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奉仕活動

「ご主人様よろしいでしょうか? 」

緊急の要件があると執事が入って来た。

解放されたメイドはホッとしたのか歩き出す。

まあいい頃合いでしょう。タイミングはバッチリ。

ただ私も鬼ではありませんからあと二言三言付け加えるだけ。

そう言う意味ではもう少し待っても良かった。


さあ何かしら。いい暇つぶしになる。

執事の要件は大したものではなかった。

国王への贈呈品が選び切れないからと寄越す。

前年と同じでいいと言ってやる。


ヴィーナは昼にも姿を見せなかった。

やはり今日一日は部屋で粘るらしい。

退屈だからお説教してあげても良かったのに。

これでますますセピユロスさんに負担が掛ってしまう。

困ったヴィーナ。


午後は近所の奥様方と草刈り。

これも欠かせない地域の方との交流。

もちろん形だけ。危ないからとカマを持たせてくれずに同行したメイドが代わりをする。

皆さん私とまでは行かないもののそれなりに身分が高いですから手を汚しません。

ふふふ…… まるで犯罪みたいね。


ボランティアの草刈りと言う名のお茶会に早変わり。

いつもこう。どんな時でもただ談笑するだけ。

無駄に長話をする。

大して経ってないのにどうしたのこうしたのと自分の話ばかり。

もっと最悪なのは自慢。

自慢って楽しいのかしら?

さすがに雰囲気を壊したくないのではいはいと答えるしかない。

ただ私に自慢されても無意味ですけどね。

持ってるか会ったか興味がないかですからね。

「ホホホ…… 体を動かすと疲れていけませんね」

「ええ汗がこんなに」

それはもちろん年のせいでしょうし体形のせい。

分かり切ってること。

そうこうしてるうちに褒め合いに。

「本当にお若いですね。その緑のドレスも良く似合ってますわ」

「まあそちらこそ。ホホホ…… 」

まったくつまらない。

これだったらメイドをいびっていた方が楽しいと言うもの。


「そうだ。お客様が来てるんですってね」

ガラリと話題が変わる。

セピユロスのことらしい。

隠してもいないが報告する義務もない。

興味を持たれるようなことでもない。

「大変素敵な殿方がいらっしゃったんだとか」

「そうそうもう噂になってますよ」

セピユロスは目立っていたようだ。

「セピユロスさんっておっしゃるんですか。素敵ね」

「そんなことありませんよ。至って平凡な青年ですよ」

「それでそれで」

セピユロスの話で持ち切り。

悪くない。いい気分。


「あの方ご出身は? 」

草刈りそっちのけで無駄話に精を出す奥様方。その中心がこの私。

悪くない。いつもとはまったく違う優越感。

「実はお隣のお隣。エイドリアス村の方なんですよ」

「あらいやだ。私会ったことあるかもしれない」

だからどうしたのかしら? どうでも良いことで騒ぐので頭が痛い。

「そうなんです。親近感が湧くでしょう」

「そうですね。あれだけ優しくて紳士的で。うん非の打ち所がない」

あらあらセピユロスったら人気が高いじゃない。

「お相手してもらおうかしら」

下品な奥さんたちの格好の餌食になる。

「私も…… 」

「だったら私も。主人では物足りないもの」

この人たちは馬鹿じゃないかしら。妄想ばっかり。

誰が相手するの? あり得ないでしょう。

おっとつい真面目に考え過ぎた。

でもヴィーナにも悪いし。

ああどうでも良いか。少しぐらい懲らしめなくては。

でもこの人たち品がないから。


それにしてもどこから聞きつけたのでしょう。

確か昨日は遅くに来て今日だって朝早くから釣りに出た。

会うことも見ることもできないはず。

ここに来る前に見かけた? それはないとするとメイドたちが口を滑らしたことになる。本当に皆さんお喋りが好きなんだから。


「エイドリアスって言えば知ってる? 」

「火事ですってよ…… 」

一通り聞き終えると興味を失ったのか次の話題に移る。


                    続く

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