閻魔様のお仕事
「次の方どうぞ」
鬼の一人がそう呼び
ドアを開ける
招かれたのは裕也という5歳の男の子だった
閻魔は部屋に入って来た裕也を見ると
「よろしくね」
と軽く微笑みながら言った
「君の生きている時の記録はちゃんと目を通してあります、その…とりあえず」
閻魔は少し神妙な面持ちで
「よく頑張ったね、えらいです、お疲れ様だったね」
と言った
裕也はそれを聞いて肩の緊張がほぐれたのか一気に肩を落として大きくため息を吐いた
「座ってもいい?」
裕也がソファを指差しながら言うと
閻魔は微笑みながら頷いて座るよう促した
「また怖いのあるかなって怖かったけどおじさん怖くなくて良かった」
裕也がそう言うと
「そりゃあ良かった!」
と閻魔は満面の笑みを見せた
「ところでこの後の事なんだが…とりあえず天国行きです、追って使いの鬼から説明がありますが最上の天国行きとなっています、私は忙しい身でね、その事を伝えるだけになってしまうのが本当に申し訳ないです」
裕也はそれを聞くとよくわからないと言った様子で
「ありがとう」
と言った
二人の使いの鬼が入室し
一人の鬼が裕也を連れて部屋から出て行った
もう一人の鬼は裕也達が退室したのを見計らって閻魔に問いかけた
「あの〜少し休憩を取られてはいかがですか?幸い死者の列が先程から解消されていまして、お待ちの方には私どもでおもてなしをしておきますので」
それを聞いた閻魔は
「そうか…」
と言い、ひとつため息をつくと話だした
「現世はもう駄目かもしれないな、人間達は長い歴史を歩んでいながら、あんな社会しか作れなかった、さっきの裕也君は親からの暴行で死亡、言ってはいかんがあの子だけではない、そのような悲惨な人生を歩む者が後を立たん」
鬼は頷きながら
「裕也君が最上の天国行きなのはなぜなのか聞いてもよろしいですか?」
と問いかけた
「私の考えでは人間は誰しも自分の意思で生命を得る事はできない、親やその先人達の営みや意思の中からこの世に生を受ける、言わば生とは強制的なのだ、わけもわからず産まれて来て人生の大半が苦痛、理不尽極まりない、だから裕也君は最上の天国行きなのだ」
鬼はそれを清聴し
カップに温かいお茶を注ぐ
それを閻魔の前に差し出すと
こう言った
「そろそろ解体の時期ですかね、この様子ですと現世は霊魂でパンパン、閻魔庁も死者を裁き切れない事態になるかもしれませんし、閻魔様がよろしければ解体の申請をされてはと思うのですが」
閻魔は難しい顔になり
「今のところはそう考えている、あの世界は失敗だったのだろうな、私見ではルールの設定が厳し過ぎたのかもと思っている、まぁ上の考えている事はわからないがね」