第2章「愛の形」
遥は、真奈の手をぎゅっと握りしめていた。目の前に立つ両親は、固い表情を崩そうとしない。冷えた空気が部屋中に漂っていた。
「どうして、そんなに反対するの?」遥は震える声で問いかけた。「私は真奈が好きなの。それが間違いだっていうの?」
父は深く息を吐き、困惑したように視線を逸らす。母も小さく首を振るだけで、言葉を発しなかった。いつもはあたたかい家が、今日はどこか重くて冷たい。
「結婚は普通、男と女がするものだろう。俺たちはお前たちが……その、社会にどう見られるかを心配しているんだよ。お前のためだ」
父の言葉が、遥の心に深い傷を残した。「お前のためだ」というその言葉が、どれだけ無情に響いたことだろうか。真奈は隣で黙っていたが、遥の手をそっと撫でながら、彼女を励ますように微笑んでいた。
「遥のことは、私が守ります。二人で幸せになりたいんです。どうか理解してほしい……」
真奈の静かで優しい声が、部屋の空気を少しだけ和らげた。けれども、両親の反応は変わらない。無言のまま、二人の決意に戸惑っている様子だった。
遥はもう一度、真奈の手を強く握った。彼女の手のぬくもりが、遥に勇気を与えてくれた。
「もういいよ……わかってる。きっといつか、わかってくれる日が来るって信じてる。でも、私は今、真奈と一緒にいたい。誰がなんと言おうと、この気持ちは変わらない」
遥の言葉には、決意と覚悟がこもっていた。彼女は真奈の方を見つめ、優しく微笑んだ。真奈もそれに応えるように、遥の頬にそっと触れた。二人の間に流れる静かな愛情は、どんな言葉よりも力強かった。
その夜、二人は公園のベンチに座っていた。秋の冷たい風が吹く中、真奈は遥の肩に自分のコートをかけ、寄り添った。
「大丈夫だよ、遥ちゃん。私たち、ちゃんと乗り越えられるよ」
真奈の声が、遥の心に深く響いた。彼女の隣にいるだけで、どんな困難も越えられる気がした。真奈の手の感触、そしてその優しさに、遥はもう一度確信した。二人の愛は本物であり、誰にも壊されることはないと。
「うん……真奈ちゃんがいれば、私は大丈夫。ありがとう」
遥は真奈に寄り添い、彼女の肩にそっと頭を乗せた。真奈はその瞬間、柔らかく遥の髪を撫でた。その優しい手の動きは、まるで赤ちゃんをあやすかのようで、遥の心がふわっと温かくなった。
「真奈ちゃん、いつもこうやって私を支えてくれるね……本当に、ありがとう」
「遥が隣にいてくれるだけで、私は強くなれるから」
二人は言葉もなく、ただ静かに寄り添い合った。夜空に輝く星が、まるで二人の未来を祝福しているかのように、キラキラと輝いている。
時間が経つにつれて、二人の関係は少しずつ周囲にも認められ始めた。両親との関係も、少しずつ和らいでいく。けれども、何よりも大切なのは、二人がどんなときもお互いを信じ、支え合ってきたことだった。
「ねえ、真奈ちゃん……結婚しよう」
ある日、遥がふと呟いたその言葉に、真奈は驚きながらも微笑んだ。
「うん……ずっと一緒にいようね」
二人はその瞬間、お互いの存在がこれから先も変わることなく続いていくことを確信した。周囲の視線や反対があっても、二人の愛は深まり続ける。そして、いつか家族として、子供を迎える日が来ることを夢見ながら、二人は手を繋いで新たな一歩を踏み出した。