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使者

ディーテとセピユロスの物語は新たなステージへ。


日が差すこともなくどんよりした空。

もう朝? 寝過ごしたかしら?

ああセピユロス。

昨夜はいろいろあり過ぎて疲れてしまいました。

セピユロスを失ったのはあまりにも痛い。

もう夜に逢瀬を重ねることもない。

いえ…… まだ具体的なことは何もしてません。

ボノやヴィーナに恥じるようなことはしていない…… と思います。

これからだって何もありません…… そんな気がする。

今までのことは不可抗力。どうしようもなかった。

結局は最初がすべて。セピユロスはヴィーナの代わりでしかなかったのに……

ヴィーナが私を避けるものだからこんな事態に。

私にも隙があったのでしょうが。


ああセピユロス。本当はあなたを失いたくはなかった。

喪失感から起き上がることさえままならない。

セピユロス。ふふふ…… セピユロスったら。

もう妄想するしかない。

ああセピユロス。セピユロス……

後悔してないと言えば嘘になる。


「ご主人様。お客様がお帰りになります」

メイドに無理矢理起こされる。

「ごめんなさい。疲れてしまいまして。お姉様にお願いできないかしら? 」

「はあ…… 確認して参ります」

メイドも追い返したしゆっくり寝ますか。

お客様には悪いですけど後のことはお姉様にお任せしましょう。

うん? どうも騒々しい。不自然なほどに騒々しい。

また卿が何かしでかした? もう。まだ寝ていたいのに……


使者が屋敷へ。

「申し上げます。セピユロス様のご実家が火事に巻き込まれました。

幸い怪我人はいないとのこと。つきましては至急戻ってくるようにと」

何とも残念な報せ。

タイミングが良いんだか悪いんだか。

「火事か…… 」

「セピユロス君。帰ってあげるといいよ。顔を見せれば安心するだろうから」

ボノは立派な夫ではないが立派な旦那を演じるのは得意。

「ああ…… 済みません皆さん。ご迷惑を掛けます」

動揺を隠せないセピユロス。まあ当然でしょう。心配よね。おかわいそうに。

私がついて行ってあげたい。でも迷惑。お荷物になるだけ。


「では私も…… 」

「いやいい。ヴィーナはここにいてくれ。すぐに戻る」

男らしいセピユロス。ヴィーナも嬉しそうに……

あら不満そうね。

「ヴィーナ。ここで待っていてくれ。さすがにこの状況ではおもてなし出来ない」

ワガママ娘のヴィーナは邪魔な存在として捉えられてるよう。

二人の関係とはこんなもの? これではすぐにでも心が離れてしまう。

「でも…… 」

「いいんだ。アーフリーもいるだろ? さあいい子だから」

ついて行こうとするヴィーナを説得する。まるで子供扱い。失礼しちゃう。

ああつい興奮してしまう。もう二人の問題なのに。

「よし馬車を用意してくれ! 」

もうヴィーナを見ていない。余裕がないと言えばそれまでだけど。

やはり二人の関係はうまく行ってないのでしょうか?

それにしてもセピユロスも大変だこと。


「では行って参ります」

ついにセピユロスは旅立った。

戻って来るのは早くても明後日になるだろう。

ついてるのかついていないのか?

心を乱す者が居なくなり平和になったと大歓迎ではさすがにセピユロスに悪い。

彼はあくまで純粋な気持ちで私の相手をしてくれた。そんな風に考えてはダメ。

でもこれでボノとの関係が再び好転するやもしれません。


「ほら泣かないの」

清々するかと思いきやヴィ―ナが塞ぎこんでしまった。

「セピユロス! セピユロス! 」

お姉様が寄り添ってあげている。

それでどうにか落ち着きを取り戻したようだけど。

ヴィーナがここまで不安定になるとは思わなかった。

たかが二、三日。しかも仕事や遊びではなく致し方ない家の事情。

そこまでのこと? 私が冷酷なの? ヴィーナが感情的なだけ?

私は少しほっとしてる。

嬉しいですけどセピユロスの強い思いを受け止めきれずに苦しんでいたのは確か。

彼が居なくなり落ち着きを取り戻せばまたいつもの生活に戻るでしょう。


「これは海外のお土産。このお茶を飲めばきっと気分も楽になる。

ねえヴィーナ。ほら落ち着いて」

お姉様が慰める。

本来このようことはメイドたちに任せているが。

私ではヴィーナを立ち直らせられない。

だからお姉様がいて本当に助かる。

お姉様は昔から優しかった。

私もよくお姉様に泣きついたもの。


                 続く

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