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エクスプレス

今ペイジーの隠れ家に身を潜めている。

お婆様に教えてもらった隠れ家の一つ。

もしもの時に覚えておくようにと屋敷からの道を頭に叩き込まれた。

その薄っすらとした記憶を頼りにこの隠れ家へ。


実際はここを管理する者がいたはずなんですが。

今はただの空き家になっており二人っきり。

逃亡中の身には有難いのですがお食事も暖も取れないとなると厳しい。

お食事は果物と影のメイドの用意したチョコとクッキー。

もちろん全部食べたりしません。

半分を二人で分け合う。

隠れ家にも何かあると期待するもすべて腐ってしまっていた。

毛布が一枚。獣の臭いがするのでそれも遠慮してセピユロスに。

そのセピユロスも元気がない。ただの旅の疲れならいいんですけどね。

現実を直視して急に怖くなったのでしょう。今までが恵まれていたから余計に。


「ほらしっかりして! この隠れ場もじきに見つかる」

「そんなこと…… 」

「ここもすぐに。しらみつぶしに当たられたら今日中にも突き止められる。

残念だけど移動が必要なの」

聞き分けの悪い彼じゃないですが説得するのも一苦労。

情けないセピユロス。でも今は仕方がないか。

落ち着いたらそのうちいつもの彼に戻るでしょう。

ただこんな時に本性が出るとも言いますがね。

「分かったよディーテ」


支度を済ませ念のため裏口から外へ。

ペイジーから二キロのところにエクスプレスの駅がある。

エクスプレスは私が跡を継いでから作られたものでこの町の人の足となるもの。

実際は一般庶民が気軽に乗れる代物ではなく王族や貴族等の富裕層に限られる。

ただ近年は料金も抑えられた半面豊かになったのかさほど裕福でもない者までも。

誰でも乗ることが許されたとお姉様がお話に。

そのお姉様は自由に外の世界を満喫。

セピユロスも都会にお住みになっていたような。私なんかよりよほど詳しい。


ベイジー駅へ。

「ああ何だこれに乗るんですね」

セピユロスは懐かしいと笑い安堵する。

「あらセピユロスはお乗りになったことありますの? 」

「旅行の時はよく使ってたよ。ベイジーにも駅があったんですね」

セピユロスはその前のロック駅で降りてそこから馬車でお屋敷に。

ではエクスプレスに慣れているセピユロスにエスコートしてもらいましょうか。


「よし行こう! 」

帽子を取り準備万端のセピユロス。

「駄目! 私たちは追われてるのよ。せっかくの変装が意味ないでしょう」

「ははは…… 冗談ですよディーテ」

指摘されるまで気付かないどこか抜けてるセピユロス。

笑顔を見せる子供っぽい一面も。

「これはピクニックではないんですよ。帽子は被ったままで」

「分かってますって」

呑気なセピユロス。エクスプレスを見てつい気が緩んだようだ。

いつどこで見張られてるかも分からないのにもう。


青い車体が姿を見せる。

よく磨きあげられてるのか太陽の光で輝いている。

「そろそろ行きましょうか」

「ああちょっと待って。一枚! 」

遊びに来たのではないのですけど。これではまるでお姉様。


「ではお嬢様。参りましょうか」

男女二人では目立つのでお嬢様とその使用人に。無理があるかしら?

「そうですね」

轟音を上げて出発の合図をする。

さあ目的地テキュサーへ。


さすがに逃避行中。何かとお金が掛る。

影のメイドの助言でそれなりの貴金属を急いで用意した。

身に着けていたものをただ持ってきただけですけどね。

だからいつでも換金は可能。

ただ換金場所が限られてる上に有限だ。


テキュサーまでは一時間弱。

本来なら座って旅を満喫したいところですがなるべく目立たないように。

座らずに立って一時間我慢する予定。

ご婦人はただでさえ目立つ。好奇の目で見る者もいる。

混みあった車内でなら自然で溶け込みやすい。

お金を持ってると分かれば狙われることも。

近づいてくる者は特に注意が必要。

勇敢なセピユロスが守ってくれるとは思いますが。

頼ってばかりもいられない。

ああ苦労ばかり。

お食事だってまだなのに。どこまで我慢すればいいのか。

悩みは尽きない。


時間だけはたっぷり。

これからのことを話し合う。


                 続く

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