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ロクデナシ

エクスプレスはスプレッドフォレスを過ぎ混雑し始める。

セピユロスの後に続き先頭車両に向かうもなかなか前に進まない。

きゃああ!

前から我が物顔でやって来る卑しき者と危うくぶつかりそうになる。

当たりでもしたら華奢な体がバラバラになるか吹き飛ばされるかのどちらか。

大げさかもしれないが下手すれば命の危機が。あまりにも危険な状況。

彼らはスプレッドフォレスからの乗客。

いくら安く一般庶民に解放されたからとは言えマナーぐらいは守ってほしい。


「おい女! 邪魔なんだよ! 」

卑しき者に驚く暇もなくどんどん人が押し寄せてくる。

初めてで不慣れな私にすれ違いざま暴言を吐く困った人たち。

「おい聞いてるのか? 」

何とご主人様に向かってその口の利き方。まったくなっていない。

「ちょっとあなた! 」

「駄目ですよお嬢様! 」

叱りつけようとしたがセピユロスに慌てて止められる。

「まったく気をつけろよな! 」

そう言って無礼者は姿を消した。

ふう…… どうにか堪えられた。

まったくこんなのがいくらでもいるかと思うとせっかくの旅行気分が台無し。

まあ逃避行ですからねこれくらいのハプニングは我慢すべきでしょうが。

ふう堪えて堪えて。


「おいどけよおばさん! 」

一難去ってまた一難。

再びすれ違ったロクデナシに散々言われる始末。

ここまで常識知らずばかりだとは思いもしませんでした。

「突っ立ってんじゃんねえよ! 」

またしても絡んでくる頭の悪い方。

もういい加減お仕置きをしなければ怒りが収まりません。

「こちらに! 」

冷静なセピユロスに引っ張られてトラブル回避。

言われて悔しくないの? 


「セピユロス…… 」

「静かに! 名前を呼んでは変装の意味がありません」

抱き寄せてくれる。不満は残るばかり。

「ちょっとセピユロス何をやってるの? 私たちの関係を忘れたの? 」

「ああそうだった。ごめんごめん」

抱き合ってキスまで行こうとするセピユロス。

情熱的なのは歓迎しますが人前ですしあなたは私の使用人のはずでしょう?

「失礼しましたお嬢様。つい感情的になりました」

「いえよろしくてよ」

以後気をつけるようにと注意するに留める。

人の目もありますしね。どうにかごまかせたが今後は目立つ行動は控えなくては。

これではお屋敷の時と大して変わらない。

逃避行とはそれは辛いもの。


「あの…… 申し訳ありませんがそこをどいていただけませんか? 」

丁寧にお願いする女性に好感がもてる。

彼女もマントで姿を隠してるので同じ境遇なのかもしれません。

「あらごめんなさい。どちらまで? 」

「えっと…… 終点まで」

まともな方も存在するようですね。

私と同じ淑女なのでしょう。

出来れば紳士な方もいてくれると助かります。

今いる男たちは皆さんどうしようもなく下品で荒っぽい。

人を見てない。ただ勝手に暴れ回る獣でしかない。


まったくこの人たちはわざとぶつかろうとしてるんじゃないかしら。

この私があまりに魅力的だからつい。

ふふふ…… そう思うと少しだけ可愛くなる。

ああダメダメ。一度甘やかすとつけあがりるから。

常識のない者には厳しくすべきですね。


ようやく先頭車両に辿り着く。

素晴らしい景色。

「この辺は絶好のポジション。ただ田舎者が集まるんだ。

初体験ではしゃぐ田舎者に子供連れだったりと先頭車両は人気が高いよ」

ただ問題はスリが多いことだとセピユロスは教えてくれた。

「お気を付けください。ちょっとでも目を離すと全部持って行かれます」

さすがはセピユロス。気が利いてるじゃない。

もしこのまま景色に見とれていたら被害に遭っていたかもしれない。

誰もが被害に遭う訳ではない。田舎者や子連れが狙われる傾向にあるとのこと。

たださほど持ってる訳ではないので最近は狙わること事態少なくなったそう。


「ふう疲れた」

「ごめん。座るところを用意すべきだったね」

「いいんですよ。これぐらいどうってことありません。楽しいし飽きない」

セピユロスの案内で快適な旅が送れそう。

後は余計なトラブルに巻き込まれなければいいのですが。


                  続く

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