一話
「ノークティック魔法学園10周年記念式典 開催『今宵、魔法の光が10年の誇りを照らす。』」
「魔法薬由来の温泉郷で、五感を超える癒しを、、、」
「魔法経済の未来を、あなたとともに。」
「自動詠唱装置、ついに解禁か!?」
タチバナ灰利は、天井に張り付けられた広告を順番に眺めながら電車に揺られていた。
魔法の二文字によって彩られた広告を、こうはっきりと眺めたことはなかったが、内容については今はあまり頭に入ってこなかった。
今朝がた購入した鮭おにぎりを口に運びながら、携帯の画面に視線を戻す。
デジタル時計の指す時刻は8時半。
魔法による移動も認められた現在、今や利用者も減りつつある電車。
人もまばらになり始める車内の席で、灰利は半ば途方に暮れていた。
「はあ、、、」
彼は現在、遅刻中である。
どうしてそうなったのかと聞かれると…、長い話になるため割愛するが、
例えばその遅刻が必ずしも自分のせいでないとき、
それでいてそのことを人に言えないとき、
人というのはやむなくどうしようもない思いに悩まされてしまうのだ。
灰利も現在そういった心境で、
電車までの待ち時間で時間が空き、
珍しく立ち寄ることができた朝のコンビニで、
気分を上げるために買ったお高めの朝食たちを、
人目もはばからず一人、席に座って食べていたところであった。
手のひらサイズの鮭おにぎりを食べ終え、
少し大きめのおにぎりへと手を伸ばそうとしたところでようやく脳が事態の解決へと動き出した。
「てか俺悪くないよな、、、?」
鮭おにぎりによって動き出した脳は責任転嫁を選択したようだ。
「そもそも兄貴がくれた手紙の時間が間違ってたわけだし。
その時間に合わて動くのは弟として兄貴を信頼してるからだし」
そういいながら灰利の手は、ふたたび次のおにぎり『納豆チーズおにぎり』へと伸びていた。
納豆もチーズも灰利の好物である。
「大体、兄貴の言うことが間違ってたことないし、多分なんかの間違いだな」
Mr.タチバナ
灰利の兄は世界的に
灰利は昔から、兄の言うことには盲目的だった。
兄を慕っていたというのもあるが、
何よりも灰利をそうさせたのは、その行動力と迷いの無さであった。
優柔不断な灰利にとって、その姿や言葉は心強い指針になっていた。
とは言え、そもそも遅刻の事実を知るに至ったのは、
今朝起きた時に携帯に届いていた学園長直々のメールであったはずであり、
その内容に間違いなどあろうはずもないのだが。
そんなことを気に留めることより、
目の前の大好物と兄から送られてきた手紙の内容の方が灰利には重要であった。
灰利は手に取ったそれの包装を丁寧に剝ぎ取ると、
名前からして公害レベルのにおいを醸し出すブツを一口、頬張りはじめた。
「やっぱりこれうまいな、、、もっと買っとけばよかったか?」
灰利はもはや遅刻のことなどなかったかのように食事を続けていた。
そんな灰利を先ほどからちらちらと眺める人物が一人。
向かいの席から声をかけてきた。
「ちょっとあなた、、、それやめてくれる?」
「ン、、、?」
灰利はもぐもぐと口いっぱいに詰められたおにぎりを咀嚼しながら、
声をかけられた方に顔を向ける。
そこには灰利と同じくアークティック学園の制服を着た少女が、
強い嫌悪感をにじませた瞳で、こちらを射るように見つめていた。
ここまで読んでいただき、誠に誠に感謝をいたします!
どうかこの程度しか書けなかった私をなじってください。
そして許して、、、ください。
こんなにも期限を守ることが難しいとは思いませんでした、、、。泣
次回は、長めに、長めに書きますので、、、あと2週間私に猶予を下さい、、、。
次回は、3/28を予定したいと考えています。
またどうか時間があるときに、よろしくお願い致します。