プロローグ~ユウレアのおとぎ話~
むかしむかし、あるところに闇に覆い尽くされた世界がありました。真っ暗な世界です。灯りのひとつもありません。暗闇の中を人々は生活をしていました。人々は色や形など何も見えないその世界で声や音、触覚だけを頼りに生きていました。しかし、ある時、人間は崖に出会ってしまいました。崖のみならばよかったのですが、ここは魔物も現れる世界。魔物に追いかけられ、暗闇で見えない崖に落ちるものが後を絶たず、人類は滅ぶ寸前でした。
そんな我が子たちが消えていく様子を見ていた女神は、救いを与えたました。光という救いを。
光が照らす世界で人々は色々なものを初めて目にし、戸惑いつつも見えるという素晴らしい感動を胸に抱き、女神にとても感謝しました。
それからも人々は光を大事に守り続けました。
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それは、この世界――――ユウレアで古くから語り継がれているおとぎ話だ。しかし、この話にはまだ続きがある。
光を守るとはどういう事なのか。それは光は、人だったからだ。本当に人なのかは分からないが、一番最初の光は人の腹から生まれた。その後の光たちも人と同じ姿形をしている。そして人と同じ時の流れで朽ちていく。他と違う点があるとすれば、白い。白髪に白眼、真っ白な肌。中には少し色が混ざっているものも居るそうだが、光の血が濃ければ濃い程、白くなる。それが光の化身の証。
そんな彼女ら、彼らは白雪と呼ばれ、そんな彼らが生まれ落ちることによってこの世界は光に照らされ続けている。もし白雪たちが居なくなることがあれば、またこの世界は暗闇に包まれるだろう。
そんな白雪らは魔物だけではなく、暗闇の世界の方が過ごしやすかった者達はもちろんのこと、白雪達は人離れしたほど整った顔立ちをしていた為、光の化身など関係なくただその美しさに魅了された者たちなどに狙われている。
そこで、女神から与えられた光を守らねばならないと立ち上がったものたちによって、白雪はおとぎ話だと、白雪達の存在は秘匿された。そして白雪は白雪からしか生まれないことを知り、白雪しか住むことも入ることも許されない白雪の為だけの村を作った。そして同時に出ることも許されない白雪たちの檻となった。
白雪から生まれる子供は必ず白雪とは限らず、人間のような白くない子も混じる。そういう子らは、一応村の出入り自由になっているらしいが1度出てしまうと特殊な方法を使わなければ戻って来れない。
逆に白雪の血が濃く出れば、何色にも侵されていない真っ白な色彩を纏い、食事もせずとも白雪の村に群生する白薔薇の生気を少し吸うだけで100年以上は生きられる。多く吸い取れば、その分長く。その代わり、絶対に村から出ることを許されない存在。白雪の白薔薇と呼ばれるそれは数百年に一度現れる。しかし、歴代の白薔薇達は、知っている者達が消えていくのを見守ることしかできない苦痛に耐えられず、自ら命を投げ出すものが後を絶たなかった為、同時に何人も白薔薇が現れることは無かった。