無関係でもない。


 いずれ、

 この割れを、

 誰かが引き受けねばならない。


 その役割は、

 調整ではない。


 選び、

 切り、

 責任を背負うことだ。


 (……準備は、始まっている。)


 直弼は、

 まだ動かない。


 動けば、

 均しが壊れる。


 だが、

 均しが限界を迎えたとき、

 躊躇してはならない。


 和親は、

 終わりではない。


 始まりでもない。


 ただ、

 逃げ道が消えたという事実

 それだけを、

 確かに残した。


 直弼は、

 その事実を、

 胸の内に置いた。


 決断は、

 終わらない。


 これから先、

 何度も、

 形を変えて、

 現れる。


 そのたびに、

 誰かが、

 前に出る。


 ――その「誰か」に、

 自分の名が重なる日を、

 直弼は、

 まだ、

 否定しなかった。




[ちょこっと歴史解説]井伊直弼と「決断の時代」


井伊直弼は、

日米和親条約

締結の時点では、

まだ幕政の中心人物ではありませんでした。


しかし和親条約後、

幕政は次第に、

•合議と調整

から

•割れた国論を前提にした決断


を求められるようになります。


これは、

•条約が成功したから

でも

•失敗したから

でもありません。


割れたままでも、

前に進まざるを得なくなった


という、

政治の条件そのものが変わったからです。


井伊直弼が後に担うことになる役割は、

この条件の中でしか成立しません。


155Iで描かれているのは、

その「始まり」です。

•まだ動かない

•まだ語らない

•だが、逃げない


という立ち位置を取ったこと。


それが、

後年の決断を、

激情ではなく

冷たい責任として行わせる下地となりました。


第十五章はここで、

•条約が結ばれ

•しかし国論は割れ

•決断の連鎖が始まった


ところまでを描き切っています。

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