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厳重警戒

これで脱出準備完了。

急いで外へ。

問題は誰かに出くわした場合。

私一人ならこの格好でどうにでも隠し通せますがセピユロスはと言うと……

セピユロスの分まで手配してる暇はなかった。

だからこのまま逃げ切るしかない。

「走って! 明るくなる前に逃げ切るのよ! 」

セピユロスの手を掴む。

もう二度と離さないようにきつくきつく。


幼い頃、いつか私を救い出す勇敢なナイトが現れると信じていた。

ボノと一緒になってからはそのような妄想を重ねることもなくなった。

成長したとも言えるし成熟したとも老いたとも……

そうして何年も経ちすっかり夢を見なくなってしまった。

ふと幼い時の記憶が蘇ることがある。

特に最近なぜか頻繁に。

理想のナイト像を妄想するには相応しい者が現れた。

それはボノではなかった。

晩餐会やパーティーや旅行などではなくこの屋敷でそれも娘が連れて来たお相手。

そんな彼に恥ずかしげもなく恋をし愛を誓った。


こうして我が愛しのナイトは完成。

でも現実は私を囚われの城から果敢に救い出すナイトではなかった。

逆に無実の罪で囚われた可愛らしくも情けないナイトでした。

現実とはそれは厳しいもの。理想とかけ離れて行く。

関係だって純粋な恋などではなく夫がありながらの略奪愛。

それも自分の娘。

冷静に考えれば退くのが当然でありそうすれば未だに幸せな生活を送れていた。

でもどうしてもセピユロスが忘れられなかった。

もう言い訳をするつもりはありません。

ボノかセピユロスかをと迫られればもちろんセピユロスを。

それは何も可愛らしさではない。若さでもない。優しさでさえない。

情熱。セピユロスから溢れる情熱に絆された。

それが答え。ただそれだけ。


彼も私を決して諦めなかった。

耐え続けた。

心が離れることだってあったでしょう。

でも彼はいつまでもそしていつでも私を見てくれた。

私を一人の女性として見てくれた。

それが新鮮で嬉しい。


夫を見捨て若い男に走ったどうしようもない女だけどそれでも幸せになりたい。

セピユロスと苦楽を共にしたいと願った。

囚われの身のセピユロスを救って脱出?

自分の城からセピユロスを救い出す?

本当におかしな展開。


エイドリアンの伝統服に身を包みメイド館を抜ける。

「おい待て! そこの怪しい奴! 」

急ぎ過ぎた上にセピユロスがしっかり下を向かないものだから目についたらしい。

「ディーテ…… 」

「大丈夫よ。私に任せて」

見張りの男が近づいて来る。


チャウチャウったらもう肝心な時にどこかへ行ってしまう。

メイド館は本来ここまで厳重な警備を敷いてなかったはず。

やはりセピユロスが捕まって厳重警戒となったようだ。

「そこの者、名を名乗れ! 」

セピユロスの逞しい肉体はごまかしきれなかった。


「ちょっとお静かに」

「これはご主人様。何をなさっています」

「その…… 様子を見に来たの」

「誰のでございますか? 」

見張りはどうやら疑ってるようだ。

「それはもちろんエイドリアスの皆さん。まだ不慣れですからね」

「随行メイドもつけずにですか? 」

「ここはメイド館よ。危険はないでしょう? 」

「ですからそのような格好で? お連れ様は男の方に思えるのですが」

「ええエイドリアスの方」

嘘は言ってない。セピユロスもエイドリアンだ。

メイド館の数部屋をエイドリアスの方に提供している。


「ではお顔を拝見」

「何を言ってるの? 私の大事なお客様よ。失礼はお止めなさい! 」

どうにか気づかれないように必死。

さすがにこれはまずいか。

「いくらご主人様の頼みでもこの男を通す訳には行きません! 」

厳重にも厳重にとの命令が下っているとのこと。

さあどうすればいい?

「ご主人様。どうかご紹介願います」

まったく疑ってるくせに白々しい。

「この方は別に…… 」

「ご主人様。それではお通しできません」

ここで押し問答を続ければ怪しまれて人が寄って来る。

さすがにこれ以上はまずい。


「お願いよ。通してちょうだい」

「なりません! 」

「ご主人様の命令が聞けないの? 」

「分かりました。どうぞお通り下さい」

根負けした見張りが一歩下がる。

これでようやく脱出成功。

完全脱出は領地を越えてから。


ただ問題はどこに逃げるか。

いきなりの展開にまったく何も考えていなかった。

まあなるようにしかならない。

馬車でもあると楽なんですけど真夜中では期待は出来ないか。

随行メイドが同行してくれると助かるんですが。



                続く

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