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第13章「実家での涙と笑顔の再会」

 週末の午後、遥と真奈は遥の実家を訪れていた。玄関を開けると、遥の母が優しい笑顔で二人を出迎えた。以前のような固さは影を潜め、その表情には柔らかな光が宿っている。


「あら、お腹、またちょっと大きくなったわね」


 母の言葉に、遥は思わず真奈の手を握った。


「うん、二人とも元気だよ。真奈ちゃんのお腹の子も」


 リビングには父の姿もあった。新聞を読んでいた手を止め、二人の方を見つめている。かつての厳しい表情は消え、どこか優しい眼差しに変わっていた。


「座りなさい。疲れるでしょう?」


 父の声に、遥は目を見開いた。父からこんな優しい言葉をかけられるのは、まだ慣れない。


「二人とも、お茶にしましょう」


 母が台所に立とうとすると、真奈が立ち上がった。


「私がお手伝いします」


「いいのよ、真奈ちゃん。お腹の大きい身で……」


「でも、動いた方が体にいいって先生も言ってたから」


 真奈の言葉に、母は少し考えてから頷いた。台所で二人きりになると、母は真奈にそっと声をかけた。


「ありがとうね、真奈ちゃん。遥のこと、いつも支えてくれて」


 その言葉に、真奈は思わず目を潤ませた。


「私こそ……遥ちゃんがいてくれて、すごく幸せなんです」


 リビングでは、遥が父と向き合っていた。気まずい沈黙が流れる。


「あの……お父さん」


「ん?」


「私たち、今、二人で支え合って赤ちゃんを育てているの。きっと元気な赤ちゃんを産むから楽しみにしててね」


 父の表情が変わる。そこには何か深い感情が浮かんでいた。


「そうか……いよいよ孫が生まれると……俺もおじいちゃんというわけか……」


 父の声が少し震えていた。


「うん。だから……これからも、たくさん遊びに来てもいい?」


 遥の問いかけに、父は黙ってうなずいた。その目には、かすかに涙が光っていた。


 台所から戻ってきた真奈と母は、その光景を見て思わず顔を見合わせる。


「あら、どうしたの?」


 母の問いかけに、遥は嬉しそうに答えた。


「お父さんが、これからも遊びに来ていいって……」


 真奈は遥の隣に座り、そっと手を重ねた。遥の指が震えているのを感じる。


「もちろんよ。これからは私たちが孫の面倒を見させてもらうんだから」


 母の明るい声に、部屋の空気が一気に和らいだ。


「本当に……いいの?」


 遥の不安げな声に、今度は父が答えた。


「ああ。お前たちの選んだ道が、間違っていなかったってことだ」


 その言葉に、遥は思わず涙を零した。真奈がそっと肩を抱き寄せる。


「泣いちゃだめよ。赤ちゃんが心配するでしょ」


 母の優しい声に、遥は頷きながら涙を拭った。


「ごめんね……でも、嬉しくて……」


 真奈は遥の髪をそっと撫でながら、両親に向かって深々と頭を下げた。


「これからも、よろしくお願いします」


「こちらこそ。あなたたち二人を、私たちの大切な娘として……そしてもうすぐ生まれてくる赤ちゃんたちの母親として、精一杯支えていきたいと思います」


 母の言葉に、部屋中が温かな空気に包まれた。窓から差し込む夕暮れの光が、新しい家族の絆の始まりを優しく照らしているようだった。



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