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ボロの性格

日も暮れ始める夕刻。

そろそろ頃合い。

結局、私たちを嗅ぎ回っていたと言う件の女性が姿を現すことはなかった。

女性は男によるただの勘違い。或いは私を怖がらせるために吐いた男の作り話。

もうそうとしか考えられない。気にせずに前に進もう。

ここで立ち止まるご主人様ではない。

追手もこちらの動きを察知できずにいるのか姿を見せない。

これでいいの。これで。すべてが上手く行っている。


我々の命の恩人であるボロ。

豪勢な料理を振る舞ってくれたボロだがお屋敷での彼とは随分違っていた。

お屋敷でのボロと言えばちょっと人付き合いの苦手なタイプ。

話し掛けても気のない返事に終始。

寡黙でむすっとして何を考えてるか分からない。

背も高く逞しいのでメイドは怖がっていましたっけ。

いい年をしてまだ独り身だとお義母様が心配してました。

ただ本人はもうすでに諦めた様子。

噂話に疲れて山奥の牧場近くに逃れるように一人でひっそり。


どうやらボノは馬好きな兄について行くうちに馬が得意になったのでしょう。

私は遠くから馬を見るのもレースを見学するのも決して嫌いではありません。

乗馬は紳士の嗜みですからその辺のことは弁えてます。

ですが私が実際に乗馬するとなったらそれはもう嫌で嫌でたまりません。

どうして女の私が馬を乗りこなさなければならないのでしょう?

それにこれは偏見ですが馬はどうしても匂いが無理。

近づくことが出来ない。

それからどこにでもフンを致しますから踏んづけてやしないかと心配になります。

少々下品でしたね。ですが私にはそれだけ耐えられないもの。

いつの間にか馬好きのボロまで受け付けなくなった。

ボロだけにと申しますか。ですが今はそんなワガママは言ってられません。


「ディーテ。そろそろ行こうよ」

観光気分で楽観的なセピユロス。

私たちは決して遊びに来たのではない。

「静かに。気づかれたら逃げられてしまう」

「もう大袈裟だな。気づかれるはずないじゃないか」

ふいにキスをするセピユロス。

もうこんな時ばかり。


「もう少しゆっくり…… ボノは逃げないよ」

「いいから行くの! 」

「あれ? 鼻どうしたの? 」

セピユロスに指摘されて初めて気づいた。

いつの間にか鼻を押さえていたらしい。

ボロにも大変失礼なのは承知の上でそれでも臭いが気になるから。

馬特有の臭いがどうしても受けつけない。

慣れればいいんでしょうけどね。それにもどうしたって時間が掛かる。


「まあいいか。それよりもボノならもうすでに来てると思うよ」

時間に正確な旦那様ですからね。

気掛かりはボロが喋ってしまってないか。それだけが心配。

もちろん私たちが迎えに来たことを言わないように言い包めてはあるんですが……

詳しい事情を話す訳にも行かずボロは大げさには捉えてない気がする。

実際は屋敷や我々の命運が掛ってる。今逃げられでもしたら。


「さあ行きましょう」

セピユロスを連れてボノと直接対決。

武器は置いて行くことにした。話し合いをしに来ただけですから。


目の前までやって来た。

中から光が漏れる。そして話し声も。

ボロは孤独を楽しむ癖がある。

だから友人を呼ぶことはない。

勝手にそうだと決めつけてるがたぶん間違いない。

この中には二人以上いる。

それはおそらくボロとボノだ。


さあ直接対決。驚いたボノがどう出るか? 腰を抜かす?

ひれ伏してご主人様の言うことを何でも聞く?

まあこれくらいは当然。お仕置きだってありますからね。

ご主人様を裏切るからにはそれなりの罰が。

罪には罰が付きもの。


「あれ牧場が騒がしくない? 」

セピユロスはこんな時に余計なことが気になるらしい。

確かに言われてみればそんな気もする。

でも今はこちらに集中すべきでは?

「お願いセピユロス! もう少し真剣に」

「いや…… だからおかしいなと」

第六感が働いたようだけど今はこちらに集中してもらわなくては困る。

牧場は後でいいでしょう? 

どうもセピユロスはのほほんとしてるのよね。本当に大丈夫か心配になる。


「さあセピユロスお願い」

「ええっ? これはご主人様の仕事でしょう? 」

正論を吐く困った子。

「ご主人様の命令よ。開けないさい! 」

「仕方ないな。ご主人様の成すままに」

ふざけてばかりのセピユロス。


準備は整った。後は扉を開けるだけ。



                 続く

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