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冗談

厳しい練習を終えシャワーで汗を流す。

広い屋敷にシャワー室は一つ。

メイドたちは別館に住んでおり今現在私たち二人とお客様ぐらいなもの。

一つでいいとメイド頭が提案。

三つあったシャワー室を潰し新たにお風呂を作る計画が進行中。

私はお風呂は苦手なので入るつもりはないがボノがどうしてもと。

毎日メイドと入ってるなんて噂まで。

本当に男の人って懲りない。


私がお風呂を嫌いになった理由もそこにある。

お父様がボノのように…… その現場を目撃してしまった。

幼かった頃とは言え私には理解出来た。

深く深く傷ついた。あのお父様が……

その日を境にお風呂が大嫌いになりシャワーひと筋。

シャワーならば一人でしか入れない。

その空間が居心地よく癖になる。


コンコン

コンコン

念のためにノック。昨夜のようにセピユロスと鉢合わせなんて困りますからね。

「大丈夫のようです」

「では下がっていなさい。誰も近づけてはダメよ」

昨夜の出来事はメイドたちのミス。

許しはしたものの二度と起こさないようにきつく叱った。

どうやら大丈夫のようね。

こうして少々の期待と不安を抱くも何のトラブルも。

まあ二度と起きないでしょうけど。初歩的なミスでしたものね。


シャワーを終え食事。

ヴィーナ?

真珠のドレスが眩しい。

これはヴィーナお気に入りのドレス。

小さい頃から何着も用意させていた。

昨日はもう少しシックなものだったはず。

ヴィーナはご機嫌だ。

お気に入りの真珠のドレスを纏えばどこぞのご婦人にも劣らない。


「おお我が愛しのプリンセス」

ボノが恥ずかしがりもせずに歯の浮くようなセリフ。

私にだってしてくれないのに。甘いんだから。

「セピユロス君にはもったいないな。ははは…… どうだ私に? 」

「もうお父様ったら悪ふざけが過ぎますわ」

ヴィーナも笑顔。昨日とは大違い。

昨日は一体何に機嫌を損ねたのかしら。

これだけ機嫌がいいのはきっとセピユロスが優しく接したからでしょう。

我がままなヴィーナが彼の足を引っ張る未来が見える。


「おおディーテ。遅いぞ。ははは…… 」

「あらお母様ごきげんよう」

上品で笑顔も崩さない。

これはすこぶる機嫌がいい。

ただ私に対しては少々他人行儀。

仕方ないわね。随分久しぶりだものね。

昨日はイライラしたヴィーナを叱りつけただけ。

「どうだいセピユロス君? 」

ボノもお酒で上機嫌。

「そうですね。ヴィーナを奪われては困ってしまいます」

やはり頭を掻き真剣な表情で下を向く。

「おいおい冗談じゃないか」

「お父様がからかうから。真面目なんですから」

「いやはやならばディーテではどうだい」

ボノったらもう……

私はあなたの所有物ではありません。

だからやるだのどうだのの問題ではない。

それに私はこの屋敷の主人。あなたには何の力もない。

悪ふざけはそれくらいにして欲しいもの。


「ボノ。セピユロスさんが困ってらっしゃるじゃない」

「ハハハ…… 冗談冗談」

ボノは饒舌だ。

「そうですね。ディーテなら嬉しい限りです」

お世辞を言うセピユロス。

「ほほほ…… ボノがからかうから」

「いいじゃないか。お褒めに預かったのだ。私も鼻が高いよ」

セピユロスか。本当にヴィーナにはもったいない好青年。


ボノは何だかんだ言ってもヴィーナを溺愛していたから。取られるのが悔しいのでしょうね。

本当に男の人って身勝手。

それならもっとヴィーナに構ってあげればいいのにメイドに現を抜かすから。

ヴィーナだって気付いてるはずよ。

その証拠に出て行ってしまったじゃない。

私のせいだと思うでしょう。でも違うのよボノ。

ヴィーナはボノを心の中で嫌悪してる。軽蔑してる。

時々見せる視線。ボノを鋭く捉える。

ボノを恐れてる。それが分かるの。

ボノは一体何を見せたのかしらね。

考えたくもないこと。


機嫌のいいヴィーナと酒で出来上がっているボノ。

頭を掻くセピユロス。

今夜は楽しくなりそうだ。


                続く

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