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JK老中、幕末って美味しいいんですか?  作者: AZtoM183
7.若き老中(構)
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076KT. 若き老中(構)ー記す手、残す意志ー


 筆をとる指先に、かすかな疲労があった。

 それでも、墨を含ませる手を止める気にはなれない。

 いまこの一行を記すことが、明日の政を形にする。

 そう信じられる日が、ようやく来たのだ。


 「――老中の御決裁、確かに」

 小姓が報告する声を背に、川路は紙面へと視線を戻す。

 行間に走る墨の濃淡は、ひとつの時代の息づかいのようだった。


 数年前、大塩の乱の報に接したとき、

 人はここまで「記す」ことに無力だったのかと、打ちのめされた。

 だが今は違う。

 この文は、記すためではなく、残すためにある。

 人の意志を、政の中に留めていくために。


 机の向こうで、阿部が一枚の紙を掲げた。

 「これで、皆の意見を繋げることができよう」

 その声は、若いが芯があった。

 老中としての威厳よりも、人を信じる響きがあった。


 川路は頭を垂れ、筆を走らせる。

 政は人に始まり、人で終わる。

 だが、その間を支えるのは、記録である。


 行の終わりに小さく印を押す。

 墨の香りが部屋に満ち、障子の向こうで風が鳴る。

 筆を置いたとき、川路はゆっくりと息を吐いた。


 その息は、ひとつの章の終わりであり、

 また次の構えへの始まりでもあった。


 「――構、成れり」


 静かに呟いた言葉は、墨よりも濃く、時よりも長く残るものだった。


[ちょこっと歴史解説]

川路聖謨かわじとしあきは、幕府の中で「記録官僚」としての役割を確立した人物です。

評定所・勘定所などの制度改革において、議事録や触書の整備を通じて、幕府の行政を近代的に再構築していきました。

彼の残した文書群は、後世の史料としても貴重であり、**「記すことが、未来をつくる」**という彼の思想は、この時期すでに形になりつつありました。

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