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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
2章.暮らし
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013KR.勝家、台所事情ヤバいってよ

朝。湯気も立たない麦飯が、木の器によそわれた。

その横には、色褪せた沢庵が三切れ。そして、干物……だと思って口に入れたら、ただの焦げた魚の皮だった。


「……え、これが朝ごはん?」


思わず口から出たひとりごとに、隣で妹が眉をひそめた。

「また、わけのわかんないこと言って……。兄さん、最近ちょっと変だよ」


──いや、こっちはまだ高校の購買のパンの記憶が残ってるんだよ。


俺の名前は勝義邦かつ・よしくに。前の世界では、ただの高校二年だった。

修学旅行中に事故って、気がついたら江戸時代。しかも貧乏旗本の家の長男、勝麟太郎として目を覚ました。


転生してからもう、二年とちょっと。

チートスキルもなけりゃ、スマホもない。あるのは、質素という名の“生存戦略”。


妹と母がせっせと薪で味噌汁を炊く間、俺はちゃぶ台に座って、冷えた麦飯を口に運ぶ。

……味がしない。いや、舌が贅沢なだけか?たぶん、どっちもだな。


最初の頃は「マジで無理」と絶望した。

けど、不思議と人間は慣れる。いや、慣れざるを得ない。


ただ──


「お兄ちゃん、また紙に何か書いてるの?」

「うん、日記というか……メモ? 今日の干物の種類とか」


「め、も……? なにその言葉。え、味の感想書いてるの?変なの」


──しまった、またうっかり出た。“メモ”はこの時代じゃ通じないんだった。


食べながら、俺は古紙を綴った帳面に走り書きしていた。

日々の食費、周辺の物価、家計簿の真似事、そして──

この世界でどう生きるかという、孤独な作戦会議。


実は俺、前の世界では食べるのがめっちゃ好きだった。

SNSにランチ写真を載せて、#カツ丼巡り でバズったこともある。

──それが今、焦げた魚皮を噛みながら「歯ごたえ★★★☆☆」とか書いてるの、泣ける。


でも、江戸の味にも捨てたもんじゃない部分はある。

赤味噌の風味はなかなか強くて好きだし、沢庵の酸味は癖になる。

なにより、飢えた胃袋にはすべてが美味に感じる魔法がある。


箸を置くと、母がぽつりとつぶやいた。

「麟太郎、お前……本当に塾なんて通えるのかい。うちに余裕はないよ」


その言葉が、胸に刺さる。

通いたいのは蘭学塾。学費は、今のうちにとっては目玉が飛び出る額。

でも学ばなきゃ、この時代で“上”には行けない。

なにせ俺は勝海舟だ。いずれ黒船が来る未来を知ってるのは俺だけだ。


「大丈夫。夜にバイト入れてるから、昼は時間空いてるし」


「ばいと? 誰? 人の名前?」


妹が怪訝な顔をする。俺は軽く手を振った。


「いや、その……写本の手伝いってこと。筆で書くやつな、地味に肩こるけど……」


器を片づけ、竹のペン箱を懐に入れる。

木簡と墨。前世のiPadより数段重たいけど、それでも俺にとっては“武器”だ。


──朝飯の満腹度は★☆☆☆☆。でも、やる気は満点。

今日も、幕末で生き抜く勝負が始まる。



[ちょこっと歴史解説]

貧乏旗本って、実際どれくらい貧乏だったの?


今回の話に出てきたように、勝海舟(麟太郎)の家は「旗本はたもと」という武士の家柄ながら、実はめちゃくちゃ貧しかったことで知られています。


◾旗本とは?


江戸幕府に直接仕える武士階級。将軍に謁見できる「御目見得おめみえ」以上の身分です。が、必ずしもお金持ちとは限りません。


◾勝家のリアルな経済事情

•勝家の石高は百石(年収にすると約10万円〜15万円ほどの感覚)

•武士なので、土地や職業の自由がなく、副業も原則NG

•武具や衣服、礼儀作法にかかる出費はあるが、収入は変わらず

•住んでいたのは、借家の長屋。庭なし、風呂なし、畳はボロボロ

•父・勝小吉は気性が荒く、酒好きで浪費癖あり。これも家計を圧迫

•麟太郎(勝海舟)は雑巾を売って小遣い稼ぎをしていたという記録も


◾じゃあなぜ旗本になったの?


江戸時代後期になると、武士の世界でも**「名家なのに貧乏」**という矛盾が生まれていました。勝家は代々幕府に仕える家だったため、没落しても身分だけは残っていた、という形です。


次回から、投稿時間を早朝に切り替えます。次は、6時間後です。

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