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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
14.避けられぬ未来
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150I 均しの外で

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。m(_ _)m

 静かだった。


 それが、

 井伊直弼にとっては、

 かえって重かった。


 評定所が荒れていない。

 声は高いが、

 刃になっていない。


 それは、

 誰かが均している証だ。


 (……まだ、保たれている。)


 直弼は、

 その事実を、

 否定も肯定もせずに受け止めた。


 阿部正弘のやり方は、

 分かっている。


 声を集め、

 並べ、

 割れぬように保つ。


 それは、

 今この時点では、

 最も正しい。


 だが、

 正しさが続く時間には、

 限りがある。


 均しが効いているということは、

 均しが必要なほど、

 熱が溜まっているということだ。


 直弼は、

 机の端に置かれた書付に、

 一瞬だけ目を落とした。


 そこには、

 決断の言葉はない。


 だが、

 決断が前提となった書きぶりが、

 すでに滲んでいる。


 (……来るな。)


 そう願うことは、

 できた。


 だが、

 願って止まるものではないと、

 直弼は知っている。


 均しの内側にいる者は、

 決断を先に置かない。


 だが、

 均しの外側に立つ者は、

 決断の後を引き受ける。


 それは、

 誉でも、

 望みでもない。


 ただ、

 役割だ。


 直弼は、

 深く息を吸い、

 ゆっくりと吐いた。


 まだ、動かぬ。

 今ではない。


 だが、

 均しが破れたとき、

 誰かが、

 その破れを引き受けねばならない。


 その「誰か」に、

 自分の名が挙がる可能性を、

 直弼は、

 もう否定できなかった。


 (……均しの外で、待つ。)


 動かず、

 語らず、

 だが、

 逃げない。


 均しが終わったあと、

 場に残るものを、

 拾い上げるために。


 直弼は、

 その位置に、

 静かに立った。


 まだ、

 誰にも見えぬ場所で。




[ちょこっと歴史解説]井伊直弼と「決断を引き受ける立場」


井伊直弼は、

嘉永七年当時、

まだ幕政の中心人物ではありませんでした。


しかし彼は、

•合議や調整が機能しなくなった後

•すでに割れてしまった場を前提に


決断を下す役割を、

後に引き受けることになります。


150Iで描かれているのは、

その決断そのものではありません。


「均しが終わったあと、

誰かが前に出る必要がある」

その事実を、

自分の役割として理解してしまう瞬間


です。


阿部正弘の政治が、

場を壊さぬよう最後まで均し続けたからこそ、

その後に訪れる決断は、

激情ではなく、冷たい選択として行われました。


井伊直弼は、

その冷たさを引き受ける立場に、

徐々に近づいていきます。


今話は、

その第一歩を、

誰にも見えない場所で踏み出した回です。


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